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81話 倒れる悪魔乗りと困惑する悪魔乗り

 え? ちょ……アタシ何してるの?


 綾乃は壁に手を付き美月を見つめていました。

 家に残っていた少女漫画などに乗っていた壁ドンと言うやつです。

 一時期はやったらしいのですが……。


 なんで? え!? なんで!?


 殆ど無意識にそうやっていたのです。

 しかし、美月は抵抗らしい抵抗を見せません。

 顎に手を当てた綾乃は自身の中でぐるぐると目を回します。

 ゆっくりと瞼を閉じる美月。

 無意識にそんな美月に近づいて行く綾乃。

 このままではキスをしてしまうでしょう。


 わわ!? ちょ、ちょっと待って!? こんな事したら嫌われちゃう!? ダメダメダメダメダメだって!?


 後もう少し。

 そこまで来て綾乃は顔を真っ赤に染めながらなんとか押し留まりました。

 ですが、目の前には目を瞑って受け入れる姿勢の美月が居て……。


 あぅあ……これは……駄目だ、襲いたい。

 ってアタシ何考えて!? だから駄目だって!?


 思考は尚ぐるぐると回ります。

 そんな時、ふと柔らかい何かが唇に振れました。

 何事かと考えていると何と美月が自分にキスをしているではないですか……。


 あぅ……? 美月、美月がキスし、て……? や、やわらか……。


 彼女の意識はそこで途絶えました。








 どうしよう……。


 美月は倒れている綾乃を見つめそう考えていました。

 彼女がここに戻ってきたのは偶々でしょう。

 これから訓練をしに行かなければならないはずです。

 ですが、そんな彼女は倒れてしまい。

 今は動けない状況です。

 どうしたものか……。

 そう思っていると前からカツカツカツと言う音が聞こえました。

 びくりと美月は震え音のする方へと顔を向けます。

 するとそこから現れたのは……。


「何をしている」


 若干……いえ、かなり怒っている様子の女性クラリッサでした。

 彼女は倒れている綾乃を見て、彼女は答えられないと悟ったのでしょう。

 すぐに美月に説明を求めるように目を向けます。


「あ、あの……」


 キスをしたら倒れちゃいました。


 そう言うのは簡単ではありません。

 相手が彼女じゃなくてもこれだけは言えないのです。

 もし言ってしまえば……。


 私は別に良いけど……綾乃ちゃんが……。


 そう、綾乃が変な目で見られてしまう。

 そう思ってしまったのです。


「……なんだ? まさかキスでもして倒れたのか?」

「ふぇぁ!?」


 図星を突かれ美月は変な悲鳴をあげます。

 するとクラリッサは大きなため息をつき……。


「まるでチェリー……童貞だな……」

「ど!? どど!?」


 顔色を一切変えずそんな事を言うクラリッサに対し、美月は顔を真っ赤にします。

 口に出すのも恥ずかしい。

 そう思ってしまった美月でしたが、はっと気が付くと……。


「あ、綾乃ちゃんは女の子です!」

「知っている……まったく、物の例えだ」


 例え方が悪いです!? と美月は訴えるがクラリッサは平然とした顔を浮かべているだけでした。

 そんな彼女は溜息をつくと――。


「それで、そいつをどうするつもりだ?」

「ど、どど……どうするって……」


 起きるまで見守っていよう。

 そう思っていた美月ですが、彼女の言葉を聞き綾乃へと目を向けます。 

 するとそこには先程唇を合わせた少女が居ます。

 彼女は今は静かに寝ているのですが……。

 今度は美月が目が回りそうになっていました。

 何故なら自分からキスをしてしまったのです。

 しかもじらされた事に対する少しの苛立ちを感じて……。

 彼女は押さえていたはずの感情を前に出してしまったのも同然なのです。



 私……綾乃ちゃんの事……。


 異性ではなく同性。

 ですが、もう美月はその感情を無視できない程になっていました。


「ぅぅ……」

「そんな所に寝かせて置くわけにもいかんだろう、ほら、部屋まで運ぶぞ」


 何時までも答えが返ってこない事にクラリッサは苛立ちを見せつつ、そう口にしました。

 美月はようやく彼女のどうする? の意味に気が付き一人顔を真っ赤に染めると――。


「ひゃい!」


 素っ頓狂な声で返事を返します。

 そして、彼女の手を借り綾乃の部屋へと入ると……。


「ぁ……」


 自分の部屋とは当然違う部屋です。

 家具からなにまで……一緒と言う訳ではありません。

 まして、美月の部屋は元々の美月の家、それを再現しているのですから当然でしょう。

 美月は綾乃の部屋へと入ると目に映ったのは一つの写真。

 そこには幼い綾乃と少年が並んで笑顔で映っています。


 この人が綾乃ちゃんのお兄ちゃん……? でも、なんだろう……この人綾乃ちゃんにまったく似てない。

 本当に兄妹なのかな?


「ボーっとしてると落とすぞ」

「ぁ、は、はい!」


 美月はクラリッサの声に返事をすると綾乃をベッドの上にゆっくりと寝かせるのでした。

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