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17話 新たな力を得た戦乙女

 それからも訓練は続きます。

 イービルが強化されてから積み込まれたマナタンク。

 それは当然ナルカミにも積まれていました。


「そ、それで……? 魔法はどうやって使うの?」


 クラリッサへとそう聞くのは勿論、綾乃です。

 彼女は初めて魔法が使えるのではないか? と少しワクワクしている様子でした。

 ですが――。


「あ、綾乃ちゃん?」

「なに?」


 美月が名前を呼ぶと美月が教えてくれるの? とでも言いそうな笑顔が向けられます。

 当然美月はその笑顔を見ると言いにくくなってしまうのですが……。


「魔法が使えるわけじゃ無いぞ」

「へ?」


 クラリッサはあっさりと答えを言ってしまいました。


「あくまで私のプロテクションヴェールと似たようなフィールドを作る程度」


 リンチュンも顔をひきつらせながらそう言い。

 そして……その隣に居たリーゼロッテは――。


「あとは加速時などに消費されるみたいですね……しかもこれ、使うわけじゃ無くて勝手にできるみたいです……」


 そう説明をされると綾乃はがっくりとうなだれ――。


「魔法は魔法使いにしか使えない、だからマナイービルじゃないフールには使えない。バカ?」

「ああ、こいつは馬鹿犬だ」


 フローレンスの評価に対し、頷き答えたのはクラリッサです。

 すると美月はクラリッサを睨むのですが、彼女は何も言わずに睨み返してきます。


「ぅぅ……」


 そんなことをしているとうなだれた綾乃からうめき声が聞こえました。

 やはり、魔法を使いたいと思っていたのでしょう。

 ですが、それは無理な話。

 まして彼女は魔法使いになれない非適合者です。

 この機会を逃せばもう二度と魔法は使えないのです。


 といってもその機会すらなかったのですが……。


「みつきぃ……」

「だ、大丈夫だよ! 綾乃ちゃんは唯一普通のイービルで戦えるすごい人なんだよ?」


 そう美月がフォローになっているか分からないことを言うと仲間たちは頷き、綾乃を励まします。

 ようやく表情を取り戻した綾乃が顔を上げると……。


「だが、最初にも魔法が使えるわけじゃ無いと説明はされているはずだ。聞いていないのか?」


 というクラリッサの言葉に再びがっくりとうなだれ――。

 今度はフローレンスを除く皆がクラリッサを睨むのでした。


「今の言い方はないよ!」


 その中でもリンチュンは訴えるようにダンっと足を鳴らすと前へと詰め寄ります。

 しかし、クラリッサは腕を組みながら……。


「何か問題があるのか? そいつが魔法を使えなくても戦力には変わりない」

「ぅ……」


 そう、魔法を使えるか使えないかは些細な問題でした。

 更には使えれば確かに大いに活躍するでしょう。

 ですが、そうじゃなくても……。


「おそらくこの中でイービルを動かすことに特化しているのは馬鹿犬だ……私達ではあの動きが出来ん」


 そう言うと綾乃は意外そうな表情を浮かべます。


「確かに薬は出来た……問題もない。だが、魔法を使えば体力などが低下してしまう私達ではあの動きをまねできるとは思えんな」

「でも、リンちゃんはカンフーで戦ってるよ?」


 それに対し尋ねたのは綾乃だ。

 確かに、リンチュンは功夫を使い戦っている。

 機体を動かすことに関しては右に出る者はいないはずだ。

 だが、それでもクラリッサは首を振った。


「あれは魔法の力によるものが多い、お前なら似たような動きが出来るだろう?」

「それは買いかぶり過ぎ……」


 綾乃が困ったように顔を引きつらせるとリンチュンは首を振ります。


「多分機体の性能差だと思う……ナルカミは斉天大聖より関節部分が多くも強くもない」


 そう、ただそれだけの違い。

 それだけで出来ることとできないことが分かれているだけです。

 ただでさえ綾乃という少女は生身でありながら今までの悪魔乗りをはるかに凌駕する力を持っているのです。


「綾乃ちゃんはすごいから!」


 すると美月はなんだか誇らしい気持ちになったのでしょう。

 胸を張りそんなことを言うと……。


「なんで美月さんがそううれしそうなんですか?」


 とリーゼロッテがころころと可愛らしい笑みを浮かべました。


「え? その……えへへ」


 美月はなんでだろうと思いつつも顔を赤く染め、やはり可愛らしく笑います。

 それを見ていた綾乃は顔を赤くし……。


「お前が男だったらただのヘタレだがな」

「う、ううううううるさいな!?」


 クラリッサの突っ込みに慌てたように彼女はそう言いました。


「とにかく魔法は使えん……分かったな」

「うん……」


 結論をあらためて言われると顔を真っ赤にしたまま頷いた綾乃はどこか残念そうです。

 でもそれでよかったと美月は思いました。

 もし、魔法が使えるならまた無茶をしそうだからです。

 ただでさえ防護フィールドのお陰で突っ込めるとか考えてそうな彼女の事ですから間違いない!

 そう考えていたのでした。

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