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18話 悪魔乗りの少女達

 天使と戦う美月、彼女は苦手な攻撃魔法を使いついに天使を撃墜することが出来た。

 それは人類にとっての反撃の狼煙でもあったのだ……。

 瞬く間にそれはニュースとなり、彼女はその生い立ちから『ジャンヌダルク』と呼ばれるのだった。

『次のニュースです。5日前、人類は初めて天使との戦いに勝利を収めました。長らく開発中だったマナ・イービル、そしてパイロットである夜空美月さんの活躍のお蔭です』


 食事を取る部屋で大きな画面に流れるニュース。

 隣では同じく食事を取る母と姫川綾乃が居ました。


「本当に美月があれに乗ってたの?」


 心配そうに美月の方へと目を向けた母に対し美月は元々、目元まで隠れる髪を顔を覆う様に項垂れ赤い顔で頷きます。


『現地では彼女はジャンヌダルクの再来だと言われている様です』

「ジャンヌダルクかー……ねね、夜空! 機体名にしてみたら良いんじゃない?」


 フォークをくるくると回しながらそういうのは姫川綾乃です。

 美月は少し恨めしそうに彼女を見つめると――消え入りそうな声で答えました。


「は、恥ずかしいよ……」


 ただでさえニュースにされて恥ずかしいと言うのに勝手にそんな名で呼ばれた挙句、自分で名乗るのは彼女には無理でした。

 それもフランスの国民的ヒロインです、聖女です。

 自分とはかけ離れている。

 そう思って美月はますます顔を赤くします。


「でも美月にはぴったりだと思うよー? ジャンヌダルクって人を殺すのが嫌いで旗を持ってたらしいよ? ほら昔ソシャゲとか子供の頃にはやったでしょ? あれで旗を持ってたのが多いのはそれが理由なんだって!」


 確かに美月は傷つけるのが嫌いです。

 ですが、今姫川が言った話を誰もが知っている訳ではないでしょう。


『彼女は我々人類を導いてくれる存在なのでしょうか?』


 そんなニュースと共に姫川の言葉を聞きながら美月は――。


 やっぱり、恥ずかしいよ……なんで、何でこんな事になっちゃったの?


 っと一人悔やむのでした。








『彼女は我々人類を導いて――――』


 日本語で流れるニュースを背に一人の男性は腕を組んでいます。

 彼は目の前に来た少女へと目を向けると……。


「彼らの兵器はとっくに完成していた。だが彼らはこだわるあまり必要な者が見つからなかった」


 そう話し始めます。

 そして、何かを操作するようなしぐさを取ると映ったのは美月が乗るイービル。


「フイスー……」


 少女は画面を見てそう呟きました。


「そうだ、このフイスーは悔しいが君のより性能が高い、あちらは完成したばかりで一回しか出ていない。だがそれは分かる。是非とも技術が欲しい言ってくれるな?」


 彼はそう少女に告げると少女は頷きます。


「頼むぞ……リン・チュン」

我知道了(了解しました)


 少女はそう告げると部屋から去りました……。

 扉を潜り閉めた所で彼女は内心わくわくとしていました。

 何故ならこの施設の中はむさくるしいのです。

 女性は居るには居ます、ですが彼女が所属している部隊では女性は稀……尚且つそれが可愛らしい少女であれば目立ってしまうのです。

 ですが、日本には自分と同年代の少女が居る事がニュースで分かりました。

 それも自分と同じイービルに乗る悪魔使いなのですから気になって当然です。


美月(メイユエ)ちゃん、どんな子かな!」


 彼女は聞いていた名前を呟き、笑みを浮かべました。

 その笑みは彼女の近くを通り過ぎる者達を虜にしたのでしょう。

 すれ違った何人かは壁や人にぶつかって悶絶しています。

 リン・チュンは音に気が付き彼らの方へと目を向けますが、何故ぶつかっているのかは分からず首を傾げてしまいました。

 皮肉な事にその可愛らしい行動は更に犠牲者を増やしました。

 今度は反対側に首を傾げたリン・チュンでしたが、そんな事よりも同年代の仲間が出来る事の方が気になるのでしょう。

 ぱたぱたと速足で息が切れるのも構わず自分の部屋へと向かっていきます。


 部屋に入るなり、彼女は本棚にしまわず机の上に置いた本へと目を向けます。

 それは過去に買った多国語の本……の一冊であり、日本語と書かれています。

 夢を諦めきれずいつか自分は世界を股にかけるんだ! と何度も何度も読んで、勉強をした本の一冊です。

 本棚には他にも英語やスペイン語などが並んでいました。

 そして、彼女は笑みを浮かべたまま机へと座ると――。


「けほっ……はぁ、はっ……你好(ニーハオ)は……はじめまして! 初めて会う時の挨拶がやっぱり不思議、初めてだってお互いに分かってるのに……」


 などと口にしながらどうやら日本語の勉強をしはじめたようです。

 そうして、彼女の一日は過ぎて行きます。

 日本に居る美月に会う時を待ち望みながら……。









 一方、その頃日本では――。


「良いか? 一般的な武装では天使に大打撃を与えることはできない」


 新谷による授業が開かれていました。


「関節部分、此処は非常に脆いんだここを狙う様にそれと夜空ちゃんは魔法があるからと言ってそれを多用するのは危険だ、魔法も弾と同じで無限じゃない」

「は、はい……」


 美月の返事を聞き新谷はホワイトボードに何やら書きこんでいきます。


 なんで、絵なんだろう? それになんか微妙に上手な絵……。


「ブレイバーはその重さで傷をつけられるが、その分遅くなる、気を付けてくれ……最後に天使には背骨が無いとされていた……」

「無いとされていた?」


 新谷は頷き、言葉を続けます。


「ああ、イービルは手に入れた天使と人間を元に作られている。これは恐らく俺達と彼らの身体が根本的に違うからだろうと思われていたんだ」


 彼が言う背骨とはイービルには備わっているものです。

 これが無ければコクピットである頭部には揺れが起きてしまい、それだけで死に至るほど無くてはならない物なのです。


「だが、前回の戦いの残骸には背骨らしきものが見つかった……どういう訳か、奴らも背骨を取り入れたようだ」

「でも、何で背骨……なんですか?」


 美月が訪ねると新谷は視線を泳がします。

 知らないんだと気が付いた所で新谷は慌てたように口にしました。


「一本の大きな骨がある事で安定性をだな!」

「いや、違うっしょ?」


 彼の答えにそう口にしたのは隣にいた姫川綾乃です。

 どうやら彼女はパイロット候補らしく、一緒に授業を受けているのです。


「背骨って人の身体では臓器を守る為だったり、クッションの役割みたいだよ? S字を描くことによってなんか脳に伝わる揺れとかを拡散させるんだって、因みにイービルの骨盤が頑丈に出来てる理由はそれも人と同じで骨盤、股関節は場合に寄るけどその人の体重の3倍以上? だったかなー? それ位を支えてるんだってさ」

「そ、そうなんだ……」


 意外な所からの回答に美月は驚きましたが、彼女の言葉は分かりやすくなるほどとも思えました。

 確かにイービルは人の臓器がある部分に重要な機械が組み込まれています。

 そして、揺れが少ないのもきっと彼女が言った理由があるのでしょう。

 更には股関節や骨盤部分はこの前一番丈夫に出来ているけど弱点でもあると聞きました。


「そ、そういう事だ! だから敵に背を向けるなよ背骨を折られたら悪魔使いは一巻の終わりだ」


 そう真面目な顔で口にした新谷ですが、姫川からは冷たい刺すような視線を向けられ、美月は引きつった笑みを浮かべました。

 すると彼は――。


「天使の背骨は相手も機体の安定性を求めたからかもしれないな……所でその顔そっちは慣れてるけど、夜空ちゃんの表情はなんか、こう……辛いものがある」


 がっくりと項垂れてしまうのでした。

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