64話 女子会をする悪魔乗り
ちょっとうらやましい……。
普段自分の体系なんて気にした事のない美月は2人を見て自身の身体を見下ろします。
そこには確かにあるにはある胸。
ですが、お世辞にも大きいとは到底言えません。
ぅぅ……。
特に着やせするタイプでもない彼女はこれ以上成長する事は無いのかな? と自身で落ち込み始め……。
「み、美月はそのままで十分可愛いよ?」
と綾乃にこっそりと言われ、顔を真っ赤にします。
まさかそんな事を言ってもらえるとは思わなかったのです。
「あ、ああああ!? あやのちゃん!?」
まるで湯気でも出るかのような真っ赤な顔で彼女へと目を向けた美月。
そこには同じように顔を真っ赤にする綾乃の姿がありました。
「あれ? 二人ともどうしたんですか?」
そんな二人の様子がおかしい。
ようやく気が付いた彼女達は首を傾げながら二人の方へと向きました。
「「な、なんでもない」」
二人は声をそろえそんな事を言いますが、実際にはそうではありません。
今にも火が出そうなくらい恥ずかしかったのです。
ぅぅ……何でこんな事?
女の子同士なのに……そう思う美月を余所に綾乃は深呼吸を繰り返し、落ち着きを取り戻します。
「それで、これからどうしようか?」
「え?」
彼女の言葉に顔が真っ赤なままの美月は戸惑います。
これからとは一体どんな事でしょうか?
「えと、あの……」
「あ、その、リンちゃんの事だよ?」
美月が戸惑うとその理由に気が付いたらしい綾乃はそんな事を言い。
美月は思わず頬を膨らませます。
なんだかおもしろくない、そう思ってしまったのです。
ですが、すぐに息を吐き出すとリンチュンをこのまま部屋に返すのは良くないとも思いました。
彼女は部屋に一人です。
それが嫌で吉沢信乃の仮眠室で止まっていたのでしょう。
ですから、このまま帰して一人にするのは良くないと考えたのです。
「うーん……」
とはいえ、美月達も兵士自由な時間はあれど襲撃がいつ来るか分かりません。
そう考えるとハンガーにアクセスしやすい場所。
そう思うのですが……。
「そんな都合のいい場所ないよね……」
「うん、取りあえず私の部屋が一番近いとは思うけど……」
美月は自分の家を思い浮かべそう言うと綾乃は頷き。
「じゃぁ、お邪魔じゃないなら行こっか?」
「うん、大丈夫だと思う」
彼女の提案に今度は美月が答えるのでした。
そうして、美月達は部屋へと向かおうとしていた時の事です。
警報と共にアナウンスされたのは天使の襲撃です。
「嘘……」
日に何度も襲撃があるのは初めてでした。
ですが無視をする訳には行きません。
「い、行こう!」
美月はそういうとハンガーへと向かい。
綾乃達もまたそこへと向かいます。
不思議な事に今回は誰が迎えと言われなかったからです。
「休憩中の人も呼びたいって事だよね……なんかあたし嫌な予感がしてきた」
綾乃言葉を聞き途端に不安になる美月でしたが、それを振り払い友人たちと共にハンガーへと辿り着くと……。
「伊逹さん!」
「おう! 来たか!!」
彼女達を出迎えたのは伊逹でした。
彼は困った様な表情を浮かべ……モニターを見ていました。
「状況は……どうですか?」
リーゼが彼に問うと彼はモニターから目を離します。
「いや、それがよ、よく分からねぇんだ……建物は確かに壊されてる。だが、奴は何かを負っているかのように動いていやがるんだよ」
「何かを?」
リンチュンが首を傾げ、モニターへと目を向けました。
そこには天使を現す点があり、現在は止まっている様です。
ですが、それは急に動き出し辺りをぐるぐると回ると今度は目的地があるかのように真っ直ぐと進み始めます。
「探してる?」
「ああ、何かそんな感じがするだろ?」
伊逹の言う通り、確かになにかを探しているか追っているかのような動きに美月達は不安を感じつつ、それぞれの機体へと乗り込みます。
「と、とにかく行ってみた方がいいよね!!」
「ああ、これまでとは動きが違う、十分に気を付けろよ!!」
伊逹の言葉に美月達は頷くとハッチを閉じました。
そして、順番に発信していき……。
『ジャンヌダルク、発進、任意のタイミングでどうぞ!』
「はい! ジャンヌダルク、行きますっ!」
美月もまた支部の外へと飛び出すのでした。
彼女達が出発して……伊逹は残った2機の機体へと目を向けました。
「あいつはともかく……なんで奴は来ない?」
そう呟きながら、すぐその瞳はモニターへと向かいます。
そこには今出発したばかりの4つの点。
彼は……彼女達の帰還を祈るのでした。




