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4話 目覚めた少女

 突然襲い来る天使。

 それによりパニック状態になった人々……取り残される病人や怪我人。

 美月は綾乃やお婆さんを見捨てることが出来ず病院に残っていた。

 奇跡的にも助かった美月だったが、一人、死んでいるのを見てしまう……。

 そして、彼女は頭痛を訴え、そのまま意識を失うのだった。

 美月が目を覚ましたのは白い部屋。

 とはいっても真っ白と言う訳ではなく白が目立つ部屋でした。


「……ここ、どこ?」


 誰も居ないその空間に美月は勿論不安になります。

 辺りを見回してみてもその部屋には見覚えが無く……。

 ベッドから降りた彼女は見た事も無い服を身にまとっていました。


「…………」


 不安と恐怖、二つの感情に襲われた彼女はその場で固まっていると……不意に扉が開き。


「目が覚めたんですね、良かった……お母さんが心配してましたよ」


 入って来た女性は笑みを浮かべ、そう告げて来ました。


「お母さんが?」


 ですが美月はその言葉に警戒をしました。

 何故なら彼女は美月を心配する素振りを見せつつも白衣を身に着けていない。

 恐らくは看護師ではないでしょう。

 そして……仮に看護師だとしても美月が知らない人なのです。

 仕事の事もあり頻繁に病院に通っていた美月はある程度看護師の顔を覚えていました。

 だから、確信できたのです。


「ええ、あの天使の災害で奇跡的に生き延びました怪我も無いですよ……そして、病院に閉じ込められていた人々()ほぼ無事です」


 全員無事と言わない事には納得できました。

 何故なら美月の知る限りでは一人は犠牲者が出ているからです。


「殆どの患者さんはシェルター内の医務室や他地域の病院へ搬送されています。ですが、貴女はミュータントを寄生させていますから、一応この部屋で安静にしてもらいました」

「…………」


 確かに美月は寄生虫ミュータントを身体に宿しています。

 だからこそ、魔法と言う力を得ました。

 その代わり、他の人よりもずっと体力が無く、怪我もしやすいです。

 だから、此処が病院であればその対処は正しいと言えるでしょう。

 ですが……。


「ここ…………どこ……?」


 美月は見たことの無い景色に戸惑いを隠せません。

 だからこそ問いを投げたのですが、その声は小さく……。


「まだ、疲れているのですね。無理はありません……恐らくは貴女がした事だと上層部は言っていましたし……もしそうであれば、貴女のお蔭だという事ですからね……今は敵も居ません、安心して休養をしてください」


 彼女は美月の質問に答えず、いや聞こえてなかったのだろう、そう伝えるなり。


「ここにお水と軽い食事を用意しました。食欲が戻ったなら食べてください……それと貴方のお友達は本人の意志でこちらに来ています。ですので後程貴女が起きた事を伝えますね」

「……………ぁ」


 笑みを浮かべた女性はそのまま部屋を去って行ってしまいます。

 残された美月は呆然と扉を見つめていました。

 頑丈な扉ではありましたが、鍵をかけられている様子はないです。

 閉じ込められている訳ではないと分かっただけで少し安心しつつも……。


「…………とも……だち?」


 自分にはそう呼べる人は居なかったはずだ。

 そう考えた美月は首を傾げるのでした。

 ですが、すぐに考える事を止めました。

 その理由は……。


「頭、痛いよ……」


 再び頭痛がしてきた彼女は立っているのも辛く、ベッドの方へとふらつきながら歩いて行くと倒れてしまいます。


「……ぅ……ぅぅ」


 呻き声を上げ、頭を押さえる美月。

 ですが、前のように気を失う事がありませんでした。

 だからこそ、前よりも辛く感じていました……。

 そんな時です、扉が不意に空いたのに気が付いた美月でしたが、頭痛の激しさに反応せずにいると……。


「――夜空!? ちょっと! どうし……あああ、人、人呼んでこなきゃ!!」


 誰かが慌てた様な声を聞き、美月はようやく誰が来たのかを理解しました。

 姫川綾乃……彼女は慌てているのでしょう、物音を立てながら部屋の外へと向かっていっている様です。

 ですが――。


「ああーもう! 誰かいないの!? 普通ナースコールとかあるっしょ!? ふつー!! 後で父さんに訴えてやるんだから!!」


 当たりに誰も居ないのか憤った声が聞こえ、美月は頭痛とは別に彼女へと畏怖を抱きました。

 元々大きな声は苦手なのです。

 そして、誰かを見つけたのでしょうか? 美月が目を向けた時にはバタバタと走っていく姿が見えました。


 そして美月が頭痛に耐えていると……再び姫川綾乃は顔を出し……。


「ほら、夜空苦しがってる! どうにかして!!」


 看護師らしき女性に声を荒げる。

 しかし、その女性は首を横に振り……。


「そんな慌てなくても彼女のバイタルはちゃんと見ています。勿論今も急いでこちらに向かって――」

「良いから早く!!」


 急かす姫川に溜息をついた女性は美月へと近づくとまずは頬に手を当て、瞳を覗いてきました。


「めまいなどはない、ようですね……ですが頭痛と言う事はもう一度精密検査をしてみたいですが……動けますか?」


 看護師に尋ねられ美月は首を横に振りましたそれだけでも辛く……最早動くことも困難なのです。


「意識ははっきりしているみたいですね、動けないのでしたらこの場で少し脳波を取ってみましょう」

「ね? そんなので分かるの!?」


 姫川は驚いたのですが看護師は棚から出したのは帽子のような物でした。

 彼女はそれと機械を一緒に美月の元へと近づくと手早く準備を進めていき帽子を美月の頭へとかぶせました。


「簡単な脳波だけですので、MRIの様に精密ではありませんが……ミュータント関連であればこれで調べられることが出来ます」


 彼女はそう言うと機械を操作し……真剣な表情を浮かべます。


「どう?」


 姫川は機械を覗き込みますが当然何も分かりません。

 ですが看護師は彼女に対し……。


「もう少し待ってください……」


 冷めた声でそう返しました。

 ですが、その間も美月は収まらない頭痛に苦しみ――それを見た姫川は気が気でも居られない様子です。

 彼女は――。


「ね、早く……まだなの!?」

「もう少しです……」


 もう一度訪ねますが、帰って来るのは同じ言葉でした。

 それから何度美月の苦しむ顔を見てやきもきしたのか分からなくなった頃、姫川はもう一度訪ねようしました。


「でました……どうやらやはり、ミュータントの影響みたいですね……」


 彼女はそう言うと美月の方へと目を向けます。

 その瞳は信じられないものを見たかのような表情でした。


「ここまで寄生……いえ、同化が進んでいるのですから、何らかの体調不良が出てもおかしくはありません……」

「はぁ!? じゃぁ早くミュータントを取ってよ!」


 姫川はそう訴えますが、看護師は首を縦に振る事は無く、逆に姫川へと尋ねました。


「何のために連れてきたんですか、それ以前にその結果この子が死ぬことになっても?」

「……は?」


 ……え?


 美月と姫川は看護師の言葉に同時に驚きました。

 死ぬ……それは一体どういう事だろう? その答えは看護師がすぐに答えてくれるのでした。

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