16話 人類の敵と戦う少女
人類の敵、天使それと対峙した美月達。
だが、美月は戦えず、新谷が先頭切って戦いを挑む。
しかし、銃は大した効果が無いのだった……。
美月が初めて見る天使。
それは機械仕掛けで、真っ白で大きな羽をもつ人類の敵です。
彼らは襲って来る時は何故かたったの一機。
ですが、それでも天使達は強大な力を持ち、人類を確実に絶滅へと向かわせる死神です。
対する人類が乗る機械仕掛けの悪魔。
元は天使を奇跡的に回収することが出来、そのお陰で彼らの技術を盗み開発した兵器です。
ですが、それでも天使には苦戦を強いられるどころか、足止めが精一杯です。
「あ……あれ……あれ、が……」
美月はそんな天使と悪魔の戦いを見つつ呆然としました。
銃弾はすべてとは言えませんがそれなりに命中していました。
ですが、天使はびくりともしません。
やがて弾は切れたのでしょう繋がったままの通信からは「チッ!!」と言う舌打ちが聞こえました。
続いて、悪魔が腰にあった大きな剣を掴みます。
それを天使へと向かい振り抜きますが、天使も持っていた剣を構えると易々と受け止めました。
「……あんな……あんなのと……?」
あんなのと自分は戦わなければならないの? 美月は化け物と呼ばれる以外の恐怖を感じました。
元は同じ機体のはずです、確かに使われている金属などは違うかもしれません。
ですが、元は同じ、それに似せた物を作ったと……いえ、それ以上の機体を作ったと政府は発表していました。
それでも勝てないのか! などとマスコミは訴えていましたが……美月は戦闘を目にしてこれは無理だと悟りました。
勝てるわけがないのです。
銃は効かない、剣は防がれる。
これでは戦う術がありません…………寧ろ今戦っている新谷と言う男性が良く生き残ったと思えるほどでした。
まさに英雄と呼ばれてもおかしくない。
そう、考えられるほどに……。
ですが……彼が帰還してきた状況と今ではまるで違います。
美月が居るとは言っても実際は1対1、今までは1対多数だったでしょう。
分が悪すぎるのです……。
「クソ!!」
通信から聞こえた言葉に美月はびくりと震えました。
いえ、それだけではありません天使の描いた銀泉。
それは悪魔を切り裂き、腕を落とします。
そう、剣ごと落とされたのです。
新谷は丸腰になってしまいました……戦闘が始まって10分も経っていません。
いえ、寧ろ5分経ったのかさえ怪しいです。
「っ!!」
このままでは新谷が死ぬ。
そう考えた美月は思わず天使の元へとイービルを向かわせます。
天使との戦いが怖い、と言うのよりも誰かを助けなければいけない。
そんな思いが強かったのです。
「――駄目!!」
それは小さな小さな声、ですが意志のこもった強い言葉でした。
美月の乗るイービルは新谷のイービルの近くに来ると天使に向かって両掌を向けます。
助けないと――!
美月は目を瞑り無意識の内に魔法を使い――。
天使はその手に持つ剣で美月達を切り裂こうとします――――が……。
聞こえてくるはずの甲高い音は一向に聞こえず。
美月が目を開くとそこには青白い膜のような物が生まれ始め……天使の剣はその動きがぎこちなくなっていき。
『コードSSS……スペルサポートシステム起動、プロテクションフィールド展開完了』
美月はそんな声が聞こえた事に驚きつつも天使の剣を目で追って行き……目を疑いました。
「え…………え?」
驚く事に剣が止まっています……いえ、青白い膜に阻まれていると言った方が良いのでしょうか?
天使も驚いたのでしょう、剣を引き、振りかぶり振り下ろしますが……音もなく膜の所で止まります。
「な、何を……一体なにをしたんだ!? 夜空ちゃん!!」
新谷の質問に夜空は混乱しつつも一つの答えを思い出します。
そう、スペルサポートシステム……確かにシステムはそんな事を口にしていました。
恐らくそれが内部に魔法を発動させないためのシステムなのでしょう。
そして、そのシステムの名前が指すスペルと言う言葉……つまり……。
「魔法? 多分……魔法、を使ったんだと……思い、ます」
「魔法!? 魔法だって!? まさか……いや、だからろくな訓練も無しに……?」
呟く新谷でしたが、美月は当然困惑しています。
取りあえず、攻撃を防ぐことは出来ました。
ですが、この後何をすればいいのか分からないのです。
剣を握ったことの無い美月では天使に剣を向けても弾かれてしまうでしょう。
銃なら? これだけ近くであれば当たるかもしれません、ですが先程の結果を見るに無駄でしょう。
「ど、どうすれば……」
良いの? 美月は考えます。
ですが、無情にも――。
『魔力低下、プロテクションフィールド消失まで30秒………………』
時間は有限。
無限ではないのです……。
無機質な機械から告げられたのは美月たちを守っている青白い膜が消えるまでの時間。
ましてや、護っているだけでは勝てるわけがありません。
いえ、今回は勝つことが目的ではなく、あくまで住民の避難が目的ですが、このままでは美月達は死んでしまうでしょう。
せめて――せめて新谷さんだけは――。
助けたい、そう思う優しい少女は――つい先ほどまでおろおろとしていたのが嘘のように前へと視線を動かし。
「――魔法」
呟くと……。
「――――っ!!」
オーブを握る両手に力を籠めます。
今まで使う事を拒んできた力……そう、相手を傷つけるための魔法。
それを、今、誰かを守るために使おう……そう決意をした少女に迷いはありませんでした。
『魔力増幅確認……テンペスト展開迄後10秒』
そして、機体はそんな美月の想いに決意に答えくれるのでした。




