41話 戦う戦乙女
香奈たちは天使たちと戦うために空を駆けます。
「美月さん!」
どうやらリーゼやリンチュン達も駆けつけてくれたようです。
その事にほっとしつつ香奈は――。
「皆、行こう!」
と口にしました。
まるで物語の主人公のようだ。
そんな事を考えますがすぐに頭を振ります。
これは現実でそんな事を考えている暇はないのです。
だからこそ――命を賭けるこの戦いに彼女たちが居ることに安堵を覚えました。
「……レーダー正面に真っ直ぐだよ、リーゼちゃん! 迷わないようにアタシたちについてきて!!」
彼女に対しそう忠告をするのは綾乃です。
「わ、分かっています!」
恥ずかしそうにそう口にしたリーゼの顔を想像しつつ、仲間達には笑い声が生まれます。
「中が良いのはいい事だが、油断をするな!!」
今度はクラリッサの声も聞こえました。
彼女もまた駆けつけてくれたのでしょう。
香奈たちは頷き――レーダーの示す場所へと向かいます。
「あそこだ!!」
そこへとつくほんの少し前に香奈は立ち止まりました。
まだ敵の数が完全に把握できていないからです。
「索敵します!」
いくら制度の上がったレーダーだと言っても移動中は精度が落ちるのです。
だからこそ一度立ち止まり正確に測る必要がありました。
「敵の数……10……動きはないです」
攻めてきたわけじゃ無いのだろうか? 香奈は疑問に思いつつ首を傾げるのでした。
襲撃のアナウンスから彼らが移動してきたのは分かっています。
だというのになぜ動きが無いのだろうか?
しかし……。
「なんだ? 奴ら見張りを立てて何をやってる?」
クラリッサはそう言いながら物陰から様子を窺っています。
「あの、あそこ……何かありませんか?」
美月は同じように物陰から見てたので気が付いたようです。
そう、彼らが見張りを立てているその先……。
そこには不思議な機械ががあったのです。
彼らは何かの作業をしており……その機械を設置しているようです。
「なにしてるの?」
綾乃も食い入るようにそれを見つめています。
天使たちは美月たちに気が付かず、作業を進めていきます。
そして天使たちはその機械を設置し終わるとそれはどうやら扉のように見えるのです。
「あれは……いったい」
リーゼは困惑しましたが……目の前で起きたことにさらに驚きました。
扉は光を帯び……天使たちはその中へと入っていきます。
最後の一機が中に入ったかと思うと扉は光を失い、解けるように消えていきました。
「まさか、ゲートとでも言うの?」
「そのまさかだろうな……夜空、レーダーの様子は?」
クラリッサに言われ美月は慌ててレーダーへと目を向けます。
そこには敵を表す光点は無くなっていました。
「ゼロ……安全です」
「あそこまで行くぞ」
美月の言葉に返事を返すまでもないと言った風にクラリッサは仲間達に合図を送りました。
「了解……」
そのために美月に確認させた。
それを理解したのでしょう綾乃は呆れたような声で答えます。
彼女たちに続き、ゲートがあった場所まで来た美月たちは辺りを捜索しますが……。
「何もないよ……あんなの使われたら勝ち目もないよ……」
怯え切ったリンチュンの声が聞こえてきました。
「安心しろ……見つけたぞ……恐らくこの兵器はまだ開発途中だ……」
そう言うのはクラリッサです。
彼女の機体は何かを掴み上げ、それを見せてきました。
「壊れてる? でも、なんで開発途中なんてわかるんですか?」
美月は彼女に問うと――。
「もし、もうすでに開発されているならなぜ今まで使って来なかった? 奴らはいちいち移動してこちらへと攻めて来ただろう?」
「……確かにそうですね、そう考えると新たに開発したと考えたほうが良いかもしれません、それは壊れてるみたいですし解析いたしましょう」
クラリッサの言葉に頷いたリーゼは壊れた道具を受け取りました。
「頼む……もしかしたら、起死回生の一手になるかもしれないからな」
「…………」
美月はそれを見つつ、もしかしたら敵がそれを使ってくるのでは? と思わず震えるのでした。




