48話 後悔する少女
綾乃の元へと駆けつけた美月。
彼女は魔法を使い天使を撃墜することが出来た。
だが、綾乃は意識を失っていて……
駆けつけた新谷により彼女は運ばれる。
また、彼の指示により美月は彼女のイービルを回収するのだった。
ピッピッピッと断続的に電子音が聞こえる部屋。
美月はそこに居ました。
これから管理者である、綾乃の父親と話さなければならないのですが、その前に美月はどうしてもそこに行きたかったのです。
「命に別状はありませんよ、ただ……脳にダメージがあるかもしれません」
そう医師は口にした。
それを聞くと美月の中に後悔が生まれます。
何故、自分はイービルを降りたのか?
何故、もっと早く戦わなかったのか?
何故、綾乃でなければならなかったのか?
誰も答えてはくれません。
ですが……。
「きっと大丈夫、きっと目を覚ましてくれますよ」
と医師は美月に伝えてくれました。
ですが、それはあくまで気休めの言葉だというのは彼女も理解していました。
だからこそ、美月は黙り込み……綾乃を見つめます。
「さ、早くしないと司令官がお待ちです」
「……はい」
美月は頷き部屋を出ます。
重い足取りで司令官のいる部屋へと向かい始めました。
ごめんなさい、ごめんなさい。
心の中でどんなに謝っても……いえ、例え口に出しても後悔はずっと残るでしょう。
美月はただただ、同じ言葉を繰り返しながら部屋へと向かうのでした。
部屋に着くと其処にはすでに何人かの人が居ました。
彼らは美月が来る前に何かを話していたようです。
「今回は確かに命令違反だ! だが、彼女が居なければ天使は撃破できなかった」
「だが、もし失敗していれば? 機体は失われていたんだぞ!」
「事実、損傷もしている罰せられるのは当然だ!!」
どうやら、美月の事で話していたみたいです。
入って来た美月に気が付かず話を続ける人達。
そんな中、綾乃の父である司は美月に気が付き……。
「よく来てくれた、すまないな……今日は君達の事で話がある」
彼がそう言うと今まで怒鳴りながら話していた人達はぴたりと止まり、美月の方へと目を向けてきました。
美月はその場から逃げ出したい気持ちになりましたが、ぐっと堪え前へと進みます。
「何を話すか分かっているな?」
「はい……」
消え入りそうな声で美月は答えると頷きます。
すると先に来ていた伊逹は彼女の前に立ち。
「おいおい! お前さんは立派に戦ったんだ……そう気を落とすな」
と口にしてくれました。
ですが、そのすぐ後に……。
「ふざけるな! 勝手に機体を動かしてもし失われたらどうするつもりだったんだ!! 替えの利く兵士とは違い、あれは一つだけだ!」
「お前こそふざけるな! マナ・イービルは今彼女にしか動かせない! 道具をそのまま腐らせるよりましだろう!!」
と怒鳴り声が聞こえ美月は思わず身構えてしまいます。
ですが、そんな美月の事を伊逹以外の誰かが気遣うという事はしませんでした。
「静かにしろ!」
止まらない罵声の中、一人の男性の声が響きます。
綾乃の父である司の物でした。
彼は今まで口論をしていた男性達に目を向け……。
「マナ・イービルは夜空美月にしか動かせない、それは事実だ」
と告げます。
「だが、同時に勝手に機体に乗り込み、更には戦闘行為を行った……これは違反行為であり、運が悪ければ機体は此処にはない」
と顔その場にいる者達の方へと向けるよう動かしながら言葉にしました。
最後に美月の方へと向いた彼は……。
「何か言う事は?」
「……ありません」
美月はそう言うと項垂れ、黙り込みます。
全て事実だからです。
ジャンヌダルクは美月にしか動かせない、だというのに急に機体を降り、兵士ではなくなった。
しかし、綾乃の危機に伊逹と一緒に勝手に機体を動かしたのです。
それは決してそそのかされた訳ではなく、自分の意志ででした。
だからこそ、彼女は何も言えなかったのです。
「なら決まったな、その子供は即刻罰を与えるべきだ!」
「それで? どうするんだ? またあのイービルは乗れる人間を探す所からか?」
先程から聞いていればどうやら美月を使いたい派と追い出したい派の様な物に分かれているようにも聞こえました。
そんな中、真ん中に座る司の出した答えは……。
「夜空美月、君のしたことは許される事ではない……だから、君はこれからジャンヌダルクから降りる事を許されない、どんなことがあっても戦う事からは逃げれない、良いね」
彼はそう言うと……これで話は終わりとばかりに立ちあがります。
すると――。
「ちょっと待て! 司令官」
「他に方法があるかい? 彼女の力は我々には必要だ……もともと彼女は怖くてイービルを降りた。それが罰になりえると私は思うが?」
と口にすると男性は黙りこむのでした。
「これは君にとって罰となりうる、違うかい?」
美月に問われた言葉は優しい物でした。
確かにジャンヌダルクを動かせる美月の喪失は日本にとって痛手でしょう。
ですが、それだからと言って許してしまえばそれまでです……。
マナ・イービルを動かせる美月は何をしても良いのか! と言われてしまいます。
だからこそ、罰と言う言葉を使っているのでしょう。
事実、美月が恐怖に打ち勝ったか? と問われればそれは違うのですから罰と言われれば確かに十分なのかもしれません。
「……はい」
ですが、美月は今度こそと強く誓い首を縦に振るのでした。




