63話 安息を得る少女
謹慎処分を受けた美月。
彼女は自室で自分こそが自分を化け物と呼んでいる事に気が付いた。
そんな事を口にしていると綾乃が訪ねて来て……。
暗いのは髪の所為だっという彼女に手を引かれ美月は外に出て、髪を整えられるのだった。
部屋へと戻ると両手に腰を当てた美月の母が立っていました。
美月は彼女の普段見ない姿を目にし驚きます。
すると、怒っていた様子の母も美月の姿に呆然としていました。
「み、美月……髪どうしたの!?」
今まで目までかかる髪だったはずの美月。
ですが、今はその可愛らしい顔がはっきりと見えます。
だからこそ、母は驚いているのでしょう。
「あーえっと、やっぱりさ、気分が変わるでしょ?」
そんな彼女にそう言ってくれたのは他でもない綾乃です。
綾乃は美月の母の元へと近づくと……。
「折角可愛いんだし! その……ごめんなさい、謹慎前に髪だけでもって私が無理やり連れて行ったんです」
本当は違う。
美月は慌てて首を横に振りますが、母は大きなため息をつくと……。
「分かった、そういう事にしておいてあげる。でも、もう勝手に出て行っちゃ駄目! 心配させないで……」
戦うだけでも心配なのに、今回人を傷つけたというのはもう母にも伝わっているのでしょう。
「不可抗力だったって聞いたけど、駄目な事は駄目! 分かってるわよね?」
「……はい」
美月はただ頷き、答える。
すると母はそれ以上は何も言う必要はないと考えたのでしょう。
笑みを浮かべて……。
「ほら、ご飯は後で持って行ってあげるから、部屋に戻りなさい」
美月と綾乃は彼女に促されるまま、部屋へと戻るのでした。
それからは他愛のない話をするだけです。
監視や見張りと言っても美月の精神安定のためと言った方が良いでしょう。
「それでさー……って」
ですが、そんな時間も長くは続きませんでした。
何故なら彼女のスマホが震えたからです。
「そろそろ戻らないとね」
あくまで定期的に訪れ、美月の様子を見ていく……。
それが綾乃の今の仕事です。
「あ、うん……」
美月は当然寂しいと思いましたが、それ以上は何も言えません。
彼女は罪を犯してこうなっているのですから……。
「大丈夫、謹慎なんてすぐにとけるよ、だって……美月は悪くないし」
綾乃はそう言ってくれましたが、美月はそうは思いません。
人を傷つけてしまった。
それは彼女にとって一番ショックな事でした。
だからこそ……。
「……私が悪いんだよ」
そう口にすると綾乃は大きなため息をつき。
「はい! そこまで雰囲気変えたんだから! 気持ちもあげてこーよ!」
美月の額にとんっと指を当てた彼女は笑みを浮かべました。
綾乃が去ってから美月は部屋の中で大人しくしていました。
やる事がありません。
ですから先程の会話を思い出していました。
「えへへ」
すると自然に笑みが浮かびます。
鏡を見て今の自分を確認してい見ると前髪が整えられただけで別人にも見えました。
「これだけで変わるならお化粧とかしたらどうなるんだろう?」
美月はそんな疑問を浮かべましたが、すぐに首を振りました。
自分が化粧をしている風景が思い浮かべられなかったのです。
「綾乃ちゃんに聞いてみようかな?」
そう思いましたが……。
「今は駄目だよね、反省中だし……」
美月も女の子です化粧には興味が無いと言ったらうそになってしまうでしょう。
ですから綾乃の名前を口にしたのですが、今はそれが出来る立場ではない。
ましてや自分は人を傷つけたのだと落ち込みます。
「……私はなんで魔法を使ったんだろう?」
無意識に魔法を使ってしまった事を何故? と美月は考えました。
普段は魔法を使おうとして使っていたのですから使えて当然です。
そう思いましたが、美月はふと思い出します。
「私、他にも無意識で……魔法を……」
使った事がある。
その事に美月は気が付きました。
それはマナイービルへと乗り天使と戦った時です。
無我夢中で忘れていましたが、確かに美月は無意識の内に魔法を使っていたのです。
「そ、そうだ……私……前から……」
美月がっくりと項垂れ、気が付きました。
それこそが美月の弱さなのだと、ですが、それをどうすれば良いのか?
なんて事は分からず。
彼女はただただ人を傷つけた事に胸を痛め……夜を迎えるのでした。
真っ暗な中、一人何故? どうして?
どうすればいいのか? と問い続け……。
その答えは美月自身には出すことが出来ませんでした。
ただ、分かることはこのままでは本当に自分が化け物になってしまうという事と……。
そして、また自分自身が化け物だと考えている事に気が付き。
美月は更に落ち込みます。
そんな時、彼女の脳裏に過ぎったのは綾乃の言葉でした。
「気持ちを上げていく……」
すぐにそんなことが出来る訳がありません。
ですが……それでも彼女の言葉は美月にとって助けとなる物でした。




