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65話 謹慎中の訓練をする少女

 待ちに待った訓練の時間。

 そこでは綾乃と話が出来る。

 そう思い込んでいた美月は雑談が出来ない事を知りショックを受けた。

 新谷の言う事では疑われない為にもどうやらカメラの無い場所で話せという事らしいが……。

 それを聞き納得できない様子の綾乃は彼に対し美月の変化が分からないのか? と怒る。

 美月自身も少し気が付いてくれてもいいのにと思ってしまうのだった。

 シミュレーションでの訓練。

 それは嘗ての戦場を写したものでもあります。

 だからこそ……。


「美月……! 10秒後、右側から狙撃が来るよ!」

「う、うん!」


 記憶し予測することは簡単でした。

 綾乃が口にした通り、右側面からの狙撃を避けた美月はそちらへと向かって銃を撃ちます。

 いくら、焦りやすい美月だと言っても、多少は覚えています。

 この後の行動は狙撃し、攻撃したイービルに近づくのです。

 だからこそ、今は敵が居なくとも――。


 数秒後、銃弾が当たる音が辺りに響き渡りました。

 天使(アンゼル)はその攻撃で膝関節を損傷、地に足を付きます。

 すると綾乃の巨大なブレイバーで背骨をへし折られシミュレーターは終了しました。


「ふぅ……大分いい感じかな!」


 模擬コクピットから出てきた二人は共に近づき、おつかれさまと声を交わします。

 そして、綾乃は満足そうな表情を浮かべました。

 それを見た美月も笑みを浮かべました。

 ですが、それを見ていた二人は怪訝な表情を浮かべています。

 確かに綾乃の判断で美月に指示をすれば冷静な対応が出来ました。

 それ自体は問題ありません。


「何二人共難しい顔してるの?」


 綾乃が彼らの表情に気が付き、眉をひそめました。


「上手く行ったと思うけど……」

「いや、訓練は良いんだ……ただ……」


 新谷は腕を組み首を傾げました。


「前回、その前と天使共は1機じゃなかった……このシミュレーターは意味があるのか? 今までの戦法が使えない……今の様に簡単とはいかなくても倒せたこともあるが、それも出来ない」


 そう、今までは天使が1機だけ……。

 ですので同じ状況に陥ったり、持ち込めたりする事は彼の経験上では何度かあったようです。

 だからと言って勝てるかと言ったらそうではありませんでしたが……。

 今は違います。

 美月の乗るマナ・イービル。

 攻撃面に特化した綾乃の専用機体ナルカミ。

 そして、中国にあるリンの機体である斉天大聖。

 これらの機体は天使への有効手段である事は実証されていました。


 残念な事にナルカミのデビュー戦では負けてしまいましたが、たった一機であそこまで戦える機体は他にはないでしょう。

 それもマナではなく通常のイービルでです。

 そして、それは敵である天使(アンゼル)達も気が付いているはずです。


 彼らは今までたった一機で攻めて来て破壊行動をし、帰って行きました。

 ですが、ジャンヌに負けてから二機での行動が目立ちます。

 相手も対応してきているのにこちらがやっている事は過去の戦闘データを引っ張り出しての訓練です。


「確かに、意味がなくなって来てるかもしれな」


 更にはシミュレーターには本来は出来なかったはずの天使の撃破も出来ます。


「元々、天使に勝てない事に業を煮やして作ったゲームのような物だからな」


 伊逹はそう言うとシミュレーターから戻って来た二人に手を上げる事であいさつをしました。


「そうだね、だけど……これが先頭の役にも立ってた事はあるんだ……」


 新谷は先程意味があるのか? と言う疑問を口にしておきながらもシミュレーターを肯定します。

 しかし、同時にやはり気になるのは……。


「でも、今は……本当に役に立つのか?」


 その事でした。





 美月達は話を聞きながら、同時に違った表情を浮かべました。

 美月は不安そうな顔。

 そして、綾乃は呆れた顔です……。

 どうやら、今の訓練は本当に意味があるのか? という疑問は綾乃の方にはもうすでにあったようです。


「綾乃ちゃん……」

「遅かれ早かれ誰かが気が付くとは思ってたけど……」


 大きなため息をつく綾乃。

 当然です……シミュレーターはあくまでシミュレーター。

 現実とは違うという事は前回の戦いで身に染みていました。


「でも、どうやって訓練するってんだろう?」


 まさか、シミュレーターにAIでも組み込むのか? とも考えましたが予算が足りる訳がありません。


「意味、無いの?」


 美月は綾乃の方を向き不安そうに口にしました。

 すると綾乃は首を横に振り。


「絶対無意味ってわけじゃないって」

「そ、そうなんだ」


 否定されなかった事にがっくりと項垂れる美月。

 前はやぼったかった前髪は今はないため頭を動かすと感じていたくすぐったさも今はありません。

 彼女はそんな事を感じつつも振り返ると今まで入っていたシミュレーターを見つめました。


 考えてみれば確かに徐々に相手のパターンを覚えてきました。

 同じ行動を繰り返す天使(アンゼル)

 いくら美月でも何度もやれば対処は出来るでしょう。


 いえ、事実徐々に出来て来ていました。

 だからこそ……訓練の意味が無いようにも思えるのです。


「……対人戦、必要かもしれないな」


 そう呟いたのは伊逹です。


「いや、危険すぎる」

「ならどうやって実際の戦闘を経験する?」


 新谷の言葉に伊逹はそう尋ねました。

 二人の言った事は正しいのです。


「でも、訓練でなにかあったら……衝撃は同じだから……」


 美月は新谷の言う危険とは恐らくその事を指しているのだろうと考え口にします。


「だけど、実際に考えて行動する相手で訓練した方が良いんじゃない?」


 同時に綾乃は伊逹の言う事に肯定をしめします。


「「「「……………………」」」」


 ですが、誰も答えを出すことはできません。

 確かに危険であり、確かに現在のままでは訓練としては最早微妙と言った所はその場にいる誰もが理解出来たからです。

 そんな時、非常用のランプが付き……。


「天使だと!?」

「またか、この頃多いな……!」


 敵の襲来を告げるのでした。

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