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28話 準備をする戦乙女

「用意が良いな」

「ああ……」


 伊達はクラリッサの言葉に複雑そうな表情を浮かべながら頷きました。

 それにどんな意味があるのでしょうか?

 美月たちには分からない事でした。

 ですが……。


「頼む嬢ちゃん、あいつを助けてやってくれ」


 その目は真剣そのものでした。

 フローレンスとの間に何かあったのでしょうか?

 確かに彼と一緒に居る姿は何度か見ていました。

 ですがここまでお願いされるとは思わなかったのです。


「……あ、あのさ何かあったの?」


 流石に彼の様子を見て茶かす気にはならなかったのでしょう。

 綾乃は心配そうに尋ねます。

 すると伊達は……。


「似てるんだよ」

「……似てる?」


 伊達はゆっくりとため息をつき……。


「娘にな」


 寂しそうな表情を浮かべました。

 思わず娘が居たのか! と確認したくなるほどの衝撃でしたが、美月はその言葉を何とか飲み込みます。

 すると横で綾乃もまた……。


「ちょ、ちょっと待ってなんか前アタシが似てるなんて言われてなかった?」


 黙っていようと思ったのでしょうか?

 少し迷うそぶりを見せていましたが、すぐに首を横に振るとそう言いました。


「ああ、お前も似てる……だが、娘は二人いたからな一人は死んだ……」


 一人は……という事はもう一人は生きているという事でしょうか?

 そんな疑問を感じていると……。


「あ、いや二人とも死んだと言ったほうが良いか」


 伊達はつらそうに言いなおしました。

 一体どういうことなのでしょうか?

 疑問はありました。

 ですが、それ以上に……。


「頼む、お前さんたちにしか頼めないんだ」

「大丈夫ですよ、私達に任せてください」


 真剣に頼み込む彼に対し美月はそう答えました。

 自分でも驚くほどでしたが、それでも伊達の望みをかなえたいと思ったのです。

 これまでずっと支えになってくれていたのですから当然と言えば当然ですが……。


「気をつけろよ、お前さんたちが……」

「ふん、だからこそ生き残る可能性が最も高いやつらを連れて行くんだろうが」


 クラリッサは何を当然のことをとでも言うかのようでしたが、言葉はどこか柔らかい感じがしました。

 彼女はまるで照れ隠しのようにさっとタブレットを操作し……。

 顎に手を当てます。

 しかし、困った表情ではありませんでした。


「助かった」

「いや、まだ何もしてねぇだろう、早く連れて帰ってこい」


 例を告げる彼女に対し伊達は焦ったように口にしました。

 彼にとって娘同然なのでしょう。

 彼女が何を考えているかまでは分かりませんが……。

 それでもかまわない。

 そう思っているのでしょう。

 クラリッサは頷き……。


「馬鹿犬、夜空、お前たちはハンガー内にある車の準備を進めてくれるか?」

「え? あ……はい」


 美月は頷き綾乃と共に歩き始めます。

 フローレンスは一体どこに行ったのか? それは気になるところでしたが、すぐに分かるはず……そう思ったからこそ彼女の言葉を聞き入れたのです。

 そんな彼女たちが去った後……。

 クラリッサは伊達に向かいなおします。


「二人とも死んだ……それでいいのか?」

「……仕方がねぇだろ……」


 その言葉は何を意味しているのでしょうか?

 しかし、クラリッサは伊達の先ほどの娘は死んだという事に対して話していました。


「取り返すなら今しかないぞ?」

「……だから何だって言うんだ? 今更父親面しろってか? 俺はあいつがちゃんと生きてくれていればいい」


 彼がそう言うと彼女は深いため息をつきます。

 何か言いたげな表情でしたが……それも無駄だと考えたのでしょう。


「では行って来よう」


 それだけを残し美月たちが去って行った方へと向かいました。

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