6話 勝利を収める? 戦乙女
「ほら! フラグだったじゃん!!」
綾乃は責めるようにそんなことを口にします。
ですが、周りの仲間たちはそれどころではありませんでした。
攻撃が確かに当たるところを見たのです。
だというのに全く意味がありませんでした。
だからこそ美月たちは目の前の敵の恐ろしさを再確認させられてしまったのです。
今回の機体の強化。
それは全く意味がなかったと……。
ですが、綾乃は違いました。
美月たちが見ていないものを間近で見たのです。
だからこそ、彼女は今回の機体の強化が意味のあるものと理解していました。
「まだ! 攻めるよ……美月!!」
「で、でも……」
綾乃の言葉にしり込みする美月。
そんな彼女に綾乃は告げます。
「大丈夫、あれはきっと前方からの攻撃に特化されてる! だから、このまま押し切る!! 倒せるかはわからないけど……美月となら!!」
そう言った彼女は天使の傍から離れ――。
美月の傍へと来ました。
「あれ、行くよ?」
あれとはかつて使った戦法の事でしょう。
それは美月にも伝わりました。
ですが……。
「だって――」
「良いから言うとおりにする!」
勝機を見た綾乃の言葉に美月は押され、こくこくとコクピットの中で首を振ります。
ですが、それが伝わるわけがありません。
「返事は?」
やけに優しい声に美月は思わずドキリとし……。
「う、うん!」
と答えます。
「よし!! 行くよ!」
そう言うと彼女は――。
「美月、狙いは3時! 良いね?」
「わ、分かった!!」
イービルを走らせ、その巨大な剣を振ります。
すると今まで沈黙していた天使は動き始め――綾乃の目論見通り、3時方向に避けました。
同時に着弾する魔法の弾。
それに気が付いた天使は慌てたように動き――。
「乱射!!」
綾乃の声に合わせ美月は何度もトリガーを引きました。
すると、綾乃はにやりと笑います。
ですが、それを予想していたかのようにほかの天使たちも動き始め――。
「二人のサポートをしろ!!」
クラリッサの怒号が飛びます。
そのおかげもあり、綾乃は予定通りに動き始め……その大きすぎる剣を背骨目掛け振りぬきました。
鈍い音と共に砕ける骨を見て彼女は確信したのです。
天使が無事だった理由は綾乃の言った通り、前方からの攻撃を防いでいただけだったのです。
「綾乃ちゃん!!」
美月は思わず彼女の名前を叫びます。
すると、大きな爆発が起き……美月は息をのみました。
もくもくと立つ黒煙の中、影が見え……美月たちは警戒していると……。
そこに立っている悪魔は残った天使の方へと向き直りました。
『イタッテ!!』
そんな言葉が聞こえ、天使たちはその場から引いていき……。
美月たちは今回の戦いに勝利を収めました……。
被害は出た。
しかし、以前よりも抑えられた。
しかし……問題は出てしまった。
その問題を調べるためには――。
「堕天使は壊れたか……」
「コクピットは完全に、ね……」
クラリッサの舌打ちにマジかで見ていた綾乃はそう答えます。
人の色とは違う血がべっとりとついたそこを見つめつつ、綾乃は美月の方へと目を向けました。
「どういうこと……?」
確かに天使へと攻撃をした美月たち。
しかし、防がれたそれは見覚えのある魔法でした……。
それは美月のプロテクションフィールド……前方からの攻撃であれば大抵のものは防げる最強の盾でもあるのです。
しかし、それは魔法使いである美月にしか使えないはずです。
なのに天使は全く同じことをしのです。
もしかしたら別次元の美月なのだろうか?
そうも考えたましたが、それはまずありえないでしょう……。
いや、もしそうだとしたら彼女の頭では考えられないことです。
「うあーーーーもう! わけわかんない!!」
通信を切った彼女はそう言いながら頭を抱えます。
「美月みたいな魔法使いが? もしかしたら美月とも戦う事に……いや、まさか、そんなことないよね……」
そう口にすると――。
『綾乃ちゃん! 綾乃ちゃん!? 大丈夫? ねぇ……ケガしてない!?』
焦る少女の声が聞こえ、なぜかほっとした綾乃は……通信を入れなおすと。
「大丈夫だよ」
と口にしました。
すると通信の向こう側からほっとしたようなため息が聞こえます。
『良かった、応答がなくなっちゃったから……』
「ごめん、ごめん! このとーりピンピンしてるから!」
そう言うと美月の笑い声が聞こえました。
考えすぎだ……そう思うことにした綾乃は美月たちと共に支部へと戻るのでした。




