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30話 二度目の出撃をする少女

 走り去っていったリンチュンを追う美月と綾乃。

 案の定息を切らし苦しんでいた彼女を怒る綾乃は美月に速くハンガーに行くように告げる。

 美月は彼女に怒られたため、走らずに急ぎ向かったのだが……。

 そこで驚愕の事実を知った。

 もう一人、呼び出された兵士、新谷が乗るのはただの戦闘機だった。

「ぅぅ……」


 美月は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、イービルを動かします。


「慣れないね?」


 聞こえてきたのは新谷の声です。


「なんで……出撃の、練習……」


 出来ないんですか?

 そこまで口にしようと思って美月は口を閉ざしました。

 いくら練習を積んでもあれに慣れそうにありません。

 寧ろ、何度も何度も繰り返されると考えただけで少し嫌になりました。


「いや、実際に出撃練習をしたらコストが、ね? でも、夜空ちゃんが苦手みたいだからその内シミュレーターにも実装されるとの事だ」


 そもそも、イービルに乗って操縦が出来るという事は出撃でかかる衝撃に耐えられるという事です。

 何故ならそれよりも弱いとはいえ衝撃が歩いた時に絶えず起きますし、起動した時にも衝撃があります。

 現在は飛行していますが、それでも美月達悪魔乗りの負担が無くならない訳じゃありません。

 しかし新谷のシミュレーターにも実装されるという言葉を聞き、美月は聞かなければ良かったと後悔し始めました。


「さて、急ごう!」

「……は、はい!」


 新谷は話はそこまでとでもいう様に張りのある声を響かせます。

 美月は彼において行かれないようイービルを飛ばし、目的である場所まで移動をしはじめました。


 天使との戦い、それも今度は訓練を行った上での戦いです。

 以前とは違い少しはまともな戦いが出来るでしょう……。


「守って……守らなきゃ……助けなきゃ」


 美月はそう呪文のように繰り返しながら、飛び……。

 町を破壊するそれを目にしました。


「あ……」


 そこの惨状はまさに地獄と言って良い物でしょう。

 逃げ遅れた人の死体が転がり、悲鳴が上がっています。

 何故、駆けつけたのが美月達だけなのか? その理由は簡単でした。





 日本には美月達が住む施設しかイービルを配備していないのです。

 だからこそ、美月達の住む施設は日本の真ん中、元々東京や神奈川があった首都部に存在するのです。

 ですが、少しでも場所が離れていれば……。


「嘘……間に合わなかった……の……?」


 美月は惨状に呆然としてしまいました。

 ですが、新谷は彼女の方へと向くと叫びます。


「まだ間に合う人が居る!! 被害をこれ以上広げちゃいけない! 夜空ちゃん!! ボーっとしてないで!!」

「――は、はいっ!!」


 彼の声で正気を取り戻した美月は動こうとしました。

 この距離なら銃が有効でしょう、ですがそんなものを撃ったら街がどうなるか分かりません。

 なら魔法か? と言われたらそうでもないのです。

 魔法は確かに強力で天使への有力手段である事は前回の戦いで実証されました。

 ですが――同時に――。


「剣を抜いて、接近を――僕は牽制をする!!」


 美月では魔力が多すぎて被害も広範囲に及ぶと自身でも思っていました。

 だからこそ、美月は新谷の指示を待ったのですが……その指示にさえ迷いを見せました。


「け、剣……」


 剣で戦えばそれだけ被害範囲が狭まりますが、戦っているその場所は最も危険な場所になってしまいます。

 そうすれば他の人は助けられるでしょうが、近くに居る人達は確実に戦いに巻き込まれるでしょう。


「他に方法はない!! 剣で戦いつつ、相手を誘導する! やるよ!!」


 新谷はそう言うと戦闘機の速度を上げ天使へと向かっていきます。

 天使はそれに気が付くと銃を新谷へと向けますが……。

 イービルとは違い小さい戦闘機にあてるのは至難の業です。


「すごい……」


 銃弾を見事にかわしつつ天使を翻弄する新谷を見て美月は素直に感心し……。

 ふと彼の笑顔が浮かびました。

 すると何故でしょう頬が少し熱いのです。


「…………」

「夜空ちゃん! 早く!!」


 しかし、今はその原因を探っている暇はありません。

 新谷に呼ばれた美月はびくりと身体を震わせつつ天使へと視線を向けます。

 住人の避難はまだ済んでいません。

 だから別の場所に誘導しなければ……彼の言う通りです。

 美月は新谷の所へと向かい、新たに飛んできた銃弾へと向け手を伸ばします。


「魔力増幅確認……プロテクションフィールド展開……完了」


 無機質なアナウンスと共に現れた光の膜は銃弾を防ぎます。

 すると天使は銃は無駄だと理解したのでしょう剣を持ち飛び上がりました。

 大きな翼が空を支配し、美月はその威圧感に圧倒されつつも……。


「夜空ちゃんは天使から目を離さず、剣で応戦、引かない事だ!! 良いね!!」


 それは背を向けるなという事でしょう。

 理由は簡単、イービルの弱点は背骨。

 そして、美月の魔法では背中を守る事が出来ません。


「は、はい」


 消え入りそうな声で答えて美月は新谷の指示通りに動きました……。

 天使から目を離さずに……剣を引き抜き接近していくと……突如警報が鳴り響きます。


「――! 美月ちゃん逃げ――」


 それは一瞬でした。

 普段とは違う彼の声に驚いた美月は思わず振り返ります。

 すると突然衝撃が彼女を襲い。


「きゃぁあああ!?」


 機体は地面へと叩きつけられました。

 幸い下に人は居なかったなんてことはありませんでしたが、それでも運良く誰も潰さなかったようです。

 美月は慌ててなにが起きたのかを確認すると……。

 近くには燃える機体が見えました。

 新谷が乗っていたはずの機体です……。


「あ……ああ?」


 思わずそれへと手を伸ばす美月。

 するとまるであざ笑うかのようにそれは爆発し、瞬く間に黒煙を生み出していきました。


「ひっ!?」


 目の前で人が死んだ……そう理解するのは簡単でした。

 そして……もう一つ……彼女を絶望が襲うのです。


「て、天使が……二人……」


 今までずっと一機だけしか襲って来なかった天使達。

 ですが、美月の目の前には今……二機の天使が姿を見せていました。

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