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12話 薬を手にいれた戦乙女

「あれはやばかった……」


 そんな感想を言いつつ綾乃は廊下を歩き、美月は彼女の後を追います。

 リンチュンたちと食事の後分かれたのです。

 向かう先は吉沢信乃の所です。


「うん、美味しかったね」


 美月も思わず頬をほころばせると綾乃は顔を赤くしました。


「綾乃ちゃん?」

「な、何でもない」


 そうじっと見られると恥ずかしいんだけど……。


 美月はそう思いつつも綾乃を見つめ返し。

 目が合うと思わず顔を赤らめそっと視線をそらしました。


「と、とにかく信乃お姉ちゃんのところに行こう!」

「う、うん」


 頷き二人は再び歩き出します。

 もう通いなれた医務室への道。

 扉を開けると中には白衣を着た吉沢信乃と看護服を着た東坂恵の姿がありました。


「時間どうりですね」


 信乃はそう言うと美月に薬を手渡します。


「あれから体に変化は?」

「ないです」


 真面目な時の彼女は特に怖いとは感じませんでした。 

 ですが……。


「そう……ですか、興奮したり、体が熱くなったり息が荒くなったりはしませんか?」

「なんで? なんでそんなこと聞いてるの?」

「重要だからです」


 綾乃の突っ込みにそう帰す信乃ですが、明らかにこれは真面目な時ではありません。


「私を見て胸がどきどきしてもいいんですよ?」

「ぴぃ!?」


 見ればあの怪しい顔になっており……美月は思わず綾乃に抱きつきます。


「み、みみみみっみ!? みつきぃ!?」


 すると慌てた綾乃は素っ頓狂な声を上げ、その瞳を東坂恵へと向けました。


「最近その……夜空さん分が足りないって騒いでました」

「なにその謎の栄養素!?」


 綾乃は叫びますが信乃はいたってまじめな顔で綾乃の方へと向くと……。


「一週間、声も顔も聞けなかったらどうしますか? 耐えれますか?」

「あ、耐えれない……って何言わせんの!?」


 思わず答えてしまった事に後悔しながら綾乃はそう言い、慌てて美月へと目を向けるのですが……。

 美月は彼女を見上げるようにし黙ってしまったのです。

 それもそうでしょう、美月も考えてしまい……もし、綾乃と一週間連絡を断ち切られたら……。

 そんなことを思い浮かべてしまうと彼女は大粒の涙を流し始め……。


「美月!?」

「わ、私も、いや……いやだよぉ……」


 と泣き始めてしまいました。

 自分でも引かれてしまうかもしれないそう思いつつも涙は止まってくれません。


「だ、大丈夫! 絶対に離れないから!」


 綾乃の告白のような言葉に恵は微笑ましいと思ったのか笑い。

 信乃は舌打ちをします。


「まぁ、とにかくそういう理由ですので美月さん」

「は、はい……」


 いったいどんな理由なのでしょうか?

 美月は疑問を感じつつ、真面目な顔になった信乃へと目を向けます。

 今までの経験上こうなった彼女には変なことを言われたりされたりしなかったのです。

 だから今回も安全だ。

 そう思っていました。


「この薬を飲んで裸になってください」

「いや、真面目な顔して信乃お姉ちゃん何言ってるの!? 頭沸騰してるんじゃない!?」

「私はいたって真面目ですよ!」


 思わず突っ込みを入れてくれた綾乃。

 対し美月は予想もしなかった言葉に呆然としていました。


「え? え?」

「ほら、美月戸惑ってるじゃん!」

「私の美月さんと愛し合うのに理由が必要ですか!?」


 こうなったらもう暴走状態と言ってもいいでしょう。

 いったいいつ信乃の美月になったのか? 疑問ではありましたが、この言葉には綾乃の堪忍袋の緒は切れたみたいです。

 両手に拳を握った彼女は大きく振りかぶり叩きつけるように下におろすと――。


「なんで信乃お姉ちゃんの美月なの! あたしのだよ!!」


 と叫び声をあげてしまいました。

 するとその場はまるで凍ったかのような時間が過ぎていき……。


「……あ」


 綾乃は自分で行った事に気が付くと顔を見る見ると赤くしていきます。


「あぁああ? ぁぁああ!? ち、違!? あ、そうじゃなくて違くなくてじゃなくて違くて……わぁぁぁあああああ!?」


 そして、その場で悶えながら必死に弁解をしようとするのですが、もう遅く……。


「大胆な、告白……だね?」


 東坂恵の言葉をとどめとし彼女はその頭を壁にごんとぶつけるのでした。


「あ、綾乃ちゃん!?」


 当然そんなことをすると顔を真っ赤にし固まっていた美月も動き出します。

 彼女に怪我がないかを確かめるためにぶつけた個所を触ると自然に頭をなでるようになってしまい。


「ひぁ!? …………きゅぅ」


 と変な声を上げ、倒れしまいました。


「綾乃ちゃん!?」

「ヘタレ……ですね」


 信乃の言葉は美月の耳には入らず。

 彼女は倒れた綾乃の身を案じるのでした。

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