18話 戦場を駆ける戦乙女
椅子に座り座学を受ける美月たち。
そんな時、警報がなり始めます。
天使の襲撃……それに反応した悪魔乗り達は立ち上がり……。
「良いか? 貴様ら……死ぬことは許さん」
「何を偉そうに……リーダーでも何でもないのにさ」
綾乃は呆れつつも微笑みながらそう言います。
するとクラリッサはふっと笑い。
「そういえば言い忘れていた。今後この隊は私の管轄だ」
「つまり、あんたが隊長?」
リンチュンの言葉にコクリと頷くクラリッサ。
すると綾乃の「嘘!?」という声が聞こえました。
同時にリーゼロッテは納得したかのように頷きます。
美月も不満と言えば不満でしたが、当然と言えば当然だと思います。
何故なら彼女はこの中で一番天使と戦ってきたでしょう。
尚且つ、年齢も上で冷静な判断が出来ます。
「リーダーだったらメイユエが良い……」
「わ、私は無理だよ……」
ひきつった笑みを浮かべながら美月はそう言います。
「ではいくぞ!」
クラリッサはもうこれ以上雑談を続ける理由はない。
そう言うかのように部屋を後にします。
美月たちはそれを追いかけハンガーへと向かいました。
急いで向かったはずの底では慌ただしくスタッフたちが駆け回っています。
その中の一人である伊達は――。
「お前ら遅かったじゃねぇか!!」
若干苛立ったような声を出していました。
「ご、ごめんなさ――」
思わず謝ってしまう美月でしたが……。
「良いから早く乗れ!! あの新型が来てやがる!!」
その言葉に悪魔乗り達はごくりと喉を鳴らします。
そう簡単に勝てない相手……今までの天使だって十分脅威だというのに戦わなければならないのです。
しかし、逃げるわけにはいきません。
彼女たちはたがいに目を合わせるとそれぞれの機体へと乗り込みます。
「帰って来いよ」
伊達の言葉に頷いて答えた美月は戦場へと飛び出すのでした。
レーダーを見ると敵を表す点の表示があります。
数は――。
「敵5体!!」
「意外と多いな……」
舌打ちをした後にそうつぶやいたクラリッサ。
彼女はすぐに後ろへと振り返ると……。
「囲まれないように動け!! 奴らもこっちの戦力を削りたいはずだ……馬鹿犬! 小娘! 二人は数を減らせ、雑魚からつぶしていくんだ! 良いな?」
「「はい」」
二人はクラリッサの言葉に頷き、イービルを動かします。
点はまだ遠いですが、相手も接近してきています。
どんどんとその距離は詰まっていきました。
「敵は全部新型! 美月!! あの角突き以外を狙うよ」
「うん!」
「じゃぁ……まずはあいつだ!!」
綾乃は一機の新型へと狙いを澄ましを捕らえ加速し、美月はそれを追うように加速します。
そして、そのまま銃を構え――。
二人は新型へと向け発砲しました。
当然天使は銃を防ごうと剣を盾のように構えます。
ですが……。
確かに魔法を使える新たな天使なら魔法弾を簡単に防げてしまうでしょう。
事実、防げました。
しかし……。
「甘いね……」
美月は綾乃がにやりと笑ったようなように思いました。
そう、魔法の後ろには実弾が隠れていたのです。
超大型スナイパーから放たれたそれは見事に剣にめり込み……ヒビを作っていきます。
「綾乃ちゃん狙撃に注意して! あの剣を――!!」
そして、美月はそう言いながら一機の天使へと向かっていきます。
当然他の天使達は美月たちに気が付き接敵しようと動いていました。
ですが、先に動いていた分ほんの少しではありましたが、美月たちの方が速かったのです。
綾乃の鉄の塊と言ってもいいだろう剣は見事に天使の剣を砕きました。
そして……。
天使は綾乃へと手を向け魔法を放とうとしてきたのです。
武器を奪われれば魔法しかない。
それは二人ともわかっていることです。
だからこそ……。
「『テンペスト展開!』」
美月はそれを予測し、突風で綾乃の機体を動かします。
勿論綾乃が抵抗するようならうまくいかなかったでしょう。
しかし、綾乃はその風を利用し、動いてくれたのです。
そのおかげもあり、すんでのところで魔法を交わし……。
今度は美月へと攻撃の対象を移した天使の背へと狙いを澄ました彼女は――。
「美月!! はさむよ!!」
「わかった――!! 『プロテクションフィールド、展開』」
自身の前に盾を作り出した美月はそのまま天使へと向かって加速しました。
そう、最固の魔法の盾と鉄の塊。
それで天使を見事に挟むようにするのでした……。
嫌な音を立てて動かなくなった天使へと目を向けることもなく美月たちは次の天使へと狙いをつけると再び飛び立ちます。
もう、彼女たちを縛るものなどなかったのです。
空は天使のものではなく人のもの……それを示す戦いは……始まりました。




