22話 天使の秘密を知る戦乙女
美月たちが勝利を収めてから数日後のこと。
彼女たちは会議室へと呼ばれていました。
足を運ぶとそこには司令官である司の姿があります。
彼の後ろには大きなモニター。
そして、呼ばれていたのは美月たちだけではなく……。
整備班である伊達。
医師である吉沢もそこに来ていました。
「来たか、座ってくれ」
司にそう促され美月たちは席へと座った。
以前ここに来た時は良い覚えがなかった。
しかし、今回はきっと違う。
そう思いつつ美月は司へと目を向ける。
すると彼は……。
「さて、全員集まったようだな」
「待て待て、フローレンスの嬢ちゃんが来てないぞ」
「それにリサも来てません」
そう言ったのは伊達と吉沢の二人です。
美月もフローレンスは分かりました。
ですが、リサとはだれだろう?
そう考え、その答えはすぐにわかりました。
「まったくだ呼んでおいて勝手に始めるつもりか?」
「話しているうちに来ると思ってね、それに最初は重要な話をするつもりはなかった」
どうだか……。
そうつぶやいては言ってきたのはクラリッサです。
そっか、クラリッサだからリサさん……なんか可愛いあだ名。
予想外のあだ名に美月は思わず微笑みそうになるが、なんとかそれをこらえます。
もし、ここで笑ったりしたら後で怒られることは分かっていました。
ですが……。
「リ、リサちゃん!? か、可愛いあだ名、です……ね!」
たった一人綾乃はそう笑い始め。
クラリッサは彼女を睨み……場の空気は一気に冷めていきます。
ですが一度笑ってしまったらそうそう簡単に収まりません。
綾乃は笑い続け……。
「何がおかしい馬鹿犬……」
「ひゃ!? え……!? あの!?」
自分が犯した失態に気が付いた彼女はようやく笑うのをやめるとその顔色を見る見るうちに青くしていきます。
そんな時再び扉が開き、息を切らした少女が部屋の中へと入ってきました。
彼女はフローレンス。
美月が名前を付けた少女です。
彼女は伊達を見つけると表情を明るくし、彼の横へとちょこんと座ります。
「……うわぁ」
「おい綾乃、今のうわぁ、はなんだうわぁ……は!」
再び地雷を踏んでしまった彼女は慌てて前へと向き直ります。
それを見た伊達は呆れたようにため息をつきました。
「伊達さん、懐かれてますね?」
「そうみたいだね」
リーゼにこっそりと耳打ちされた美月は同じように彼女へと返す。
いったい何があったのだろう? 気にしながらも司の方へと目を向けると……彼はようやくしゃべりだすのでした。
「前回の戦いはご苦労だったね」
「……当たり前だ」
彼のねぎらいの言葉にクラリッサはため息交じりの声で答えます。
すると彼は表情を崩すことなく、パネルを操作しいくつかの写真を表示させます。
それはどうやら天使の写真のようでした。
「これは?」
「ああ……これは天使の写真だ」
コクピットなどが移されたそれをじっと見つめる美月には何を言いたいのか全く分かりませんでした。
いえ、その場にいる全員が何を言いたいのか分からないのです。
「なんだってんだ? 別におかしいところはないだろう」
「ああ、その通りだ」
伊達の言葉に司は頷きます。
ですが……。
「別におかしいことはない、流石はイービルの元になった兵器と言ったところだろう」
イービルはフローレンス達のお陰で手に入った技術をもとに作られた人型兵器。
もともとは天使だったと言ってもいいでしょう。
ですが、なぜその写真をあえて見せるのか?
それが美月たちには疑問なのです。
「……まって」
ですが、その疑問に綾乃は気が付きました。
「これ天使だよね?」
「いや、だから見せてんだろうが」
確認される事に伊達は呆れてしまいました。
ですが、美月は何か意味があると思いもう一度機体の写真を見ます。
何の変哲もないコクピットを見て美月はようやく綾乃が言いたいことに気が付きました。
「コントロールオーブ!!」
そう、美月たちが魔法を使う際に使う……いえ、それだけではなく操縦にも使う装置がないのです。
「なに? た、確かに……こいつはどういうことだ」
「そう、奴らの機体にはコントロールオーブがなかった……」
それは普通のイービルで魔法を使っているのと同じという事です。
ですが、それはどう考えても不可能なことでした。
何故ならコントロールオーブは……。
「おかしいだろ!! なんでない!! あれは奴らの技術だろうが!!」
そう、伊達が叫んだように魔法を使う技術は天使達からもたらされたものです。
すると司は首を横に振り……。
「どういうことか分からない。だが、他の機体も同じだった……挙句、性能はイービルよりも下のようにさえ思えた」
信じられない言葉を告げてきたのです。
美月たちが力を合わせて倒せた天使……。
それが実は美月たちの乗る機体より劣るというのだから信じられません……。
「しかし、これはおかしいことだ……だから君たちに調べてほしいんだ」
そして司は、そう……美月たちに頼んできたのでした。




