67話 新たな出会いを得る少女
出撃をする美月達。
前回は大丈夫だった出撃ですが、今回は叫び声をあげてしまう美月。
何とか出撃するものの天使を示す赤い点が消えていた。
一体なにが起きたのか? 不安と疑問を抱えつつ美月達は現場へと急ぐのだった。
「もうすぐポイントだよ!!」
「う、うん!」
山を越えた所、そこが天使を表す点があった場所です。
美月は焦る気持ちを抑える事は出来ずに山を越え、確認しました。
「……え?」
そこで見たのは信じられない光景でした。
「美月!! 敵は!?」
綾乃が後を追ってきて同じように辺りを見回します。
そこにあったのは驚くべき光景。
天使の残骸が転がり、大地が大きくえぐられているのです。
ですが人が住む区画の方には弾痕が無いとは言い切れないですが、比較的綺麗でした。
それよりも、そこには……。
「イービル!? だって、この近くには……」
日本の支部はたったの一つ。
それでも美月達は早く着いた方でしょう。
ですが、目の前には見た事が無いイービルが居ます。
黒いカラーリングの中に赤と黄色がアクセントとしてくわえられているその機体は天使との戦いで失ったのかは分かりませんが右手は無く、左手にはその形状から恐らくはグレネードランチャーでしょう。
少なくとも美月達は見た事も無い武装でした。
その機体は美月達に顔を向けると……まるで貴族の様な礼をしました。
「グーテンターク……初めまして、日本のイービル」
それは綺麗な声でした。
「は、初めまして」
「グーテンタークって事はこんにちはって意味だよね? ドイツの人?」
綾乃が訪ねると美月は驚きました。
やはり彼女は意外と博識です。
「ヤー、その通りです。私はリーゼロッテ・エーベルトと言います」
「は、初めまして、夜空美月です」
「姫川綾乃……でなんで関西ブロックに?」
美月に続き、名前を告げた綾乃はリーゼロッテに問います。
すると、彼女はすぐに答えてくれました。
「実は装備を搭載した状態でのテスト飛行中迷ってしまって、気がついたら天使が居たんです。でも良かった日本語を勉強しておいて、これで帰れそうです」
「「ま、迷って!?」」
彼女の答えに美月達は驚きました。
それもそうでしょうドイツから迷いに迷って日本の関西ブロックへと来たというのですから驚きです。
それだけではなく天使の撃墜。
リンチュンの時は客人であり彼女の身の安全の事で問題になってしまいましたが、今は他国でも緊急時には戦闘行為が認められているのでそこは良いとしても、国境を越えていることが問題です。
「あれもマナ・イービルって事かな?」
美月は綾乃に問い。
綾乃はそれに答えてくれました。
「多分ね、それに確かドイツは武器開発の方に力を入れてるって聞いたよ、それがあの武器かも」
ですが、二人の会話は彼女にも聞こえていました。
「ヤー! マナ・イービルですよ、名前はパラケラススって言います」
「あ、それなら聞いたことある……」
美月は聞き覚えのある名前に反応します。
すると、彼女はゆっくりと近づいてきました。
「こちらが日本のマナ・イービルですね? とても良いですね」
どうやら美月のジャンヌダルクが気になっている様子の彼女はぐるぐると機体の周りを飛びます。
するとようやく綾乃は……。
「そ、そうだ! とにかく報告、それにリーゼロッテさん、だっけ? 彼女も連れて行かないと……」
「そ……そうだね、そうしないと」
最早、国境を遥かに超えている機体を見つつ、二人は考えました。
彼女はまた迷ってしまうのでは? っと……。
迷うだけなら良いのですが、いくら他国での戦闘行為が許されているとは言っても国境を超える際には連絡が必要です。
彼女がそれをしていないのは何となくですが分かりました。
「連れてってくれるのですか?」
「いや、寧ろ連れて行かないとまずいっしょ……」
音声の向こう側でリーゼロッテと名乗る女性が首を傾げている様子が思い浮かびました。
「その前に綾乃ちゃん! 一回降りよう?」
美月はそう言うとカメラを居住区へと向けます。
リーゼロッテが駆けつけた、いえ迷って来たお蔭でそれほど被害はありません。
ですが、それでも爪痕は残っています。
だからこそ、美月は怪我人が居ないか心配になったのです。
「そうだね、先に治療できる人は治療しちゃおう」
「うん!」
綾乃は美月の気持ちを知っているからでしょう、そう言い。
美月は居住区の近くに機体を停止させるとすぐに街へと向かうのでした。
暫くして……治療を終えた美月は綾乃達と共に日本支部へと戻ります。
その間、リーゼロッテは見る物が珍しいのでしょう。
あっちこっちに飛び回り……。
「ちょっと!? また迷うからちゃんとついて来て!!」
「ヤー!」
綾乃の声に恐らくは「はい」と答えている彼女ですが、何故か嫌だとも聞こえました。
ですが、彼女を放って置く事も出来ず、何度も何度も注意しながら美月達は何とか支部へと戻ってくることが出来ました。
ようやく帰って来れた事にハンガーで待っていてくれた伊逹と新谷を見つけると美月はほっとします。
そして彼らにこう言いました。
「ただいま」
っと……。




