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58話 困惑する少女

 美月は綾乃と共に訓練を開始した。

 しかし、それを見守る新谷と伊逹はある不安を抱える。

 綾乃は確かに格段に動きが良くなった。

 しかし、美月はあまり変わっていないのだ……。

 今は機体の性能、そして本人のスペックでどうにかなっているようだが、いずれこのままでは……。

 そう新谷は告げるのだった。

 その日、新谷は司令官の部屋へと訪れていました。


「結果を聞こう」


 司令官である姫川司は新谷に尋ねます。

 すると新谷は頷き……。


「まず、単刀直入に言いますと彼女はいずれ戦いに追いつけなくなるでしょう」

「…………理由は?」


 新谷の言葉に対し、微動だにしなかった司はその理由を尋ねました。

 それに対し新谷は伊逹と話していた時の事を丁寧に報告をします。

 すると司は溜息をつき……。


「なるほど、な……それは直す事は出来そうか?」

「……こればっかりは、分かりません。ただ……彼女、夜空美月が成長しなくては直せるものも直せないかと……」


 成長……という言葉を使った新谷ですが、あくまで彼女、美月が精神的に自信をコントロールできるかどうかです。

 現状では感情のままに魔法を使っている……そう捉えて良いでしょう。

 ですが、それでは伊逹と話した通りいずれ限界が来てしまいます。


「そうか……」


 司は再び深い溜息をつくとモニターに映る戦闘記録を見ます。


「今回、いやシュミレーターでは安定しているのか?」

「いえ、やはり臨機応変にとはいきません、どうしてもその場その場で凌げてしまうので……」

「魔力と魔法が強いが故、現状はどうにかなっている、か……」


 彼の言葉に頷く新谷。

 話だけでは臨機応変と捉えてもいいかもしれません。

 ですが、やはりそう言えない理由は……。


「避けられる攻撃もその前に対処が出来ていないので危機に陥ります。娘さんの方は観察をし予測をしはじめましたが……夜空ちゃんの方は」

「分かった、では君はこれまで通り、頼む」


 報告を聞き司は頷き、新谷へとそう伝えます。

 すると新谷は頷き、部屋を去って行きました。


 一人残った部屋で司は夜空美月の情報へと目を通しました。

 そこには彼女の経歴やこれまでの戦歴が乗っていました。


「……機体と彼女自身の力でか……彼女自身戦いには向かないであろう人物だ。当然だな」


 呟きは誰にも聞かれることはありません。

 ですが、司はその言葉を続けました。


「いずれ、この問題には辿り着くとは思っていたが、こうも早いとはな……」


 頭を抱える事なのでしょう、ですが彼はただただ腕を組み彼女の情報へと目を通すだけ。


「何か対策を考えなくては……」


 そして、そう呟いた後、彼は黙り込むのでした。






 美月達はその日の訓練を終えるとシャワーを浴びて出てきました。

 あの日から美月の傍には常に綾乃が居ます。

 美月にとっては嬉しい事でもありましたが、あの時の出来事を思い出すと顔が赤くなってしまうのでした。

 その理由はとても簡単な物です。

 美月にはここに来るまで友人が居ませんでした。

 それどころか美月は自分が居ない所では陰口を言われている。

 そう思っても居ました。

 実際、今回も化け物と呼ばれていたのですから、間違いないでしょう。


 それなのに、綾乃は美月がそこにいる事を知らずとも守ってくれたのです。

 まるで物語に出てくる裏切らない友人の様に……。

 それが嬉しくてたまらないのです。


 勿論、顔が赤くなるのはそれだけではありませんが……。


 わ、私、どうしたんだろう……あの時の綾乃ちゃんの顔が離れないよ……。


 それは迫ってくる綾乃の顔。

 その時の事を思い出すと美月は自然と赤くなってしまいます。

 胸もドキドキとし始めます。

 まるで新谷の事を考える時のように……。


 なんで、新谷さんと同じように? 私おかしくなっちゃったのかな? だって綾乃ちゃんは女の子で……。


 好きか嫌いで尋ねられれば迷いなく好きだと答えられるでしょう。

 ですが、それがただの友人として……とは言えなかったのです。

 ましてや新谷の時と同じ感情と考えると同性である綾乃に対し美月は恋をしている事になり……。


 そ、そんなこと知られちゃったら、きっと嫌われちゃうよ……。


 顔を真っ赤にしたまま頭をぶんぶんと振ると水に濡れた綺麗な黒髪は揺れ動きます。


「み、美月? ちゃんと髪乾かしておいた方が良いよ?」


 そんな彼女に対し、綾乃はいつも通り、対応してくれました。

 美月は途端に恥ずかしくなり、こくこくと首を縦に振ると……。


「……そんなん、アタシだって……」

「……ん? 綾乃ちゃん?」


 綾乃が何かつぶやいたのに気が付いた美月は彼女の名前を呼びます。

 ですが、綾乃は笑みを浮かべ首を横に振ると……。


「何でもないって! ほら、貸して? 乾かしてあげる」

「じ、自分で出来るよ?」


 半場強引にドライヤーを奪われた美月はすこし頬を膨らませますが、綾乃に促されるまま座ると目を細めながら気持ちよさそうに髪を手入れしてもらうのでした。

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