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46話 恐怖と戦う少女

 綾乃の危機を目の辺りにした美月。

「駄目……駄目……!!」と言うが、彼女には何も出来ない。

 そう思っていた時、彼女を後押しする声が聞こえ、彼女は再びイービル・ジャンヌダルクに乗り込むのだった。

『良いぞ! そのまま真っ直ぐだ!!』


 伊逹の案内で綾乃の元へと駆ける美月。

 彼女はその瞳から涙を流しながら恐怖と戦い、それでも足を止める事無く急ぎます。


『右にずれた! 行きすぎだ!!』


 命令違反をしたことが怖いわけではありません。

 天使(アンゼル)が怖いのです。

 ですが、それでも彼女を動かす何かがありました……。

 助けたい、という気持ちはありました。

 ですが、それだけではない事も確かでした。

 何故そう思うのか? 美月は分かりません。

 ただ……ただ、綾乃に死なれるのが怖いのです。

 だから、助けなければと考えていました。


『伊逹さん!! まずいっす!! 扉が!!』

『チッ!! ここまでか!! おい夜空!! 必ず戻って来いよ!!』


 突然聞こえた焦った声、それと共に紡がれた伊逹からの激励。

 すぐ後には声や物音が聞こえ、通信は途絶えてしまいました。

 そして、すぐ後にぷつりと言う音がします。


『夜空さん! 今すぐ帰還してください!! 貴女はもう悪魔乗りではありません!!』


 聞こえてきたのは明智望の声。

 ですが、美月は先程整備班の男性が操作をしていた場所を見て、それを見つけます。

 そして、手を伸ばしスイッチを動かしました。


『これは違反行為です! いくら――』


 再びぷつりと言う音が聞こえるとともに明智の声も聞こえなくなりました。

 伊逹達が捕まってしまった以上もう、サポートは受けられません。

 此処からは本当に一人でなんとかするしかないのです。


「――っ! 見えた!!」


 小さな声で美月は目の前に真っ黒な悪魔がいる事に気が付いた事を呟きます。

 するとその奥からはきらりと光る物が見え、同時に先程の言葉が脳裏に浮かびます。


 あ、はは……今の警告って奴かな? 向こうスナイパーライフルかなにかを持ってるよ……。


「――駄目、駄目!!」

『魔力増幅確認、SSS起動……テンペスト展開いたします』


 美月が生み出した魔法……吹き荒れる暴風の力でグンッ!! っとジャンヌダルクは今までにない速さで加速をします。

 そして、そのまま美月はジャンヌダルクの手を前へと向けました。


「駄目ぇぇぇええええええ!!」


 無意識でした。

 ただ、彼女は綾乃が死ぬという恐ろしい結果を見たくなかったのです。


『魔力増幅確認、プロテクションフィールド展開迄、後5秒……4、3、2、1展開』


 前方へと展開された強固な盾は銃弾を弾き、それでも美月は止まりません。

 前から来たもう一機の天使へと体当たりをします。

 すると強固な盾は武器となり、天使を吹き飛ばしました。

 当然でしょう美月のプロテクションフィールドは前方からの攻撃ならば大抵の事は防げるのですから。

 それが、まともに……それも速度があればその衝撃もすさまじい物です。

 同時に美月は機体そのものが当たる訳ではありません。

 衝撃も少なくて済みました。


「綾乃ちゃん!!」


 美月はすぐにオープン回線で叫び、振り向きますが、通信を切っているため綾乃が何かを言っているのかさえ分かりませんでした。

 ですが、無事なのは分かり、ほっとします。

 とはいえ、まだ敵は居ます……安心しきる事は出来ません。


「――っ!」


 銃声が聞こえ、美月は思わず身構えます。

 ですが美月の魔法の前には銃は全くの無意味でした。


『プロテクションフィールド展開終了まで後10秒……』


 しかし、どんな攻撃をも弾く美月の魔法もずっと使える訳ではありません。

 無情にもその時間は過ぎてしまい。

 まるでそれを狙ったかのように再び銃声が聞こえます。

 美月は咄嗟にブレイバーを手に取り、盾の様に構えますが――すさまじい音と主に剣は折れてしまいました。

 それだけではありません。


「か、肩が……」


 エラーを伝える警告音がコクピット内に響き渡ります。

 モニターを見ればそこには左肩が故障している事が分かりました。

 これでは腕を上げる事は出来ないでしょう。


「どうしよう、どうしよう……」


 左腕が動かなくても右腕があります。

 確かに戦力の低下はありますが、まだ動けます。

 焦る必要はないのですが、天使(アンゼル)に対し恐怖を覚えた美月にとっては死活問題でした。

 ですが、敵は美月が攻撃を仕掛けてこないと知ると再び銃声を鳴り響かせます。


「ひっ!?」


 美月が小さな悲鳴を上げると同時。

 それは起きました。


「……え?」


 綾乃が美月の前へと出たのです。

 真っ黒な悪魔に視界を奪われた美月は目を見開きます。

 そして、美月はその悪魔に押し飛ばされました。


「きゃあ!?」


 それから少し遅れ、黒い悪魔は音を立て倒れました。

 ガチガチと歯がなり、美月はそれを見下ろします。

 ピクリとも動かない機体。

 コクピットである頭部にはなにも傷はないとはいえ、倒れた時の衝撃は綾乃を襲っているでしょう。


 死


 ただそれだけが頭に浮かんだ美月はその場に崩れそうになりつつも銃声が聞こえた方へと目を向けます。

 美月は銃弾が自身に迫っていると感じつつ――ある感情が溢れ出ていました。


「――!!」


 それは怒り――。

 彼女は恐怖を感じると同時に綾乃を傷つけられ怒っていたのです。


『魔力増幅確認、テンペスト展開……完了』


 風は吹き荒れ、辺りには岩や鉄くずなどが舞います。

 するとすさまじい音と主に岩が砕けました。

 恐らく銃弾があったったのでしょう。

 暴風でずれていたのか見当違いの場所で起きたそれを見つめながら美月は天使へと向かって飛びます。


「――っ!!」


 風に押され、ジャンヌは加速し――美月は銃を構えました。


 早く、早く!! 綾乃ちゃんを助けないと!!


 倒れたナルカミに乗っている綾乃は危機的状況なのは誰の目から見ても明らかです。

 ですが、彼女を助けるにはどうしても敵が邪魔なのです。


「これで、落ちて、落ちてぇええええ!!」


 美月の祈りは叫びとなり、大型アサルトライフルは火を吹きます。

 鈍い音と共に天使へと被弾したのが分かりますが、関節部分を狙わない限り、大した効果はありません。

 そんな事は美月も知っていましたが、焦っている彼女はまともに狙いを定められていませんでした。

 天使は近づいてきた事で最早銃は無駄と考えたのでしょう、剣を持ち美月に対抗をしようとしました。

 美月と言えば銃が効果が無い事に焦りを覚え――。


 どうにかしないと、綾乃ちゃんが!!


『――魔力増幅確認、インフェルノ展開迄後5秒……展開』


 綾乃は魔力をジャンヌへと注ぎ込み、新たな魔法を発動しました。

 焔は瞬く間に広がり、天使を包みます。


「――落ちてぇぇえええ!!」


 美月はこのまま時間が掛かけられない、そう思いつつ再び叫び声をあげるのでした。

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