66話 やっぱり苦手な少女
訓練をする美月達。
だが、それは悪魔でシミュレーターであり、過去の戦いを再現した物。
対処を覚えてしまえば良いだけの話であり、果たして意味があるのだろうか?
そんな疑問が生まれる。
だが、誰にも答えは出せず……困っている所天使の襲撃を知らせるランプが付くのだった。
美月達はハンガーへと向かい、それぞれのイービルへと乗り込みます。
「美月、綾乃! 良いか? 無茶はするんじゃないぞ!」
急ピッチで仕上げられた綾乃のナルカミとは違い、新谷のコピスはまだ修理が終わっておらず、まだ出撃をすることはできませんでした。
「は、はい!」
コクピットのハッチを美月は伊逹に返事を返しました。
今回は失敗できない。
そう思った彼女ですが……その緊張は綾乃に悟られてしまったのでしょう。
『美月、緊張しすぎもっと肩の力を抜いた方が良いよ』
カメラは中にはなく様子が映る事はありません。
ですが、確かに肩に力が入っていた事に気が付いた綾乃に美月は驚きます。
すると微かな呼吸が聞こえたのでしょう。
スピーカーの向こう側から笑い声が聞こえました。
『ほら、深呼吸! すってーはいてーって繰り返しなよ』
綾乃の言葉に従い美月は深呼吸を繰り返します。
すると少し落ち着きを取り戻した彼女は……。
「ありがとう、綾乃ちゃん」
彼女にお礼を告げました。
そして……。
『ジャンヌダルク、オールグリーン準備完了、発進を任意でどうぞ!』
オペレーターが別の人に代わっていた事にも驚きましたが、恐らくは休憩中かなにかでしょう特に気にする必要もありません。
後は出撃し、天使を撃退することが目的です。
「よ、夜空美月……ジャンヌダルク、行きます!」
美月がそう口にするとカタパルトが動き出し重圧が彼女にかかります。
すると、以前綾乃を助けた時には感じなかったソレが彼女を再び襲いました。
「き……」
そう、何度やっても慣れそうにないと思っていた事。
ですが、綾乃を助ける時は必死だった為か特に気にしていなかったのですが、今は違います。
「きゃぁぁぁぁぁあああああああ!?」
悲鳴を上げて発進する美月。
それを聞き……。
「み、美月!? ナルカミ出るよ! 急いで!!」
綾乃は彼女を心配したのでしょう。
すぐに後を追うのでした。
残された伊逹と新谷は苦笑いを浮かべつつ……。
「前回は平気だったんだがな」
「それだけ必死だったんだよ、夜空ちゃん……」
呆れ果てている様子を隠すことはありませんでした。
外へと飛び出した2機のイービル。
それに乗るのは2人の少女です。
中でも美月は外に聞こえるんじゃないか? と言うほどの悲鳴を上げ飛びます。
ようやく発進の時の勢いがなくなっていくにつれその悲鳴は小さくなっていき……。
「美月!!」
彼女の名前を呼びながら駆けつけた少女、綾乃の声を聞くとようやく落ち着きを取り戻したのでしょう。
「あ、綾乃ちゃん……」
泣きそうな声で彼女の名を呼びます。
「だ、大丈夫?」
美月は首を横に振りますが……それが分かるはずがありません。
ですから首を振った後に口にしました。
「苦手だよ、何度やっても発進だけは苦手……」
心底苦手なのでしょう、涙声になった彼女に対し綾乃は……。
「ま、まぁすごい勢いだからね、正直あたしも息詰まるし……」
綾乃はそう言うと、美月を気遣う様にイービルをかがませます。
ですが、何時までもそうしている時間はありません。
「とにかく現場に急ごう!」
「う、うん!」
美月は彼女の言葉に返事を返すとコクピットの中にあるオーブを握る手に力を籠めました。
すると、イービルはゆっくりと動き始め……速度を付けて行きます。
レーダーに反応がある場所へと急ぐと二人。
「ここからじゃ遠い! っていうか、日本はなんで支部と言いつつ関東02にしかないかな!?」
「そ、そうだよね……もっと必要だと思う」
美月は彼女の文句に肯定しました。
事実、日本の支部は一つだけ、本部と言われるのは関東01にある指令本部だけです。
指令本部と言っても実際に指令を出すのは美月達の居る支部の司令官である司。
最早本部と言ってもいいでしょう……ですが、大人の事情なのか何なのか、支部と呼ばれているのです。
そして、支部が一つと言う事は当然駆けつけるのに時間が掛かってしまいます。
金食い虫と呼ばれているイービル部隊ですから、避難やシェルターに力を入れたいのでしょう。
ですが、実際に避難が間に合うという事は稀です。
「急がなきゃ! 助けなきゃ!」
美月がそう口にした時です。
「待って美月! レーダー!! レーダー!!」
綾乃の焦る声が聞こえ美月はレーダーへと目を向けます。
すると……。
「あ、あれ?」
先程まで映っていた赤い点が消えていました。
レーダーの故障でしょうか? 美月はすぐにそれを疑いましたが、綾乃を示した点はあります。
「消えた? なんで突然……まさか、レーダーにうつらない何かを使ったとか!?」
綾乃は焦っているようです。
そうなると美月も……。
「ど、どどどどうしよう綾乃ちゃん!?」
今こうしている間も人々に被害が出ているかもしれない。
美月はそう思うと居てもたってもいられませんでした。
ですがどうする事も出来ません。
「とにかく現場に向かおう、方角は……西! このまま真っ直ぐ、地図を出して案内をするから美月は指示通りに飛んで!」
「わ、分かった……」
綾乃の指示に美月は頷き真っ直ぐに飛んでいきます。
一体、何が起きたというのでしょうか?




