表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/241

23話 恐怖を感じる少女

 自己紹介を済ませた美月達。

 彼女達はその足で司令官の所へと向かった。

 彼から言い渡されたのはリンチュンの案内。

 早速美月達は施設の中を案内するのだった。

 リン・チュンを案内する美月達。

 ですが、施設の中と言っても案内する場所は限られています。

 食堂、運動場、講習室。

 シャワー室……生活に困らないよう一つ一つを歩いて回った彼女達でしたが……。


「それで次は……」

「お買い……物……」


 美月は緊張からか、綾乃の服を摘まみながら歩きつつ告げます。

 すると綾乃はああっという顔を浮かべ。


「そうだったコンビニ!」


 彼女は笑みを浮かべて思い出したかのようにお店へと足を向けます。

 すると……美月達は気が付きました。

 目の前の曲がり角から誰かが来るのに……。

 その人物は美月を視界に入れると蕩けた様な表情を浮かべましたが、綾乃へと目を向けると途端に冷めた様な表情へと変えます。


「またですか……」

「またもなにも今仕事中なんですけどー?」


 自分の事だと理解している綾乃は呆れ気味にそう言います。

 すると仕事と言う言葉に反応した吉沢信乃は目の色を変えてリン・チュンの方へと視線を向けます。


「はじめまして!」


 リン・チュンは無邪気に挨拶をしますが、信乃はその表情を見て怪しい顔にかわります。

 ですが握手をしようと手を伸ばした所で固まり。


「――?」


 リン・チュンは首を傾げて固まりました。

 そう、信乃が見ているのは彼女の大きく育った胸。

 まるで油の切れた機械のように首を動かした彼女は綾乃の方へと目を向けます。


「何?」

「一部だけなら貴方の方が好みですね」


 何を言っているのか分からないリン・チュンは首を傾げたままですが、綾乃はその理由を知ったのでしょう。


「少なくともアンタよりはあると思うけど!?」


 いつもの口調はどこへやら……ダンっと音を立て片足を踏み、やや乱暴になった声に美月は思わずびくりとしてしまい身を縮ませます。

 すると吉沢はニヤリと笑い。


「あら、姫川さんは怖いですね、美月ちゃんこちらへいらっしゃい」

「ひっ!?」


 手を伸ばされた事でつい先日の恐怖がよぎった彼女は慌てて隠れるように綾乃の影へと逃げます。

 そんなやり取りを見ていたリンチュンは悲し気な顔を浮かべました。

 そして彼女は差し伸ばした自身の手を見つめます。


「あの……」


 と遠慮がちに口にしました。

 そこでようやく吉沢は気が付いたのでしょう……。


「あら、申し訳ございません」


 笑みを張り付かせ手を握り、挨拶をします。

 ですが、その顔は決して本当の笑顔と言えるものではなく……。


「では仕事がありますので」


 あっさりと去って行くのでした。

 良かった、行ってくれたと美月は安堵し息をつきます。

 すると――。


「そうでした」

「「きゃぁぁああああ!?」」


 突然戻って来た信乃は美月の目の前へと迫っており、予想していなかった綾乃もまた驚いています。

 二人して悲鳴を上げると信乃は――。


「あら、可愛らしい……それと汚らしいのは要らないです」

「う、ううううウルサイ!! っていうか、そうやって突然来るのやめてって言ったでしょ!?」


 珍しくうろたえながら叫ぶ綾乃を見て大きく溜息をつく信乃。


「昔のままでしたら、美味しい場面だったと言うのに……」


 彼女はそう言い、再び溜息をつくと。


「後でまた検診がありますので、よろしくお願いいたしますね」


 怪しい笑みで怪しく光る瞳を美月へと向ける信乃。

 そんな彼女を見て美月は涙目でいやいやをします。

 ですが、そんな行動も信乃にとっては……。


「ああ、あああ……可愛い」


 効果はある意味抜群でした……。

 彼女は満足そうに微笑むとやっとその場から去って行き……。


「あの人、なに?」


 リン・チュンは2人に尋ねます。

 ですが美月は涙目で呆然とし、綾乃はがっくりと項垂れ……誰も答えてはくれませんでした。


「中国人、嫌い?」


 そして、勘違いをしたのでしょう、再び自分の手を見つめた彼女は残念そうに呟きました。

 ですが、それに対しては綾乃が慌てたように告げます。


「違う、変態だけどそんな事言うような人じゃないし、っていうか可愛くて髪が黒かったら大抵の子は被害に遭うんだよね……」


 被害と言う言葉を聞き意味が分からなくなったのでしょう。

 リン・チュンはまた可愛らしく小首を傾げます。


「でも、まぁあの人にも敵はいる訳で……天使よりも強敵が居ると言うか現れたって言った方が良いかな?」


 綾乃ははぐらかしながらそう言い、リン・チュンの胸へと目を向けました。

 そこにあるのは彼女よりも大きなもの。


「いや、うん……私もちょっとうらやましいかも」


 なんて小さな呟きは誰にも聞こえなかったようです。


「ぅぅ……検診、怖いよ……」


 それどころか美月は案内よりものちの検診の方が気になってしまいました。

 ですが、逃げようのない未来です。

 彼女はその場に丸まるようにしゃがみ込み……。


「み、美月!?」


 綾乃はそんな彼女を気遣う様に座り込みました。


「メイユエ……お腹痛い?」


 リン・チュンも心配してくれて美月は申し訳なく思ったのでしょう。


「だ、大丈夫、です……お腹は」


 と小さな声で答えるのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ