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4話 戦う戦乙女

 前回と同じ状況にはさせない! 美月のそんな願いを込めた行動は聞きなれない音と共に放たれます。

 鉛玉を撃ち出す音ではありませんでした。

 だが、それは真っすぐに天使(アンゼル)へと向かい。

 被害を加えようとしていた機体を撃ち抜きます。


「……へ?」


 それを見ていた美月本人は呆けた声を出しました。


「ちょ!?」


 彼女だけではありません。

 綾乃も思わず声を漏らしたのです。

 なぜか? その理由は簡単でした。


 天使を撃ち抜いたそれは地面へと着弾したのです。

 撃ち抜いたのです、外れたわけではありません。


「おい、ドイツの娘……」

「これは……その……」


 思わず低い声をさらに低くしたクラリッサに対し、リーゼロッテはしどろもどろな返答を返します。

 いえ、返答にすらなっていませんでした。

 どう考えても強力すぎます。

 装甲を貫き、地面へと当たったのですから……。

 下手に使えば被害が広まることは間違いないでしょう。


「こ、これもしかして……」


 ですが、美月は一つの可能性を考えました。

 確かに天使は人類の敵です。

 リーゼの父が憎しみを持ち、天使を壊す武器を作ったと言っても誰も不思議に思わないでしょう。


 ですが、あの優しそうなリーゼの父親がそんなことをするとは思えないのです。

 周りの人にも気概が及ぶであろう道具を作るとは思えなかったのです。


「っ!!」


 美月はあえて離れた場所に居る天使へと照準を向け、再びトリガーを引きます。


「バカ!! それを使うな!!」


 使いどころが難しい武器と判断したのでしょう。

 クラリッサは罵声と共に美月を止めようとしました。

 ですが、美月はイービルを操り再び天使へと光の槍を飛ばします。

 光は線を描くように真っすぐと伸び……。

 普通の銃よりも早いそれは天使が避けるよりも早く当たります。


 すると今度は当たった所で美月の攻撃は止まり……。

 貫くことはありませんでした。


 今度は弱すぎます。

 ですが、今の一撃で確信できたのです。


「これ、込めた魔力の分だけ威力が出るみたい! 上限があるかはわからないけど……」


 先ほどの一発目は咄嗟に撃った一撃。

 魔力も多めになっていたのかもしれません。

 そう判断した少女は仲間達にそう告げると……。


「それは……困る、かも……」


 リンチュンの乾いた笑い声と……。


「また、扱いづらいものを……もう、パパったら、もう!」


 どうやら怒っているらしいリーゼの声が聞こえました。

 その怒り方さえ可愛い、美月はそう思いましたが、悠長になごんでいる暇なんてありません。


「……でも、これなら……」


 美月は確信しました。

 相手の装甲を撃ち抜く事が出来る新たな武器であれば、天使達に対抗できると。

 だからこそ、彼女は――。


「行こう、皆!」


 新谷さん……見ててください!

 私達、絶対に今度こそ、助けてみせますから!


 もうそこにはいない青年へと向け、心の中でつぶやきました。

 彼のイービル……そのパーツを受け継いだ新たな機体を動かし、美月は刃のない剣を握ります。

 まずは敵を町から引きはがすこと。

 それが第一優先事項です。

 住民の安全を確保する……そして、それから天使を排除するのです。

 だからこそ――美月は接近戦を選びました。

 まだ天使と町に距離がある今だからこそ、急ぐ必要があったのです。


「これも、多分――!!」


 魔力を込めると光の刃が現れ、それは天使へと向けられ放たれます。

 天使はそれが剣だと判断したのでしょう、刃で防ごうとしますが……。

 光の刃は鉄の刃をすり抜けていきます。

 バターのようにとはいきませんでした。 

 ですが、十分です。

 天使の剣を切り裂いたそれは方から右腕を切り落とします。


「…………」


 思わず呆けた声を出した美月。

 それもそうでしょう。

 そんなに威力があるとは思わなかったのです。

 ですが――これは好機と見たのでしょう。


「全員! 武器を持て!! 天使を町から引きはがすぞ!!」


 クラリッサの声があたりに響き、仲間たちも天使へと向け攻撃をし始めました。

 とはいっても本格的な攻撃ではありません。

 威嚇、その場から撤退させるための攻撃です。


 ですが、それはあまりにも一方的な蹂躙になっていました。

 天使が今までしてきたこと、それが人間と悪魔によって行われているのです。


「こ、これすごいよ! これなら!!」


 綾乃はうれしそうな声を上げます。

 ですが、そう簡単に事が進むわけがありません。


「っ!! アヤノちゃん!! 皆!! レーダー!」


 叫ぶような声を出したのはリンチュンです。

 彼女の言葉通りレーダーを見ると高速で移動する何かが居ました。

 いや、何かなんて言葉はいりません。

 それは天使で間違いないでしょう。

 たった一機のようですが、そのスピードは速く……。


「これ、この前の!」


 美月たちが敗北した機体であることは明らかです。


「大丈夫、今度はセカンドがあるんだよ!」


 綾乃は強気ですが、決して大丈夫とは言い切れない。

 美月はそう思い。

 仲間たちを守るためにはきっと魔法を使わなくてはならないと考えるのでした。

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