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38話 立ち会う少女

 イービルの格納庫へと向かった美月達。

 そこで美月はイービルが怖くないのか? と問われこれに怖くないと告げた。

 ほっとした様子の伊逹はコピスの修理がまだと言う事とナルカミと言う機体の事を話す。

 そのナルカミは……綾乃の機体の様だが、装甲は薄く、武器が通常の物よりもさらに大きいものだった。

 果たして、大丈夫なのだろうか?

 黒い悪魔、ナルカミ……。

 それは他のイービルと比べると細身です。

 そんな細身で扱うのはこれまでの武装とは違う大型の物。


「だ、大丈夫なのかな? 折れたりしない?」


 当然、美月はその事を心配します。

 すると伊逹は首を振り答えてくれました。


「大丈夫だ、こいつには軽くて頑丈な素材が使われてる。じゃなきゃここに無いさ」


 その言葉に美月はほっとしましたが、すぐに首を傾げました。

 そんな素材があるのなら他のイービルに使えばいいのでは? と……。

 そうなればイービルの起動性は上がるはずです。

 更にパイロットである悪魔乗りを選びそうですが、天使との戦いは変わってくるかもしれません。

 そんな彼女の疑問は見透かされたのか、伊逹は大きなため息をつきながら口をまた動かしました。


「ただ、その素材は髙くてな、こいつはそれで全部の装甲が出来てるとも言ってもいい、だからこそマナ以上の資金食いで武装も武装、愚か者(ザ・フール)と言う開発名が付いたんだよ」

「だからナルカミだってば!!」


 頬を膨らませる綾乃はどうやら怒ってはいないみたいです。


「そう言っても俺は知らねぇ……とにかく、こいつの起動テストは明日実行だ。シュミレーターで散々練習したとはいえ、実際にぶっ倒れるなよ?」


 と伊逹は乱暴な言葉を使いつつ告げてきました。

 ですが、その言葉には綾乃は素直に頷きます。


「分ってる」


 彼の言葉が自分を心配してくれるものだと理解しているのでしょう。


「綾乃ちゃん、気を……付けてね?」


 美月がそう言うと綾乃は柔らかい笑みを浮かべます。


「もしもの時に備えて美月も来てくれるんしょ?」

「う、うん!」


 彼女の言葉に美月は首を縦に振ります。

 するとまだ暗い顔だったリンチュンは……。


「あの……」

「リンちゃんも、お願いね?」


 綾乃は笑みを絶やさずに彼女にそう言うとリンチュンはようやく少し表情をやわらげ。


「分かった!」


 と返事を返しました。


 翌日、いよいよナルカミの起動テストです。

 とはいえ、実際に出撃する訳ではありません。

 起動し、停止する。

 簡単なテストのはずです……ですが、美月の時のような事もあるかもしれません。

 しかも今回はちゃんと訓練をした兵士である綾乃のテストです。

 美月とは違い問答をする必要もなく、いきなり出撃をする可能性も十分ありました。


「さてと! 起動はシュミレーターと同じだよね」

「そうだ」


 綾乃の言葉に答えるのは伊逹です。

 彼はやはりどこか怖い顔をしていましたが、不思議とその奥に優しさを感じました。

 きっと怖い顔なのは何が起きても対処が出来る様に構えているのでしょう。


 綾乃は手順通りにイービルを起動していきます。

 開かれたコクピットの中に入っている彼女を見つつ美月はすこし不安になりました。

 シュミレーターでは美月が彼女に注意をすればすぐに後ろへと下がってくれました。

 ですが、すぐに前へ出るという所では変わりないのです。

 実際の戦いの中ではシュミレーターの様に撃墜されたらもう一回挑戦という事は出来ません。

 その先に待っているのは死でしょう。


 新谷はただ運が良かっただけなのです。

 これまでに何人も死人が出てきているはずなのですから……。


 綾乃もそれを知っているはずです。

 なのに、前へと出る……そんな彼女が心配で美月は手の平を胸の前へと持ってきて片手を添えるようにしつつ、もう片方の手は拳を握りました。


「メイユエ……怖いの?」


 美月の不安は態度や表情に出ていたのでしょう。

 リンチュンが声をかけてくれました。


「……うん」


 小さな声で交わされる会話を聞いていたのか、それとも聞こえなかったのか、綾乃は美月達の方へと目を向けると片目をつぶりました。

 彼女はその後――。


「んじゃ起動するよ!」


 と言い、イービル……ナルカミは音と振動を立て起動します。


「うわ!? 意外と振動あるね」


 起動での振動で気絶する人が出る事があるというのは聞いていました。

 ですが、美月と同じように綾乃も平気だった様でその揺れが大きい事に驚いていました。

 取りあえずは大丈夫そうです。


「よし、次は停止だ」


 それを確認した新谷は指示を出します。


「このまま空中散歩とか駄目なの?」


 しかし、綾乃はそんな事を口にし――。


「馬鹿言うんじゃねぇ! それは明日だ」


 伊逹に怒られてしまった彼女は頬を膨らませるのでした。

 美月はそんなやり取りを見て少し不安が紛れたのでしょう。

 くすりと笑い、美月を心配していたリンチュンも笑い始めます。

 少し雰囲気が暗かった格納庫に少女達の笑い声が聞こえ……綾乃もまた笑い始めました。


「笑ってないで早く停止だ!」


 ですが、伊逹は少し怒った様に告げ。

 綾乃は慌てて機体を停止させようとします。


「馬鹿野郎! 慌てるんじゃねぇ、何が起きるか分からないんだぞ!! ちゃんと冷静に丁寧に停止しろ!!」

「わ、分かってるよ……」


 不貞腐れた態度で綾乃は言われた通り丁寧に機体を停止させるのでした。

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