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84 絶望を覚える悪魔乗り

 支部から被害が出ている場所まではすぐでした。

 そこにつくと美月は言葉を失います。

 天使達は建物を破壊し……人々を踏みつけ……まるで玩具の様に街を人を壊していきます。


「っ!!」


 美月はそんな光景に耐えられるはずがありませんでした。

 助けないと!! そう思い……機体を前へと進ませます。


「馬鹿! 待て!!」


 しかし、クラリッサにそれを止められてしまい。

 彼女はこれまで出した事のないような大声をあげました。


「だって、このままじゃ!! 皆死んじゃいます!!」


 死んでしまったら魔法なんて意味がありません。

 治そうにも治す事は出来ないのです。

 死者を蘇らせる……散々作り物のお話の中では使われていた魔法は現実には存在しなかったのです。


「今、前に出たらどうなる!? イービルのブースターに人が焼かれるぞ!!」

「――っ!?」


 敵の数は一機ではなく、どうしても高機動戦闘が望まれるでしょう。

 そうなるとクラリッサの言う通り、巻き込まれる人が居てもおかしくはありません。 

 ですが――。


「このままじゃ……このままじゃ……」


 美月はそう言いながら銃を構えます。

 ですが、撃てません。

 撃てば倒せるかもしれません、ですが天使(アンゼル)の破片は飛び、またその機体も地に落ちるでしょう。

 そうなれば人を巻き込みます。


「クソ!! 奴らこちらを確認した……だが……」


 通信から聞こえたのは舌打ち。

 美月はその舌打ちの理由が何か分かりました。

 襲って来ないのです。

 天使達は頑なに人と街を襲っています。

 そう……そうすれば美月達が戦えない状況を作れると彼らは知っていたのです。

 街の建物を壊し、無事だった場所からは「助けて」という悲鳴が聞こえます。

 美月達がいる事に気が付いたのは天使達だけではなかったのです。


「助けて!! お願いだから……!!」

「なんで、なんで動かないんだよ!」

「嫌だ、死にたくない!!」


 様々な声が聞こえました。

 ですが、美月達に成す術はありません。

 それどころか……抵抗できないこの状況で……。


「ぁ……!」


 美月が見た物は自分達へと向けられた銃口。

 ですが、今美月達が居る場所なら避ける事は出来ます。

 身構えるとある事に気が付きました。

 もう一機美月達の方へと顔を向けてる機体があったのです。

 その機体は見せつけるように建物に手を置いていました。

 いつでも壊せる。

 そう言っているかのようです。


「人質か……おい小娘! 攻めるぞ!!」

「でもさっきと言ってることが!!」


 違う! そう返そうとしましたが、クラリッサの判断が変わった理由もまた理解してしまいました。

 現状では皆殺し……その上イービルまで失ってしまう可能性があります。

 それだけは避けようとしているのです。

 しかし、美月は――。


 私達が動けば人が死ぬ……動かなくても駄目……こんなの……こんなの、酷過ぎるよ……。


 優しい少女はこの状況に絶望を覚えてしまうのでした。

 すると轟音が鳴り響き、美月は動けずにいました。

 迫る銃弾……それを感じつつどうにもできないのです。

 動けば人に被害が……動かなくても被害が出ます。

 もうどうする事も出来ない。

 彼女の脳裏にはそれだけが浮かびます……。


『ここで死んだら、皆死ぬ』


 するとゾクリとする言葉が告げられました。

 それは突然来た通信です。

 ですが、その声には聞き覚えがあります。


「フローレンス?」

『それでもいい?』


 良い訳が無い! 美月はそう思い、コントロールオーブに魔力を籠めます。

 クラリッサは助けてくれるような動きをしてくれませんでしたが、それは当然でしょう。

 戦えない兵を助ける程彼女は優しくないのです。

 だから迫る銃弾は自分でなんとかしなければなりません。 

 しかし、魔法を使って身を守るには時間が足りないのです。

 だからこそ、被害を最小限に抑えるべく……美月はイービルを動かしました。

 ですが……。


「きゃぁぁああああ!?」


 弾丸は右腕にあたり、機体は大きく揺れます。

 損傷度を確認するともう右腕は使い物にならないでしょう。


 嘘……。


 たった一発、今までではそんな事はありませんでした。

 関節部分を狙われた訳でもありません。

 装甲を撃ち抜き、損傷させられたのです。


「装甲を撃ち抜いただと!? 手甲榴弾か!!」


 美月は慌てて右腕を確認します。

 するとそこにはぽっかりと穴が開いていました……。

 もしそれをコクピットに受けたら……。

 そう思うと恐ろしく……。


「っ!?」


 物音に気が付いた少女は顔をあげます。

 そこには銃を構えた天使が何機もいました……まさにそれは……絶望と呼んで良い光景でした。

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