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14話 二人の戦乙女

『夜空美月、姫川綾乃の両名はシミュレータールームへ』


 そんな放送が流れ、医務室を出たばかりの二人は顔を合わせて首をかしげると言われた通りシミュレータールームへと向かいます。

 医務室からは離れた場所にあるその部屋にたどり着くと仁王立ちで待つ女性の姿がありました。

 クラリッサというアメリカから来た女性です。


「遅かったな、駄犬にひよこ」

「だから、駄犬って……」

「ひ、ひよこ……」


 相変わらずの態度に二人はため息をつきます。

 一応は一緒に戦い死戦を潜り抜けてきたのです。

 しかし、彼女は変わる様子はなく……。


「それで、なんで呼ばれたの?」

「簡単だ……シミュレーターで練習をする」


 トントンというには強すぎる力で機械を叩くクラリッサを見て綾乃は焦り……。


「だから精密機器!!」


 注意を促します。

 だというのに彼女は我関せずといった風に腕を組むと……。


「前回の戦い、あれは貴様らの力がなければ負けていた」


 意外な言葉を告げてきました。

 一体どういうことか?

 そう思った美月は首をかしげると……。


「二人は全力で私を倒しに来い」

「……へ? 二人同時?」


 今までの訓練はたった一人での訓練でした。

 ですが……。


「そうだ、正直お前たち二人が連携して戦うのは知っていた。だが、片方は新兵もう一人は死にたがりだったからな、個別に鍛える方が効率的だと思っていたが……」


 彼女は意外そうな表情を浮かべます。


「この前の戦い、明らかに個別で戦うよりも戦力が上がっていた……」

「そりゃ協力してるんだから当たり前っしょ?」


 何を当然なことをと綾乃は呆れたように告げます。

 するとクラリッサは頷き始め。


「そうだ、協力すれば個人の力よりも数倍の実力が出せるだろう」

「あの、だったらなんで……」


 個別だったんですか?

 美月の素朴な疑問は彼女の次の言葉で答えられた。


「だが、それはあくまでそれなりの技術を持った人間だからこそだと思っていた……しかし、貴様らは未熟でありながらそれをなした。なのでプランを変更だ……これからは二人同時に鍛えてやる」


 つまり彼女は自分の過ちを認め、さらなる戦力を伸ばすために美月たちを同時に相手にするとのことなのです。

 驚いた二人は……。


「いや、さすがに……」

「危ないですよ?」

 

 戸惑う二人に彼女は大げさな態度を取りながら笑い始め……。


「小娘二人に負けるとでも? 安く見られたもんだな」


 と言い始めます。 

 すると綾乃はひくひくとこめかみを動かし笑って無い笑みを浮かべました。









「やったろーじゃん!!」

「あ、綾乃ちゃん落ち着いて!?」


 シミュレーターの中でそう叫ぶ綾乃に対し、

 美月は勿論いつも通りの言葉をかけます。

 対し、クラリッサは笑うこともしませんでした……いや……。


「――フッ」

「ちょ!?」


 鼻で笑うとその事を綾乃は指摘し、苛立ちを隠すことなく見せます。

 しかし、それがおかしいのでしょうクラリッサは再び鼻で笑い。


「~~~~あったま来たっ!!」


 綾乃はそう叫ぶと単身でクラリッサの方へと突っ込んでいってしまいました。


「え!? ま、待って!?」


 予想外の行動に美月は当然慌てて後を追いかけるのですが……。


「話を聞いていないのか馬鹿犬」


 彼女は軽く綾乃をあしらいます。

 魔法使いとしては誰よりも劣り……マナ・イービルとしても誰よりも劣る。

 二つの弱点を持ちながら、特化型イービルであるナルカミの攻撃をいとも簡単にさばいていくのです。


「…………」


 それは本当に芸術のような動きでした。

 まさに天使……そう言ってもいいでしょう。

 ですが、美月は彼女の機体を天使とは表現したくはありません。

 当然です。

 天使(アンゼル)は敵なのですから……。


「お前もだ! さっさとかかってこい!!


 いつまでも呆けている美月に苛立ちを覚えたのでしょう。

 ナルカミの攻撃の合間に銃を解き放ったクラリッサ。

 美月は当然それに気が付くと可愛らしい悲鳴を上げ慌てて避けるのでした。


「ひ、ひどいです!!」

「そ、そうだそうだ! 卑怯だ!!」


 そして、そう訴えるのですが……通信からはため息が聞こえ……。


「敵が待ってくれるのか?」

「「ぅぅ……」」


 正論に二人はうめき声のようなものを上げ黙り込んでしまったのでした。


「良いか? さっきも言ったが二人出かかってこいバラバラに来られても意味はない」


 改めて告げられたことで少し冷静になったのでしょうか? 綾乃は後ろへと下がり、美月は少し前へと出ました。

 するとクラリッサは微笑みますが、それは二人には伝わりません。


「では、始めようか」


 そして、彼女のその言葉をきっかけに訓練は始まるのでした。

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