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64話 心の弱さを知った少女

 髪を切り部屋へと戻ると母親が待ち構えていた。

 彼女は変わった美月を見て驚く……。

 勝手に出て行ったことを咎められた美月だったが、すぐにその話は終わり……。

 綾乃との話をし……彼女が帰ると一人悩むのだった。

 その日から美月は部屋に閉じ込められたままです。

 とは言っても軟禁状態。

 外に出れることもあります。


 その理由の殆どが訓練などですが……それでも綾乃と話せる機会があるのは美月にとって嬉しい事でした。

 そう考えると普段とあまり変わらない。


「綾乃ちゃん……」


 美月は錯覚に陥りそうになりつつも、声を弾ませ綾乃に声をかけました。

 すると……。


「夜空ちゃん、君は雑談は禁止されている」

「……え?」


 新谷に声をかけられたかと思ったら予想外の言葉に美月は首を傾げました。


「今は謹慎中、かといって君に訓練をさせない訳にはいかない。だからこの場へと来てもらっているが、雑談は禁止されているんだ」

「…………」


 新谷の言葉に美月は言葉を失います。

 当然です……まさか話すことまで禁止にされているなんて誰が思うでしょうか?


「あのさ、別にいいじゃん! ここには私達しか……」

「だが、カメラがあり、何をしているかは分かってしまう。変に疑いをかけられるような行動は避けた方が良い、夜空ちゃんのためを思うなら尚更だ」


 彼はそう言いますが、何が自分の為なのかは美月には分かりませんでした。

 ですが、新谷が意地悪でそんな事を言っている訳ではないと知った美月は黙り込み……。


「相談したい事でもですか?」

「下手に会話をすれば声が届いてない分、余計な疑いをかけられる。相談なら司令官の所かカメラが無い部屋でしてもらった方が良い」


 彼はまじめな顔を崩さないまま、そう言ってくれました。

 カメラが無い部屋……つまり、美月の部屋の事でしょう。

 各自の部屋はプライバシーを守る為に入口以外にはカメラが無いのです。

 そして、中が見れないからこそ綾乃は美月を監視するために部屋に来てくれます。


 だからこそ、その時を使えと新谷は言っているのでしょう。

 美月はすぐに頷くと……訓練へと戻るのでした。


「美月!? 良いの!?」

「大丈夫……」


 本当は不安です。

 またあんなことにならないか不安でならない……。

 だが、これ以上新谷に迷惑を駆けたくない、美月はそう思って黙って訓練へともどりました。

 しかし……その間もどんどんと不安は膨らんで行きます……。

 人を守るため……そう思っていた力で人を傷つけてしまった。

 それは自分の弱さにあり、それに気が付いてしまった美月は……。


 自分が信じられなくなっていたのです。


「それにしても……」


 そんな中、綾乃は美月のそんな気持ちを気付いてか、それとも気が付いていないのか……。


「美月が髪切ったの気が付いてないよ! 印象変わったのに、これだから……」

「…………ぁ」


 美月は確かに髪の事に触れられていないと思い出し、綾乃の言葉はすこし可笑しいと思ったのですが、すぐに面白くないと思い始め。

 思わず頬を膨らませます。

 何故か新谷に対し不満が生まれたのです。


「気づかいが出来ない証拠だよ!」


 綾乃は更にそう続け、美月は頬を膨らませたまま新谷の方へと目を向けるのでした。


「え? 何で夜空ちゃんは怒ってるの?」

「知りません!」


 なんで、私自身変わったって思えるぐらい……こんなに目立つぐらい髪を切っているのに気が付かないの?


 美月はそう思い、ぷいっとそっぽを向いてしまいます。

 すると当然、新谷はなぜ急に不機嫌になったのかと焦り始めました。

 その理由を知る綾乃は当然だ! という表情になり……。


「女の子の変化に気付けないのが悪いの! っていうか、いくらなんでも分かりやすいと思うよ」


 と言うのですが……新谷は……。


「へ? えっと……え?」


 気が付きません。

 そんな3人の元へとしびれを切らした様子の伊逹が来て……。


「お前達、さっさと訓練を……っ」


 美月を見ると目を見開きました。

 それを見て美月は少し怯えたのですが……。


「お前、髪をどうした? まさか、司令官に罰かなにかで無理矢理……」

「ち、違います、これは……」


 無理矢理と言う部分はあっているような気がしたため、美月はどう答えたものかと悩みますが、そんな彼女達のやり取りを見た綾乃は意外そうに言いました。


「伊逹さんは気が付くんだ……」

「いや、気が付かない方がおかしいだろう? 顔がはっきり見えるぞ」

「……へ?」


 すぐに返す伊逹に対し、新谷は首を傾げます。

 それを見て美月は……新谷さんは私の事見てなかったんだ。

 とショックを受けました。


「……ああ! どうりでよく目が合うと思った!」

「いや、気付くの遅いし……」


 ようやく合点が行った様子の新谷に対し、心底呆れた様子の綾乃はそう口にし……溜息をつくのでした。


「ってそれはそれで……とにかく訓練だ。行こう!」


 新谷は疑問が晴れた事ですっきりしたようすですが、美月はそうではありません。

 頬を膨らませたまま、だまってシュミレーターに入り込みます。

 すると、新谷は再び困った事を顔に出しました。


「で、何で夜空ちゃんは不機嫌なんだ?」

「そこは気が付かないの!?」

「いや、新谷お前……それは流石に気が付いてやれよ、何処まで鈍感なんだお前は……」


 余りの鈍感さに呆れ果てる二人に対し新谷は首を傾げ、美月はシュミレーターの中で……。


「気が付いてくれてもいいのに……」


 と不満を漏らすのでした。

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