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80話 恋する悪魔乗り

「あ、分かった!」


 その言葉に美月はびくりと身体を震わせます。

 もしかして、変な事を考えているのがばれたのでしょうか?


「アタシに会いに来てくれたんしょ!」


 そう、笑みを浮かべ声に出す綾乃。

 美月はそれを聞き顔を上げると大きな瞳を丸め、まるで魚の様に口をパクパクさせます。

 その顔は真っ赤に染まっており……。

 それに気が付かない人などいないでしょう。


「え?」


 自分の言った事が図星だった。

 そう感じた綾乃は笑みを崩し……。


「えと……」


 視線を泳がせると……。


「……本当?」


 と美月に尋ねます。

 美月は未だパクパクとしていましたが、やがてあっちこっちに視線を泳がせ……観念したかのように頭を縦に振りました。

 その顔は今までにないくらい真っ赤に染まっています。

 それを見て綾乃も顔を赤くすると……。


「あはは……そっか、そっか……」


 嬉しそうな声を出してはいるものの美月と同じぐらい赤くなった顔を床へと向け……。


「は、恥ずかしい」


 とこぼします。


「恥ずかしいのは……私もだよ」


 美月はそう口にすると再び綾乃へと目を向けます。

 そこには一緒に居ると安心出来る少女が一人。

 彼女の傍に居ればきっと難しい事でもどうにかなる。

 そんな安堵もありました。


「あはは……そうだよね」


 そんな少女は人懐っこい笑みを浮かべると美月の視線に気が付き再び視線を逸らします。

 そして「あはは……」と笑いながら頬をかきました。


 やっぱり変だって思われた。


 美月はそう思ってしまい、がっくりと項垂れます。

 

 そうだよね、私は女の子で綾乃ちゃんもそうで……。

 この前のはキスしそうになったから変な雰囲気になっただけで……。

 普通は……変だって思われて当然だよね。


 彼女がそう自分の中で思っていると綾乃は……。


「その、さ……」

「ひゃい!?」


 声をかけられ、美月は思わず変な声をあげます。


「変だって思われるかもだけど……その……凄く嬉しい、って思ってる」


 目を泳がせながら、しかしその顔をますます赤く染めた少女の言葉に美月は顔をほころばせます。

 ですが、すぐに今の顔は見られたら恥ずかしいと思ったのでしょう。

 慌てて顔を伏せると……。


「う、うん……」


 と答えました。


 ど、どうしよう……嬉しいけど凄く恥ずかしい。


 美月はそう思いながらもじもじと手を動かします。

 どうしたらいいのか分からなくなってしまったのです。

 すると――。


「美月……」

「……な、なに、きゃ!?」


 顔を上げると綾乃は美月を壁に追い詰め逃げられないようにその手で道を塞ぎます。

 その光景には覚えがありました。

 嘗てはやったという話があった壁ドンと言う奴です。

 まさか自分がそれを体験するとは思っていなかった美月は思わず、おろおろとしてしまいました。


「少し、落ち着いて……」


 綾乃にそう言われ、美月は彼女を見上げるようなしぐさをします。

 すると綾乃は空いている方の手で美月の顎を持ち……ゆっくりと顔を近づけてきました。

 美月は迫る彼女の顔を暫く見ていましたが、恥ずかしさに負け瞼を降ろし両手を握ります。

 何が起きるか、綾乃が何をしようとしているか……。

 それが分かってしまったからです。


 どの位、目を瞑っていたのか分かりません。

 随分と長い時間そうなっていたのかもしれません。

 いつまで経っても何も起きない事に美月は不思議に思い瞼を上げると……。


「ぁぅぁ……ぅ…………ぁ」


 変な声を上げ、真っ赤になっている綾乃がそこに居ました。

 美月は彼女を見つめ惚けていましたが……。

 すぐにその頬をぷくりと膨らませると――。


「あ、ぁぅ……」


 思考が停止しているらしい彼女の首に手を回し……自分から顔を近づけていきます。

 ぐるぐると目を回しているらしい綾乃は抵抗らしい抵抗を見せず……。

 美月と綾乃の唇は重なり合い……再び美月は瞼を閉じると……。

 暫くして唇を離すと綾乃はくらくらと揺れています。


「あ、綾乃ちゃん?」


 不安になった彼女は名前を呼ぶと……。


「……きゅぅ」

「綾乃ちゃん!?」


 可愛らしい声を上げ、綾乃はその場に倒れるのでした。

 美月は当然慌てて彼女を支えますが、気を失った人を抱きかかえる力はありません。

 頭を打つのだけは何とか阻止するとほっとしつつ……。


「もう……」


 と頬を膨らませます。


「綾乃ちゃんのいくじなし……」


 自分から迫って置いて……と小声で口にしながら彼女の頭を自身の腿へと乗せた彼女は……。


「そうだ、訓練……どうしよう」


 クラリッサの顔を思い出し、赤かったその顔を青くするのでした。

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