14話 出撃する少女
1人で行かせる訳にはいかない。
そう思った美月は空だが勝手に動いてしまう。
しかし、それは明らかな違反行為。
伊逹に責められた美月だったが……放送では美月も出撃するように言われるのだった。
出撃の準備を進める中、美月は心臓がバクバクとなるのを感じました。
その音はやけに耳に響き、うるさいぐらいです。
ですが、もう逃げることはできません。
『夜空さん……だったか? 僕の前に出るなよ? 守ってやれないかもしれない』
そう言うのは聞いたことの無い声。
美月は思わずびくりとします。
すると、声の主は何かに気が付いたのでしょう。
『ああ、僕は新谷彰人……さっき放送で聞いたろ?』
名を名乗ってくれました。
彼は例の新谷と言う人みたいです。
『君は聞いたことの無い名前だったけど、訓練を終えたばかりなのか?』
尋ねられて美月は困りましたが、おずおずと答えます。
「きょ、きょう……」
『そうか今日終わったばかりか、なら尚更前には出るなよ?』
念を押す新谷に対し美月は慌てます。
「ち、ちが……」
自分は訓練なんてしていません。
そう言いたかった美月ですが――。
『それじゃ! 新谷彰人……コピス出るぞ……!!』
彼がそう言うとプツリと通信が途絶えてしまいました。
「わ、私……訓練なんて……」
美月が戸惑っていると、イービルの外で何やら機械が動く音がします。
なんだろう? 疑問に思っていると突然イービルが揺れ始め。
「きゃぁぁあ!?」
初めて感じる揺れに思わず悲鳴を上げてしまう美月。
必死にオーブを握る手に力を入れ、揺れに耐えているとようやくそれが収まり。
『マナ・イービル……出撃準備完了、合図をお願いします』
続いて聞こえてきたのは女性の声です。
美月は意味が分からず機体の中をキョロキョロしはじめます。
『マナ・イービルどうしました? 合図をお願いします』
合図って言われても……さっきの人みたいに言うの? でも……。
「よ……よぞ……み……き……で、ででで」
恥ずかしい、そんな事が思い浮かび美月は何度も噛みながらも――。
「出ますっ」
消え入りそうな声で合図を送ります。
しかし、何も起きず……もしかして声が届いてない? と不安になった美月はもう一度口にしようと息を吸い始めました。
その瞬間、ガタンッという音と共に衝撃が彼女を襲い。
「ひっ!?」
更に機体が急に動き始めました。
すると目の前にあった小さな照明の光が遠くから近くに来て、それはすぐに後ろへと通り過ぎて行きます。
確認するまでもなくイービルは前に、前にとどんどん加速している様です。
「き――」
『ご武運を――』
女性のそんな声は最早美月には届いておらず。
「きゃぁぁぁぁぁぁああああ!?」
この数日、何度も大きな声で悲鳴を上げる羽目になった美月はその瞳から涙をこぼし、機体と共に外へと飛び出していきます。
『おっ、ようやくって……夜空さん、もしかして出撃苦手なのか? まぁ出撃は練習回数が無いからな……』
先に出ていた新谷は待っていてくれたみたいですが、美月の悲鳴が聞こえた様で呆れた声が聞こえます。
ですが、美月はそれどころではありません。
「と、止まらない!? 止ま……らな……い!?」
さっきの悲鳴での大声は何処に行ったのか、美月は機体が止まらない事に戸惑います。
それに空へと放り出されたのです。
当然、浮力が無ければ……。
「お、ち……落ち!?」
「お、おい!? そのままじゃ落ちるぞ早くしろ!!」
そう言われても美月はイービルに乗るのが初めてです。
何をどうしたら良いのか、どこかのボタンを押せばいいのでしょうか?
慌ててコクピット内を見ますが、当然良く分かりません。
下手に触って動かなくなったらそれこそ大変です。
「何やってるんだ!! 操縦桿を手前に引け!!」
「そう……じゅう……か……」
そこまで口にして美月ははっとします。
そう、彼女が乗っているのはマナ・イービル通常のイービルとは違います。
彼の言う操縦桿などないのです。
「ぁ……ぁ……」
どうすれば良い? 美月は必死で考えました。
そして、思い出しました。
そう、今美月が手を置いているオーブそれが操縦桿の代わりだという事を……。
「っ!?」
祈るような気持ちで魔法を使う時のように集中します。
下に落ちている感覚を味わいながら、それの所為でうまく集中が出来ない事に焦らないように……。
「――はぁ……はっ」
呼吸は荒く、美月は暑くも無いのに汗を流し、祈りつつ魔法を使いました。
すると落ちる速度をゆっくりと落としていったイービルはぴたりと止まり。
「全く、何をやってるんだ……」
新谷の呆れ声が聞こえました。
「ご、ごめんなさい、でも……私……訓練なんてした事無い」
そして美月は謝りつつ、先程伝えられなかった事を伝えます。
「な!? だってさっき――」
「あれは今日、初めて……イービルに乗ったって事で……」
小さな小さな声、それでもマイクの感度が良いお蔭か相手には伝わったようで。
「何だって!? 上は何を考えてるんだよ……クソッ!! 良いか? 絶対に前に出るな、武器も銃は使うな訓練してないならまともに当たる訳が無い」
帰れと言わないのは彼の優しさなのでしょうか?
それとも、別の理由かは美月には分かりませんでしたが、続く彼の愚痴で理解しました。
「交戦前の敵前逃亡は罰則対象じゃないか、出撃した以上は本人も了承済み……クソっ!! 何だってそんな事、訓練もした事無い子じゃ死ぬかもしれないだろ」
つまり、美月には逃げ道が無い、そういう事でした。




