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78話 逃げない悪魔乗り

 フローレンスと名付けた少女を部屋まで送った後、美月はようやく自室へと向かいます。

 すると出迎えてくれたのは母親。

 彼女は美月を見ると一瞬辛そうな表情を浮かべますが、すぐに笑顔を作り。


「おかえり」

「うん、ただいま」


 美月は彼女の辛そうな顔を見るのが嫌でした。

 ですが、それをさせない方法も知っていました。

 しかし、美月にはそれが出来ないのです。

 とても簡単な事ではありましたが、美月には難しい事になってしまいました。

 ほんの少し前……。

 本当にほんの少し前であればそれは簡単だったはずです。

 なのに今は彼女の中でとても難しい事に代わってしまったのです。


「早かったのね」

「うん、訓練は休むことも大事だって」


 その為に早く帰って来た美月はリビングの椅子へと座ります。

 美月は母の辛そうな顔は嫌いです。

 ですが、母の事は好きでした。

 だから、そこから逃げる事もしたくなかったのです。

 もし、逃げてしまえばもう二度と会えないかもしれない。

 その時に後悔しても遅い事は十分に分かっていたからです。


 そう、美月は何時も死と隣り合わせ。

 何時死んでもおかしくありません。

 戦いとはそういう物だと知った少女は母が出してくれた薄いお茶を喉へと通します。


「それで、あの子は?」


 母はせめて仕事以外の事をと思ったのでしょう。

 美月に出来た友人の話を切り出しました。


「綾乃ちゃん?」


 美月も彼女の事だと思いそう口にすると母は頷きます。

 あの子は? と言うのは恐らくあの子は来ないのか?

 それともあの子とは上手く行っているのか? 恐らくはそう言う事でしょう。


「うん、仲良くしてるよ。綾乃ちゃんは優しいから」


 何時だって自分を守ってくれる存在。

 それは学校に居た時も同じでした。

 ミュータントと言う生物を寄生させた美月は魔法使いです。

 魔法使いはその名の通り魔法が使えるようになります。

 ですが、その魔法を使った犯罪は決して少ないものではありません。

 だからこそ、世間では魔法使いは化け物だ。

 そんな風に見られることも普通でした。

 ですが、美月の学校では美月を化け物扱いするものは居ませんでした。

 それが綾乃のお蔭だったのです。

 彼女はその時からずっと美月を守ってくれていたのです。


「……昔から、ずっと」


 だから今度は自分の番。

 美月は心の中でそう口にすると……母親は微笑みました。

 辛い顔ではなく嬉しそうに……。

 美月の想いに気が付いているかは分かりません。

 いえ、気がついてはいないでしょう。

 それでも、美月にかけがえのない友人が出来たという事実を喜んでくれているのでしょう。

 彼女は……。


「そう、大事に、ね?」

「うん!」






 いつも通り……日常を過ごし、必死で生きていく。

 それが出来たのはついこのままでの事です。

 ですが、美月に後悔などはありません。

 何故なら今の戦いの中に身を投じているのが彼女の日常だからです。

 美月は食事を終えると部屋へと戻って横になります。

 すると途端に襲ってくるのは眠気。

 このまま寝たら駄目だっとなんとか身体を起こすとシャワーを浴びる準備を始めました。

 鏡の前を通ると少し前までは顔を隠すようだった黒髪は今はすっかりとその顔を遮らないように整えられています。


「…………」


 かなり変わったはずです。

 自分自身でも切った当時は見違えるようにもなったように感じました。


「私……変わってるのかな?」


 変と言う訳ではありません。

 少しでも強くなれたのか? という問いを自分自身に投げかけます。

 そして、その答えは出せないままシャワーの準備を始め……。


「………………」


 自分のある部分へと目を向けるとがっくりと項垂れました。

 特に今まで気にした事はありません。

 ですが、リンチュンやフローレンスと比べてしまうと運電の差が出て来てしまい。


「どうしたら、大きくなるのかな?」


 と思わずこぼしてしまいました。

 途端に自分が言った事が恥ずかしくなり頭をぶんぶんと振った少女はそれを忘れる為かいつもより少し熱いシャワーを浴びるのでした。








 翌日、訓練をしようとシミュレータールームへと向かう途中。

 美月はふと気になりハンガーの方へと向かってみます。

 するとそこではコピスへと取り付けられるマナタンクが置いてありました。

 内部の回路が難航しているらしくまだ完成とは言えません。

 ですが、それさえ取り付けられれば従来のイービルも安全性が増します。

 それは美月達の乗るマナだけではなく綾乃の機体も同じ事です。

 遠目にその光景を見た美月は心の中で頑張ってください! と呟くと自身も頑張るべく訓練に向かいました。

 今やっているのは記憶されたパターンではありません。

 焦らないようにしないと! そう言い聞かせ美月は前回の失敗点を復習するのでした。

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