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24話 あだ名をつけられた少女

 リンチュンに施設の中を案内する美月達。

 そんな中、美月は天敵ともいえる看護師に出会ってしまい検診を言い渡されるのだった。

 頼みの綱の綾乃も美月のためと言われてしまえば手が出せず……。

 美月はいずれ来るだろう検診に不安を抱えたまま、リンチュンの案内をこなしたのだった。

 リン・チュンという少女が来た後日。

 司令官は約束通りハンガーへと立ち入ることを許可してくれました。

 それを聞いたリン・チュンは喜び二人に早く行こうとせがみます。


「……焦んないの!」


 綾乃は笑顔でそう言いながら案内を始めました。

 美月も勿論一緒です。

 彼女達は施設の中を進み、ハンガーへと辿り着くと……。


「わぁぁ! これが、日本の……」


 リン・チュンはキョロキョロと辺りを見回しますが首を傾げます。


「ハンガーはあまり変わりない」


 と呟きました。


「まぁ、それはそうでしょ! だってハンガーだし」


 機体を収納し、出撃に備える場所。

 勿論メンテナンスなどもここで行いますが、目立った変化がある訳でもなくリン・チュンはそれが意外だったようです。


「日本人はいつも仕事してるって聞いたよ」

「いや、まぁ……そう言われてるのは知ってるけどさ―」


 昔から変わらない日本。

 そう言われてもおかしくはありません。

 事実このハンガーでは普段なら今も仕事をしているはずです。

 なのに誰も居ない理由はリン・チュンの為に人を払っておいてくれたのでしょう。

 仕事の合間に見て回るというのはお互いに気を遣うものです。


「あの……リン・チュンさん」


 美月は此処に来た目的を言おうとしましたが、それはリン・チュンに遮られました。


「メイユエに……その呼ばれ方、何か寂しい」


 同年代の友達が欲しかった彼女としては林純(リン・チュン)と苗字と名前で呼ばれるのは寂しいと感じたのでしょう。

 そして、美月達は彼女がこれまでに何度か口にしたメイユエと言う言葉の意味をようやく理解しました。


「もしかして、メイユエって美月の事?」

「ミツキ……たしかそう! でも中国じゃメイユエって読むよ!」


 自分の名前を中国ではそう読む、そう教わり美月は感心したかのように口を開きます。

 そして、綾乃は何度も頷きました。


「そっか、仇名を決めてきたんじゃ……ずっとリン・チュンって呼ばれてたんじゃ寂しいね!」


 笑みを浮かべた綾乃はそう言います。

 そして、彼女のプロフィールを思い出しながら……。


「とはいえ、うーん……そうだリンちゃんってのは? リンってそのままでも可愛いじゃん!」


 綾乃の言葉を聞き、大きな瞳を丸くしたリンチュンは数秒固まっていたましたが、すぐに笑みを浮かべ。


「うん! じゃぁアヤノはアヤノちゃん?」


 ところころと笑いながら喜びます。

 今度は綾乃が目を丸めますが、微笑むとうんうんと頷きました。

 そんな様子をどこか寂し気に見つけるのは美月です。


「……美月?」


 何故か不安になった美月は綾乃の服の裾を握ると軽くひっぱりました。

 疑問を感じた綾乃が彼女の名前を呼びます。

 ですが、美月は――。


「ぁ……うん」


 そう答えるだけで綾乃は首を傾げます。

 そんな彼女達のやり取りを一人の男性が見ていました。

 彼の名は新谷。

 美月と共に天使を撃退したと言われている日本の英雄……その1人です。


「……でかい、揺れる」


 彼はそんな事をぼそりと呟きました。

 視線は美月達に釘付けのようですが……ふと美月が何かを感じ振り返ると彼を見て――。


「ひっ!?」


 小さな悲鳴をあげます。

 その理由は――すぐに綾乃も理解しました。


「ちょっと新谷さん……いやマジ、その顔キモイんですけど……」

「へ!?」


 目尻は垂れ下がり、鼻の下を伸ばす彼の表情はまさに変態。

 そう言ってもおかしくはありませんでした。

 忠告された彼は慌てて自分の頬を叩くと――。


「んんっ!!」


 咳ばらいをし、美月の乗る灰色のイービルへと手を向けます。


「あれが美月ちゃんの乗るマナ・イービルだ!! どうだ!!」

「知ってます」


 自慢げに言う彼ですが、その程度の情報は既に持っていたリンチュンはようやく自分のどこを見ていたのかを理解したのでしょう。

 身を守る様に腕を交差させながら軽蔑を含んだ視線を向けて応えます。


「どこの国でも一緒……」


 そう呟いた声は新谷には聞こえなかったのでしょう。

 彼は知っていると言う言葉には反応したものの、特に気にせず次のイービル、自身が「コピス」と名付けたそれへと手を向けました。


「やっぱそうなんだ、いやー視線って刺さるよね! 見られたくないなら短くするなとか、こっちはおしゃれでやってるってのに!!」


 ですが、近くに居た綾乃は新谷からは一旦目を離しリンチュンへと同意すると、うんうんと頷きながらそう口にします。

 そして、視線を新谷へと戻すと半眼で睨みました。

 彼女は美月の手を引っ張ると……。


「一歩でも離れた方が良いよー美月は可愛いんだからさ、変な事されちゃうって」

「ぇ……ぁぅ?」


 先程の新谷の表情には驚いたものの、変な事と言うのはぴんと来なかったのでしょう……美月は戸惑いながらも綾乃の近くへと寄ります。


「いい? 美月……男は何時だって女の子の胸とかを見てるんだ。特にさっきの顔絶対にエッチなこと考えてたからねっ!」

「……そ、そうなの?」


 こっそりと話す美月達。

 美月は綾乃の言葉を聞くと警戒するように新谷の方へと目を向けました。

 ですが、そんな事は無いと信じたい美月は困惑するだけでした。


「なぁ、何で僕は変な目で見られてるの?」


 説明の途中、新谷はようやく視線に気が付き、そう呟きましたが、綾乃とリン・チュンは答えず黙ったまま相変わらず軽蔑を含んだ瞳で新谷を睨みます。

 美月はその間でおろおろとしているのでした。

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