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5話 天使と悪魔と戦乙女

「先に奴らを叩け!! できるだけ数を減らすんだ!!」


 クラリッサの声に美月たちは頷き、武器を振るいます。

 新たな力を得たイービルは天使たちを凌駕し、次々に刈り取っていきます……。

 あたりからは歓声が聞こえ、美月たちの帰還を喜ぶ声がしました。

 ですが……。


 美月たち本人は気が気ではありませんでした。

 まだ、距離はあるとはいえ、考えられない速度で近づいてくる光点。

 それは処刑台への道のようにも見えたのです。

 

「き、来ます!」


 リーゼロッテの悲痛な叫びが通信で聞こえ、美月は光点の方へと目を向けます。

 そこから来るのは新たな天使、それは銃を構え、放ちます。

 すると美月たちを守るようにナルカミが割って入り、剣を縦にすると――。


「あ、綾乃ちゃん!」


 美月は悲鳴に似た声を上げました。

 いくらイービルが、武器が強化されたとはいえ、相手に勝てるかはわかりません。

 ましてやその攻撃を防げるかも分からないのです。


「だ、大丈夫……なんとか、この剣じゃなかったらまずかったかも……」


 綾乃はそう言いますが自身の剣を見て舌打ちをします。

 魔法の刃ではなく実体の刃を持つそれは大きくひびが入っていました。

 これ以上は使えない。

 そう判断した彼女は下を確認して、剣を地面へと突き刺します。


「銃は……得意じゃないんだけど」


 彼女はそう言うと銃を構え天使へと向け発砲します。

 轟音が鳴り響くと同時にそれは当たるかと思われました。

 しかし――。


「え?」


 綾乃は呆けた声を出しました。 

 その時にはすでに――。


「綾乃ちゃん!! 上!!」


 美月はそう口にしながら機体を天使へと向け動かします。

 ですが、綾乃のもとへと駆け付けようとする彼女を止めようとほかの天使たちも動き始めました。

 このままでは綾乃を助けられない。

 美月はそう思ってしまい……一瞬迷いを見せました。


「メイユエ行って!」


 しかし、美月に近づいた天使の一機が鈍い音を響かせながら吹き飛びました。

 そして、その彼女へと声をかけ現れたのはリンチュンです。

 彼女は斉天大聖の俊敏さを生かし、駆けつけてくれたようです。


「うん!」


 美月は答えるとすぐに綾乃を狙う天使を睨みます。

 そして、銃を構えますが――。

 トリガーを引く瞬間、またも姿を消すのです。


「嘘……」


 その姿は捉えきれませんでした。

 美月が気が付いた時には綾乃へと大きな剣が振り下ろされているのです。

 このままでは彼女が死んでしまう。

 美月はそれを見て思わず両手に力が入り、魔力を込めます。


『魔力増幅確認……』


 以前よりも早く反応したその言葉に美月はとっさにジャンヌの右手を突き出します。


『「テンペスト、展開――!!」』


 そういうのと同時に巻き起こるのは突風。

 ですが、依然と違うのに美月は気が付きました。

 以前の突風は範囲が広かったのです。


 ですが今回はどうやら何かを狙うように風が起きました。

 そう、それは綾乃を狙う巨大な剣を持つ腕。

 それへと当たった風は天使の狙いを大きくずらし……。


「た、助かったよ美月!」


 綾乃は無事なようでした。

 ですが、天使はそんなことで手を緩める相手ではありません・

 今度は反対側の手で銃を握ると美月の方へと向けすぐにトリガーを引きました。

 ろくに照準も合わせていない……誰もがそう思うだろう銃弾は美月を狙い真っすぐに飛んできます。


「っ!」


 美月はそれに気が付きましたが、焦りはしませんでした。

 それに焦ってしまえば終わりなのです。

 焦りは判断を鈍らせます。

 それを近くにいるクラリッサから学びました。

 近くから銃声が聞こえます。

 おそらくクラリッサが撃ったのでしょう。

 美月を守ってくれたわけではないでしょう。

 だから、美月は――。


「――――プロテクション、フィールド! 展開」


 魔力を込めそう口にすると――。


『プロテクションフィールド展開』


 無機質なアナウンスは機体の中へに聞こえ、何かを弾き飛ばしました。

 銃弾です!

 そのことに気が付いた天使は流石に焦りました。

 更には自分へと迫る銃弾にも気が付いたのでしょう。

 その場から逃げようとします。

 ですが……そこにはもう一人自身の敵が居ることを忘れていたのです。

 人間など彼らにとってはちっぽけだから忘れていたのでしょうか?

 それはわかりません。


 ですが、それが命取りになることを知らなかったのでしょう。


「逃が………………す、かぁああああああああああ!!」


 少女は叫び声をあげ、大剣をふるうと天使の体勢を崩し、魔法の銃弾は見事に天使を捕らえました。


「やったか!!」


 クラリッサがそう叫ぶと思わず綾乃は機体の中で身を乗り出し……。


「ちょ!? そういうのは言っちゃダメ!」


 彼女の不安は現実となり、そこには無傷とは言わないもののいまだ健在な天使の姿があったのです。

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