19話 新しい日常を送る少女
ジャンヌダルクのニュースは世界中に放送された。
その内の一国で少女に対し男性は日本のマナ・イービルの技術が欲しいと告げた。
少女はこれを承諾し、部屋を後にすると……人を虜にする笑みを浮かべて自室へと戻った。
一方美月達はイービルや天使に対しての勉強をしていた。
そこで知らされたのは天使にはなかったはずの背骨があるとの事……。
一体天使とは何なのだろうか?
「あ~~~終わったぁ……」
椅子の上で足を投げ出し、盛大な伸びをする姫川綾乃。
美月はそんな彼女を見て慌てます。
何故なら彼女は丈の短いスカートをはいており、周りにはチラチラとみている男性も居ました。
「あ、ああ……あの、姫川さん……すか、すかーと……」
小さな声でしたが、綾乃は気が付き……歯をむき出しにし笑います。
「ああ、大丈夫下履いてるし」
そういう問題なのでしょうか? 美月は疑問に思いつつもわたわたとします。
するとそれがおかしかったのか綾乃は笑い。
「?」
美月は困惑しながら首を傾げます。
「とにかくだいじょーぶだって! それよりも、夜空……あのさ」
「な、なに?」
綾乃が何かを話そうとし、美月は何だろうと考えます。
彼女は何処か改まっている雰囲気をかもしだし、赤く顔を染めもじもじとしています。
「あの、さ……夜空の事――」
『連絡です。夜空美月、姫川綾乃の両名は司令官の部屋へと――姫川司令官がお呼びです』
彼女が何かを言いかけた時、タイミングを合わせたかのような放送。
美月はびっくりし、スピーカーの方へと視線を向けてしまいます。
「もう、お父さんタイミング悪すぎでしょ……」
そんな呟きが聞こえ美月が綾乃の方へと目を向けると彼女はがっくりと項垂れています。
一体なにがあったのでしょう? 気になった美月は――。
「あ、あの……姫川さん? さっき――」
「行こうかー」
訪ねようとしましたが、彼女は慌てたように立ち上がり、歩き始めてしまいます。
「あ、ま、待って――」
1人先を行く彼女を慌てて追いかける美月。
彼女はこの数分のやり取りで何回目か分からないですが、また首を傾げました。
姫川さん、どうしたんだろう?
彼女の後ろ姿を見つめるとどこか悲しそうにも見えます。
一体なにがあり、何を美月へと話そうとしたのでしょう……。
私の事って言ってたけど……。
先程の言葉を思い出し、美月は少し不安に思いました。
姫川が優しいのは知っています。
ですが、美月は彼女が何故自分にも優しくしてくれたのか知りませんでした……。
過去に助けた人が彼女の父だったなんて知ったのはついこの間の事です。
それを知った時は驚いたのですが、同時に助けられなかった人もいる事を再確認させられました。
もしかして、やっぱりなんか思われてたのかな?
兄をどうして助けてくれなかったの? そう思われていてもおかしくはないのです。
いくら、間に合わなかったとしても……当時の美月達は幼かったのですから、感情そのままに口にしてもおかしくはありません。
ましてやその時に感じた物はきっと今も残っているはずです。
仕方がないと割り切るにはまだまだ時間は必要でしょう。
「あ、あの……」
ここに来て姫川は殆ど美月と一緒に居てくれました。
だからこそ、不安になってしまうのです……心のどこかで嫌っているのでは? と……そして、美月は彼女に居なくなってほしくないとも思っていました。
「あ、ああ……え、ええっと、とにかく話が終わってからね?」
いつもと違う、うわずった声と口調で顔を赤くした彼女は頬を書きながら扉を開けました。
部屋の中に居るのは姫川綾乃の父であり、この施設の管理者です。
彼は2人が来たのを確認すると秘書らしき人を下がらせます。
彼女は何回か見かけた人ですが、金色の髪が美しい女性で美月は思わず憧れを抱きそうになりつつも自分には似合わないなっと思いました。
「急に呼び出してすまない」
彼にそう声をかけられた美月はびくりとしつつ、首を横に振ります。
「あ、あ……いえ」
やはり小さな声です。
ですが、それを咎める事も無く、微笑んだ綾乃の父に対し綾乃は……。
「それで父さん、なんのよう?」
一応は司令官……に対し、いつも通りの口調で声をかける綾乃、流石は家族です。
ですが……。
「綾乃、こういった時は礼儀が必要だ、例え家族でもな……外に出た時それでは困るぞ」
司令官は怒鳴る訳ではありませんが、静かにしかりつけます。
すると綾乃は申し訳なさそうな顔になりました。
「い、以後気を付けます」
丁寧にそう返すと再び父親の方へと目を向けた彼女は改めて問いました。
「それで、なんの用ですか?」
言い直された言葉に若干眉をひそめつつも、取りあえずはそれで良いと思ったのでしょう司令官は頷きます。
「ああ、君達……両名に客人の相手を頼みたい」
「きゃ……客人?」
美月はその言葉を繰り返します。
言っている意味が分からなかったのです。
「そうだ、君と同じマナ・イービルに乗る悪魔使いらしい……先程届いた情報によると歳も同じぐらいだ」
「それって女の子って事ですか?」
綾乃が警戒するように尋ねます。
「ああ、そうだ……二人にはこの施設での生活を強制しているような物だ……たまには同年代の子と会話をしたいだろう?」
それは彼なりの気遣いだったのでしょう、笑みを浮かべた司令官はそう告げた後。
「頼めるかい?」
改めて、二人に聞いてきました。




