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7話 助けを求める少女

 医師に診てもらう美月。

 どうやら摘出手術は去れないようです。

 ですが、もし何かあった時の為に看護師はついてくれるようです。

 しかし……その看護師には問題がある様で?

 ベッドにもぐりこんでから長い時間美月は寝られませんでした。

 頭痛の所為ではありません、バクバクと心臓がうるさいからです。

 何故心臓がうるさいのか? その理由は一人の女性にありました。

 彼女は美月と二人っきりになると本性をむき出しにし、寝顔を堪能してきました。

 更には写真を収められてしまい、美月は未知の恐怖を味わっていたのです。


 誰か、誰か――助けて!


 美月は普段誰かに助けてなんて言った事は殆どありません。

 化け物である自分が助けを求めるなんて……と言った事が昔あったからかもしれません。

 ですが、それ以上に母を助けたその日から美月は助ける側になりました。

 だからこそ、自分が助けてというのはどうもしっくりこなかったのです。


 それに魔法で人を助けている間は誰に望まれたという訳でもないのに美月の心を満たしてくれました。

 不安、恐怖……そう言ったものが無いわけではありません。

 寧ろ化け物と呼ばれたくないと言う思いと自分の力に対する恐怖はあると自覚しています。

 そして、それが美月の今の性格……それに結びついているともいえるでしょう。

 ですが……そんな気が弱くとも人々を助けてきた少女に助けを求めさせるぐらい看護師は異常だったのです。


「……残念ですね」


 そして何より怖いのが……。


「服を脱がす検査があれば……裸が見れるのに」


 時折出てくる本音か冗談か分からない言葉。 

 女性同士で恋愛感情を持つ……そんな話は確かに聞いた事がありますし、美月自身それは人それぞれの自由と気にしていませんでした。

 寧ろ自分がそうなるとは……いえ、その対象になるとは考えていなかったのです。


 助けて、姫川さん――!!


 ですが、美月に頼れる者、母は近くには居なく。

 苦手だと思っていた姫川綾乃に心の中で助けを求めるだけ……。


「やっぱり、美少女はこうでなくてはいけません、変に染めたり手を加えたり、下手な化粧、ネイル……気持ち悪いですね」


 誰の事を言っているのかは分かりませんが、どうやら吉沢が怒っている事、それだけは美月にも十分伝わりました。

 ですが、そんな事よりもこのまま寝たふりを続ければ自分に何か良くない事が起きるのでは? と美月は未知の脅威に晒され怯える結果になりました。

 そんな時です。

 扉があく音と共に聞こえてきたのは近くからの舌打ち。


「なんでしょうか?」


 そして、扉を乱暴に占める音と共に控えめではありますが怒声が飛びます。


「なんでしょうか? じゃないってーの!! ……アンタが一人で夜空の部屋にいるって聞いたから来たんでしょ!?」


 その声は美月が待ち望んでいた少女の物でした。


「仕事なのですから当然です」

「へぇ……でもねー流石にアンタと二人は心配だから私もここにいる」


 姫川がそう口にしたことで、美月はほっとしました。

 ですが、吉沢はその事が嫌みたいで再び舌打ちをすると――。


「仕事の邪魔なのですが?」

「その手に持ってるスマホなにー? それにビデオカメラまで持ち出してるし、手は出さなくてもじゅーぶん怖いってーの!」


 ビデオまで用意されている事に美月は驚きましたが、口には出せませんでした。

 起きていた事を知られると何をされるか分からなかったからです。


「というか、普通に犯罪だからソレ、盗撮だから……消しなよ」

「美少女の寝顔は尊いとは思いませんか?」

「ただの変態の言葉にしか聞こえないって……女同士だからって許さる限度っていうのがあるでしょ? それにアンタ夜空と会ったばっかりなんだし、どっちにしたってやっぱ犯罪だから」


 先程一緒に来た時は分からなかったのですが、呆れ声の姫川は吉沢と言う女性とは昔からの知り合いの様です。

 ですがそんな事は美月にはどうでもよく、やっと少し安心出来た彼女は今まで抗っていた睡魔に負け……。

 本当に寝息を立て始めるのでした。










 美月が次に目を覚ましたのは夜中でした。

 当たりが暗い事に気が付いた彼女は近くに明かりが無いかを探します。

 流石にこの時間には吉沢も姫川も居ないでしょう。

 そう思っていたのですが……。


「どうかしましたか?」

「――――――――ッ!?」


 突如聞こえた吉沢の声に驚いた美月は声にならない悲鳴を上げ、固まってしまいました。

 ですが、吉沢はそんな事を気にする事も無く……。


「頭痛は収まりましたか?」


 と尋ねてきます。

 美月は慌てて首を縦に振りますが、暗闇です……見える訳が無いでしょう。

 返答を待っている吉沢に対し、何故真っ暗の中に居るのだろう? せめて小さな明かりぐらいつけていてくれれば良いのにと思いますが、怖くって口に出す事はできませんでした。


「夜空さん?」

「だ、だだだだだだだだだ……大丈夫……で、す」


 美月は何度もつっかえながら小さな小さな声で伝えます。

 怖かったこともあり、声は震えていました。

 ですが、それで十分だと思ったのか吉沢は……。


「そうですか、でしたら食事に致しますか? まだ7時ですし、もう一回寝るには少し早いかもしれませんよ」


 丁寧な言葉づかいではありましたが、先程の事を考えるとどうしても怖いという感情が先走る美月は――。


「あ、あの……あか……あかり……」


 再び小さな声を出し明かりをつけてもらえるように訴えます。


「ああ、そうですね」


 吉沢は優しい声で答えると明かりをつけてくれました。

 一気に明るくなった部屋に美月は思わず目を瞑ります。

 ですが、徐々に瞼を持ち上げていくと……。


「きゃぁぁあああ!?」


 いつの間にか目の前にいた吉沢に対し、小さな悲鳴を上げてしまいました。

 すると彼女は首を傾げながら……。


「あら、ビックリさせてしまいましたか?」


 と微笑み、美月の顔を覗き込みます。


 怖い、この人怖い……。


 美月は自分を診てくれたというよりも視られていた事の方が気になり、慌てて姫川を探します。

 そんなに広い部屋ではありません、すぐに見つかるはずでしたが……残念な事に部屋には居ないみたいです。

 いよいよ、不安になった彼女は瞳に涙を溜め始めると……同時に扉が開き。


「あれ? 夜空起きてる……ってあんた何してんの?」


 と口にしながら姫川が部屋へと入ってきました。


「……驚かれてしまったので、何か別状がないか診ていました」


 吉沢はそう口にしながらも美月から目を離しません。

 それが心配するものでないのは徐々に美月にも理解出来て来ました。


「いや、夜空怖がってんでしょ、離れて……」


 姫川は美月の願いを聞き届けたかのように吉沢との間に入ると美月の方へと向き。


「飲む?」


 缶ジュースを手渡して来たのでした。

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