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2話 わずかな光を得た戦乙女

 少女の言葉に美月と伊達は目を合わせます。

 今言った事は本当でしょうか?

 そう思いながらも彼女の次の言葉を待ちました。

 すると――。


「方法ならある、かもしれない」


 曖昧ではありますが、決して嘘というわけではなさそうです。

 それに気が付いた二人は――。


「それはどんな方法なの?」

「本当に強化できるんだな?」


 それぞれそう尋ねます。

 二人に言いつめられるようになってしまった少女は驚き固まってしまいますが……。

 今はそれを気にしている余裕はありません。

 何故なら今、この時でさえ、もしかしたら天使が襲ってくるかもしれないのです。

 そうなれば今度犠牲となってしまうのは綾乃達でしょう。


「えっと、マナタンク……あれの性能を上げる」

「何?」

「だから、あれの性能を上げる。そうすればより強固な結界を張ることができる……装甲を変えるのは難しいけど……それに――」


 彼女の言葉に伊達は黙り込みます。

 それでは足りないというのでしょうか?


「つまり、機体全体をプロテクションフィールド……いや、ヴェールを張るってことか……確かに防御面では上がるが、それは元からだろう」

「違う、今までは機体を守る結界だけだった……でも、もっと魔力があれば……それを機体の運動性能へと回せる」


 その言葉を聞き美月は首をかしげます。

 最初の話では確かに結界を張るというのは出ていました。

 ですが、機体の運動性能を上昇させるというのは今初めて聞いたのです。

 だからこそ、どういうことなのかが気になったのですが……。


 伊達はその話を聞き黙り込むと何かを考えているように腕を組み始めました。

 そして、ジャンヌへと目を向けると……。


「新谷がやったようにできるっていう事か……」

「新谷さんが?」


 美月はもうこの世にはいない彼の名前を聞き、繰り返します。


「ああ、奴の動きは普通のイービルを逸脱していた……だが、最後の戦いではその上を行っていた……火事場の馬鹿力なんてもんじゃねぇ」

「おそらく、自身で防護フィールドへの循環を切ってた……その分機体の運動性能へと変換してた……」


 そんな事が出来るのでしょうか?

 美月は疑問でした。

 もともと彼女のもたらした技術はすごいものです。

 ですが、最初から機体を守るためのものでした。

 だというのにそれを切り、機体の性能を上げさせる。

 そんなことは果たして可能なのか? 伊達へと目を向けると……。


「出来ねぇことじゃなないな……元々機体全体へと魔力を通わせる回路でしかない……ましてやあれはただのイービルだ……」

「だから、なんですか?」

「要するにお前さん達のマナとは違ってちゃんと身を守る結界を作れていなかったというわけだ、急だったしな粗もあったんだろう」


 そんな機体で彼を出撃させたのか……。

 美月は再び苛立ちを覚えますが……すぐにそれを抑えます。

 きっと彼なら危機を知ってしまえば助けに来てくれる。

 そう思ってしまったからです。


 恐らくは伊達が止める間もなく出撃をしてしまったのでしょう。

 それが目に浮かび、美月は気分が落ち込みます。

 自分のせいで命が浮ばれてしまったのかもしれない。

 そう思ってしまうのです……ですが、いくら美月の魔法が強力でも時を戻すことはできません。

 死人を蘇らせることも無理です。

 だからこそ、彼女は――。


「お願い、します……この子を直して……ううん、強くしてほしいの」


 伊達と自らがフローレンスと名付けた少女に懇願します。

 すると――。


「できるかはわからねぇ……だがな、ただ直すって訳じゃなければ手伝ってやる」

「大丈夫……きっとできる、はず」


 二人の言葉に美月は頭を下げ、涙を流します。

 悲しい涙とうれしい涙……その二つの思いを胸に秘めながら……。







 出撃できない日々は何日も続きます。

 無理もありません。

 天使(アンゼル)への対抗手段は失われ……現在のイービルでは死にに行くようなものです。

 最初の方は美月たちを庇うような報道をしてくれていた人たちも今は美月たちが逃げたと解釈をしたようです。


『このままでは人類は滅びてしまうでしょう、私たちに生きる希望はありません』


 そう言われてしまい美月は胸が苦しくなりました。

 ですが、どうする事も出来ないのです。

 今は機体がありません、戦闘機で出撃することはおそらくは可能でしょう。

 ですが、そうなれば当然練習が必要です。

 結局すぐに出ることはできないのです……。


 ましてや綾乃はともかく美月たち魔法使いではいくら対処方法が見つかったとはいえ人よりは弱い体です。

 マナ・イービルではなくただの戦闘機での戦いに耐えられるかはわかりません。

 だからこそ美月たちはそれを待っていました。

 だからこそ美月たちは血のにじむような思いをしより訓練に励みました……。


 美月たちを責め始める言葉を聞きながら、それでも……それでも、自分たちの思いを曲げることなく……。






 更に数週間がたちました。

 天使たちはまるでみせしめのように少しづつ少しづつ人類を攻撃しています。

 それが幸いしたのでしょう……。


『全悪魔乗り達はハンガーへ……! 出撃要請が出ています!』


 待ちに待った言葉が放送で告げられました。

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