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66話 絶望を知る悪魔乗り

 それは見たことも無い攻撃でした。

 いえ、見たことも無い機体ですからそれも不思議ではありません。

 ですが……そんな事は大して問題ではなかったのです。

 それよりも、問題があるとすれば……。


「……あ? ああ?」


 美月は目の前の事実が信じられませんでした。

 前方へと展開される美月の魔法。

 それはどんな攻撃も防いできた自慢の魔法でした。

 ですが、彼女を襲った事実は――。


「嘘……」

「…………」

「っ!?」


 それを見ていた3人にも恐怖を与える物でした。

 美月の魔法の盾はまるで空中に絵を描かれたようにひびが入ってしまったのです。

 すべてを防ぐ盾に見えたその魔法はたった一回の攻撃で最早使い物にならないのが分かってしまったのです。


「そんな、美月は……美月は大きな病院一つ守るぐらい凄いんだよ?」


 自分を助けてくれた。

 その時の事を思い出しながら綾乃は声を絞ります。

 最早誰にも正常な判断は出来ていませんでした。


 それ以外は……。

 それは無慈悲にも美月へと向かって再びトリガーを引き。

 再び轟音が鳴り響くと同時にガラスが割れるかのような音が響きます。


「きゃぁぁあああああ!?」


 それは彼女の魔法がたった二回の攻撃で破られたという事実を突きつけるどころか……。

 彼女の機体へとダメージを与え、美月はコクピッドの中で思いっきり背中を打ってしまいました。


「かひゅ!?」


 シートベルトをしていました。

 ですから体がそこまで大きく揺れる訳ではありません。

 ですが、肺から空気を出してしまい、彼女は息苦しさに目を白黒とさせました。


「……っ!!」


 そこでようやく綾乃は現実へと戻り、ブレイバーを構えるとそれへと向かい突進をします。


「この、このぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!」


 友人を守る為に放たれる一撃ですが、それは無慈悲にも天使の魔法によって防がれてしまいました。


「あれは……メイユエの……」


 そうそれはたった今美月が使ったはずの魔法プロテクションフィールドです。


「私達の技術、盗まれてます」


 リーゼも苦虫を噛み潰したような顔をコクピッドで浮かべ、そう告げました。

 何故そう思ったのか? 理由は簡単です。

 天使が撃ち出した銃弾は鉛玉ではなかったのです。

 そう、それ魔法の弾。

 リーゼの持つ武器と全く同じ物でした。


「のぉぉぉおおおお!!」


 ですが、綾乃はそんな事を聞いている暇が無いとばかりに何度も何度もブレイバーを振り回します。


「駄目! アヤノちゃん! 人がいる!!」

「っ!?」


 リンチュンの言葉で我に返った彼女は思わずその手を止め。


「……あ?」


 綾乃は天使がゆらりと動くのを見たかと思うと目を疑いました。

 まるでしなやかな女性の体の様にそれは彼女の機体へと迫り……。


「きゃぁああああ!?」


 彼女もまた吹き飛ばされていきます。


「斉天大聖……も……」


 そう、その動きはまるで斉天大聖そのものでした。

 その場にいた誰もが絶望しました。

 目の前の天使は美月達の悪魔(イービル)その性能を持っているのです。

 誰も動けずにいると天使はゆっくりと歩き出します。

 目的は恐らく二人の逃げ遅れた人でしょう。

 銃口は地面へと向けられます。


 そこでようやくリンチュンとリーゼも動き始めますが……。

 それを予測していたかのように暴風が吹き荒れ、彼女達もまた吹き飛ばされていきます。

 これでは近づく事も遠距離で攻撃をし、仕留める事も叶わないでしょう。


「そんな!」


 罪もない人が殺されてしまう。

 そう誰もが思った時――。

 それは起きました。


 雷撃が走り、天使を穿ったのです。

 バチバチと音を立てた天使は思わず後ろに下がり、銃を取り落とします。

 ですが、すぐにそれを取ろうとは動きません、痺れているのでしょう。

 その隙を逃さぬと言うかのように灰色の悪魔は銃を拾い構えます。


「――はぁ……はぁ」


 ようやく整った息……美月は痛みに顔を歪めながらも天使へと向かって引き金を引こうとしました。

 すると――。


『……ダケマ……負ケダ……ウコヒ……引コウ』


 手で美月の動きを制止するかのように動くと天使は羽根を羽ばたかせて飛び上がります。


「……え?」


 突然の事に美月は戸惑いますが、天使はそのまま去って行き……。


「なんだったの?」


 呆然とします。

 するとそんな所に綾乃が戻って来て、彼女は天使の去って行った方へと目を向けている様でした。

 まさか追いかける気では? そう思った美月は気が気ではなかったのですが、それは杞憂だった様で……。


「戻ろう……」


 綾乃の言葉を聞きほっとすると……。


「うん、でもその前に……」


 たった今助けたばかりの人達へと目を向け、コクピットを開くと彼らの前へと向かうのでした。

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