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71話 友人の危機を知る悪魔乗り

 地底人の少女が来てから数日。

 美月達は普段入らないブリーフィングルームへと入りました。

 ここには前は新谷。

 今はクラリッサが入っていたのです。

 ですが、今回は美月達にも話があるという事で入る事になりました。

 初めてではないにしろ入った部屋でまず目についたのは設計図。

 そこには色々と細かな事が書かれていて美月達にはさっぱりわかりません。


「あれ、なんだろう?」


 美月が思わず声に出すと近づいて来た伊逹が怖い顔を少しほころばせていました。


「マナタンクの設計図だ」

「それって魔力が少ない魔法使いでもマナに乗れるってやつ?」


 綾乃が彼に尋ねると彼は頷き肯定した。

 そして、もう一つの人型の設計図へと指を向けます。

 恐らく、いえ確実にイービルの設計図でしょう。


「それを組み込んでるのがマナイービル量産型……プリンシパリティだ」

「うへぇ……」


 その名前を聞くとあからさまに嫌な顔を浮かべた綾乃に対し、美月達は首を傾げます。

 マナイービルにも量産型が出来るのは嬉しい事ではないか?

 そう思っていたからだ。


「アヤノちゃん? なんで変な声」

「そうです、良い事だと思いますが?」


 二人の言葉にぶんぶんと首を振る綾乃。

 彼女は疲れた顔で……。


「プリンシパリティって天使だよ、第七天使、権天使!」


 そう、彼女は神話に詳しいのです。

 だからこそ、天使の名前を持つ悪魔に思わず「うへぇ」と言ってしまったのでしょう。


「だからなんだ? 何も問題はあるまい」


 そんな声が聞こえ綾乃はびくりと身体を震わせすぐにピンと背筋を伸ばします。

 美月もその声に聞き覚えがあり、声を聴き間違える訳がありません。


「クラリッサさん」


 振り向くと其処にはクラリッサの姿がありました。

 彼女はふんっと鼻を鳴らし、ドカリと椅子に座り込むと綾乃を睨みます。


「何度も説明したろう? あのアンゼルと言う化け物は天使の名を姿を偽る悪魔だと……我が父が人間が滅ぶ道を選んでいるとは思えんな」

「いや、だって見た目天使じゃん……ていうか、あまり天使っぽいと敵だと間違えるじゃん!!」


 綾乃の意見ももっともです。

 ですが、宗教的な意味もあってか、そうではないのか美月には分かりませんでしたが、クラリッサも引く気はないようです。

 いえ、そもそも……。


「綾乃ちゃん、今は押さえて……それで、何で私達まで?」


 と尋ねると彼女は真ん中にある席を見つめます。

 そこには本来司が座るべきなのでしょう。

 彼の姿はまだありませんでした。


「簡単な事だ。お前達が連れてきたという娘。あいつの事だろう」


 それは何となくそうだろうと思ってはいました。

 ですが、それならなぜ設計図があるのか? 美月は疑問でした。

 いえ、正しくは信じられなかったといった方がいいでしょう。

 彼女は美月達にある回路の情報をくれたのです。

 ですが、実際に彼女が誰なのか? 本当に味方なのかは分かりません。

 綾乃はあの恨みは本物だと教えてくれましたが、それは彼女自身の感性であり、美月を始めとした他の者にはまだ分からない人物だったのです。


 それから何分、いえ何十分待ったのでしょう?

 早かったのかもしれません、それとも単純に彼が遅かったのかもしれません。

 それは分からない事でしたが、彼女達の前に司は現れました。

 彼は何も言わずに席へと座ると……。


「さぁ、話を始めよう」


 と美月達にも座るように促します。

 席へと付いたのを見た彼は皆の顔を見回し……。


「今回集まってもらったのは他でもない。例の少女とマナタンクについてだ」


 彼は話を切り出します。

 どうやら美月達が呼ばれたのはイービルに関係のある事だからと言う意味らしいですが……。

 そこに新谷の姿はありません。

 それに取りあえずほっとした美月は彼の話に耳を傾けます。

 

 まず現状のイービルでは限界がある事。

 対し、敵は新型を投入してきており、また戦力差が開いてしまった事。

 マナの方も多様性があり特化してはいる物のあの新型に勝てる見込みは低いという事。

 ナルカミはナルカミで関節パーツへの負荷が厳しく、いずれパイロット……綾乃自身にも影響が出てしまう事。

 それを聞いて美月は思わず立ちあがります。


「そ、そんな!!」

「落ち着いてくれるかい美月君」


 立ち上がった彼女に対し、司は冷静に座るように告げます。


「あくまで現状だ……それにまだ綾乃に影響はないだろう」

「でも!!」


 大切な友人に何かあるかもしれない。

 そう思ったら美月はいてもたってもいられません。


「だからこそ、彼女の技術……回路を試してみたいんだ」

「……え?」


 それは予想外の言葉でした。

 ですが、司はゆっくりと言葉を続けます。


「魔法使いと魔法使いではない者の違いは魔法だ。それは単純だが明らかな差がある」


 そう、魔法使いは無意識の内に魔法を使い自身の身を守っています。 

 ですからイービルに特化した耐性を持つのです。

 身体が弱いとされていたからこそ今まで乗って来なかったのが発見が遅れた原因でしょう。


「だからこそ、マナタンクを組み込めれば……」

「それで魔法使いと同じような効果を得られるコクピットを作るか……」


 司はクラリッサの答えに首を縦に振るのでした。

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