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72話 妖精と変態と少女

 リーゼロッテの護送任務へと就いた美月達は早速出発する為にイービルへと乗り込みます。

 ですが、そんな時現れたのは吉沢信乃。

 彼女は自分だけ妖精に会えないのはどういうことか! と怒りに来たようです。

 美月達は早く出発をしようと言うのですが、リーゼロッテはハッチを開けてしまい、出会ってしまったのでした。

 綺麗で可愛らしいリーゼロッテ、彼女を見て吉沢が騒がないか美月は心配になりました。

 ですが、肝心の吉沢は黙っています。

 いえ、寧ろむっとしていました。


「あー……そっか、心配する必要なかったかも」


 すると綾乃は急に冷静な声を出しました。

 どうしたのだろう? 美月は気になったのですが、すぐにその理由に気が付きました。

 それはリンチュンです。

 彼女も可愛い女の子で多くの男性を虜にしていました。

 ですが、吉沢は嫌っていたのです。

 その理由はリンチュンの大きな胸。

 彼女ほどではないにしろリーゼロッテも大きい方でしょう。

 そう思うと複雑な美月は自身の胸へと手を当て……。


「……私だって成長期、だよね?」


 と小さな声で呟きました。

 そして、彼女は訴えるように吉沢の方へと目を向けると……。

 それに気が付いたのでしょう、彼女は笑みを浮かべます。


「ひっ!?」

「やば!? 美月! ハッチ閉じてさっさと行こう!」


 近づいてくるわけではありませんが、異様な恐怖を感じた美月。

 それを察した様子の綾乃は出発を提案し……。


「さよならは言わないんですか?」

「それどころじゃないの! 美月をあの変態にこれ以上見つめさせたら危ないって! ハッチが開いてなくても機体越しでもそこに居るってのがまずいの!」


 そう言うと彼女は美月の方へとカメラを向け――。


「美月! 早く――」

「う、うん、お願いしますっ」


 その言葉を聞き、ハッチを閉じると技術班にハンガーから移動をしてもらう美月。

 すると――。


「ずいぶんな言われようですね……」


 といつの間にかマイクを握っていた吉沢の声が聞こえました。

 美月の脳裏には襲われかけた日々が甦り……対し、吉沢はそんな事とは思ってもいないのでしょう。


「美月さん、いってらっしゃい」


 優しそうな声でそう言いますが、美月は――。


「ひっ!? い、いい、いいいってきます」


 消え入りそうな声で答えるとスピーカーから熱い吐息の様な物が聞こえました。


「……ぁあ久しぶりの可愛い声」


 そんな言葉も聞こえ、美月は怖いと感じつつも――。


「ジャ、ジャンヌダルク行きます」


 と告げると急にカタパルトが動き出し――。


「きゃぁぁぁあああああ!?」


 といつも通りの悲鳴を上げるのでした。




「美月は相変わらずだな……」


 それを聞き伊逹は呆れています。

 同じように引きつった笑みを浮かべるのは新谷です。

 しかし、たった一人恍惚とし……。


「ああ、あの叫び声……たまらない、なんか、こうお腹の奥がきゅぅっとします」

「変態だな……お前」


 吉沢の発言に明らかに引いた様子の伊逹。

 そして、新谷は……。


「相変わらずだな、信乃……その、襲うなよ?」


 と忠告をします。

 すると……。


「時間の問題ですね」

「いや、そこは我慢してくれ!? 夜空ちゃんショックで壊れるかもしれないだろ!?」

「それはそれで……」


 慌てる新谷に対し、瞳をとろんとさせて光景を想像している吉沢。

 そんな彼らのやり取りを見て伊逹は大きなため息をつきます。


「それで、お前さんは何をしに来た? まさかドイツのお嬢さんを見に来たって訳じゃないだろ?」

「え? その通りですけど? まさか胸が大きいとは思いませんでした」


 真顔で答える吉沢に二人は頭を抱えるのでした。




 空へと舞う3機のイービル。

 その中の1機……灰色の悪魔はぐったりとしています。


「美月大丈夫?」

「……うん」


 何度経験してもカタパルトが慣れません。

 これも精神的な弱さからくるのでは? 美月はそう思うとますます落ち込みました。


「美月さんはあれ、苦手なんですか?」


 するとリーゼロッテに問われ、美月は再び「……うん」と答えます。


「そりゃ最初は驚くだろうけど、美月はずっとだもんね」


 うんうんと頷いているだろう綾乃に対し美月は更に落ち込むと……。


「どうしたら慣れるのかな?」


 と口にしました。

 ですが、その内としか言いようもないので、綾乃から帰ってくる言葉もそれだけです。


「っと、それよりも早く国境を越えちゃおう、そうしたら流石に政府も追って来れない」

「追って、来るの?」


 綾乃の言葉に疑問を感じた美月は尋ねます。


「当然護送の事も出発の時間とかは知らせてないし、分からないよ、でも……こっちの動きを疑っているだろうし……ありえなくはない、アタシ達は勝手にドイツ(向こう)と連絡を取って勝手に送ってるんだからね」


 彼女の言葉に不安感じつつ、美月はレーダーに示された方を見つめるのでした。

 そちらにはリーゼロッテの故郷であるドイツがあるはずです。


「ねぇ、もし……追って来たりしたらどうなるの?」

「まぁ、動きを拘束されるぐらいには攻撃されるだろうね」


 綾乃はそう言い、それに対し美月は驚きます。

 リーゼロッテは黙っていましたが……。


「すみません」


 と謝罪を告げてきました。


「だから、リーゼロッテさんのせいじゃないって! まぁ、うん……とにかく、急ごう、美月行くよ!」

「わ、分かった」


 美月は綾乃の言葉に頷き、イービルを飛ばします。

 無事、リーゼロッテを送れますようにと祈りながら……。

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