27話 捜索したい戦乙女
美月たちはフローレンスを探すために支部のデータベースへとアクセスをします。
流石に機密事項として隠す必要はないと判断していたのでしょう。
彼女がどこに行ったのかはわかりました。
「この前新型が出た場所?」
美月はデータを見つめながら首を傾げました。
そこには特別な何かはなかったはずです。
ですが……。
「おそらく堕天使側のデータを洗い、奴らの基地を調べさせるところから始めたんだろう」
「ちょっと待ってよ、それってかなり危険じゃ?」
クラリッサの言葉に綾乃はそう口にします。
美月もまたそう思いました。
すでに終わっている戦いの現場に赴くというのは勿論です。
何故なら回収しに来るかもしれないからです。
ですがそれだけではなく……。
天使の基地になんて向かって無事で済むはずがありません。
奴らは突然美月たち人を襲ってきたのです。
いえ、もっと前から地球を襲っていたのです。
フローレンスの話が真実だとすれば……。
彼女たちの祖先がまだ地上に居た頃から奴らはこの星を狙っていたことになります。
そんな執念深く危険な天使のいるところに向かう。
それは自殺行為に等しい事でしょう。
だというのにそれを司が指示したという事でしょうか?
「なんでお父さんは……」
「奴は死神だ……」
その言葉に対し綾乃は頬を膨らませます。
ですが、美月はクラリッサに注意などはできませんでした。
死神……。
その言葉がどこか正しいとさえ思えたのです。
何故なら美月もまた戦う事を強いられました。
正しくは戦えと強制はされていません。
ですが結果としてただの高校生……と呼ぶには特殊ですが、当時はまだ体の弱かった彼女は戦場に赴くことになっていました。
そのきっかけはイービルに乗るように言われたからです。
今となっては大事と感じる機体ですが……。
当時は戦う事に恐怖がありました。
それでも戦う事から逃げなかったのは……力を得たという事だけでありません。
彼女の根元にあった『誰かを守りたい』という気持ちがあったからかもしれません。
しかし、今回……フローレンスは違います。
何を考え、何故その無茶な事をしたのか美月には想像が出来ませんでした。
「と、とにかく早く、フローレンスを探さないと!」
綾乃はそう言うと焦り始めました。
しかし、美月たちには彼女がどこに行ったのかの情報がありません。
ですが……。
「ねぇ、誰か知らないかな?」
「え……誰かって?」
綾乃は美月の言葉に首を傾げました。
すると、美月はクラリッサの方へと目を向け……。
「どうでしょうか?」
「……おそらく、伊達の奴なら知ってるかもしれんな」
彼女はそう言うと歩き始め、美月たちは後をついて行きます……。
そして、ハンガーへとたどり着くと伊達の姿を探します。
彼はすぐに見つけることができました。
そして彼の元へと駆け付けると……。
「どうした?」
彼は美月たちの姿を確認するとその怖い顔をにっこりと変えました。
「実は……」
そして、先ほどのフローレンスの事を尋ねるとため息をつき……。
「あいつにばれねぇように隠すのは大変だったんだ……」
と口にし……一つのタブレットを渡してくれたのでした。




