31話 捕らわれの少女と戦乙女
彼女は閉じた扉の横を調べ始めました。
いえ、横だけではありませんでした地面もじっと見つめたり触ったりしています。
一体何をしているのでしょうか?
美月と綾乃は首を傾げる事しかできませんでしたが、それが何なのかすぐに分かりました。
クラリッサが無言で地面を叩き始めると蓋のようなものが出てきたのです。
そこには見たこともない端子を繋ぐ穴がありましたが……。
当然そんなものはありません。
これでどうするつもりなのでしょう?
二人はさらに疑問を浮かべました。
すると彼女はスタンガンを取り出し……その端子部分へと当てます。
音と共にスタンガンから電撃が放たれたと思うと扉は勝手に開きました。
「あ、あれ?」
すると先ほどとは違う空間に繋がっています。
一体どういうことなのか?
まったく意味が分かりませんでした。
「奴らは電気をメモリー化し、鍵として使ってる。こっちはスタンガンなどで簡単に開くわけだ」
「壊れたらどうするの!?」
どう見ても精密機械です。
綾乃の突っ込みは正しい。
美月はそう思い何度も首を縦に振りました。
すると――。
「電気に関しても奴らの方が上だ……基盤やら他の物も帯電性に優れている。だがこの部分だけは鍵の構造上電気を通しやすく、こういった道具でも誤作動をするだけだ……。人類がこんな道具を持っているとは想像していないのか……それとも知っていてわざとそうなのかは分からないがな……」
そう言われてしまえば何も言えません。
美月たちは驚きましたが……。
「ぼーっとしてるな、行くぞ……」
クラリッサは扉を潜り抜けてしまい、二人は慌てて追いかけることになりました。
中は思ったより広い通路。
だというのに誰も居ません。
見張りが一人もいないのです……。
こつんこつんという3人が歩く音だけが聞こえてきました。
本当にここが天使たちのアジトなのでしょうか?
「あの……」
「おそらくは廃棄されている場所だな」
彼女はそう答えると辺りを見回しました。
つられて美月もぐるりと見まわしますが……。
確かに埃が積もっていたりととても使われているようには見えません。
「天使ってさ、バカなの?」
綾乃は突然そんな事を言い始め、クラリッサは足を止めます。
「いや、奴らは馬鹿ではない……おそらくこの施設には何も残っていないだろう」
「じゃ、じゃぁなんでレンちゃんがここに?」
天使たちの情報を得るためアジトに向かわされたのです。
そんな彼女は無駄足だったというわけです。
いや、向かわせた時点ではここにまだ居たかもしれない。
そう思ったもののそれはないかとすぐに考えを改めました。
何故なら埃が積もり過ぎています……数日でこうはならないほどに……。
なら、考えられるのはクラリッサの言った通り廃棄となった場所なのでしょう。
しかし、そうとなればなおさらフローレンスがここに来るように言われた理由が分かりませんでした。
「どうして……」
戸惑う二人に対し、一人表情を引き締めるクラリッサは奥へと進みます。
すると……重々しい扉があり、先ほどと同様スタンガンで鍵を開けると……。
「見るな」
そう口にしました。
二人はそう言われて大人しくするわけがありません。
何があったのか? 部屋の中へと目を向けると――。
「――っ!?」
綾乃は口元を抑え目を見開き、美月はいても経っても居られず部屋へと足を踏み入れます。
「レンちゃん!! レンちゃん!?」
そこには鎖に繋がれ、首輪をつけられ、体中裂傷を起こし血を流す少女の姿が見えたのです。
衣服は何処にいったのでしょうか?
そう、彼女は裸のまま放置をされていました。
「どういうことなの!? 天使たちが!!」
綾乃は叫びます。
ですが、それに対しクラリッサは首を横に振るのでした……。




