53話 戦う悪魔乗り
あれから数日後……。
『ジャンヌダルク、発信どうぞ!』
美月達は再び天使の襲撃に遭っていました。
「ジャンヌダルク……行きます!」
すっかりと悲鳴が無くなった美月はレーダーを確認し、仲間達と共に現場へと向かいます。
「何か、今回も2機みたいだね」
綾乃はそう口にしましたが、実はこれがあの襲撃の後、初めての戦いと言う訳ではありません。
「うん……」
あの後、すぐに2機の天使達が攻めてきたのです。
ですが、たったの2機では最早美月達の敵ではありませんでした。
とはいえ、この所毎日のように続く戦闘で美月達は疲弊をしています。
「眠い、です……」
その為交代で出撃する事になっており、今回は美月と綾乃……そして、リーゼロッテの3人でした。
リンチュンはまだ部屋にはこもっていますが、出撃の命令だけは聞いて出て来てくれるようです。
クラリッサもまた疲弊しているため、今回は出撃はしていません。
「さっさと終わらせて帰ろう!」
綾乃は仲間達を励ますようにそう言うと美月は頷き返事を返します。
「うん! そうしよう?」
「やぁー」
寝ぼけているのかやけに間延びした返事も聞こえました。
その返事に美月と綾乃はくすりと笑い、空を行きます。
そこは嘗て天使に奪われた空です。
ですが、今は美月達が取り戻しつつあるものです。
「……居た!」
レーダーを確認し、美月がそう口にします。
目の前には天使が2機……街を襲っていました。
ようやく見えてきた希望。
それを摘み取ろうとする天使達を美月達が取り払うのです。
「それじゃ、美月、サポート宜しく!」
「任せて、綾乃ちゃん」
二人はそう言うとそれぞれの武器を構え天使へと向かっていきました。
リーゼロッテも「ふわぁぁ」という欠伸を一つすると自身の顔へと手を当て……。
「いきます!」
と口にします。
そして彼女は機体の肩に砲台の様な巨大な銃を構えます。
マギーアランチャー、魔法の弾を発射するグレネードランチャーで威力が高いのですが……。
「って、リーゼちゃんちょっと待って!?」
美月は慌てて彼女を止めます。
それに気が付いた綾乃もまた――。
「ちょ!? それアタシも巻き込まれる!?」
「あ、そうでした」
彼女は慌ててマギーアランチャーを降ろし、拳銃を取り出しました。
「マギーアゲヴェーアなら、大丈夫ですよね」
リーゼロッテは微笑みながら左手に構えた銃の引き金を引きます。
するとそこからは魔法の弾が撃ちだされ、天使に命中しました。
そう、彼女の武器はすべて魔法を使っているのです。
普通の武器とは違い威力も段違い。
「良し! 畳みかけるよ美月! リーゼちゃん!!」
バランスを崩した天使へと大きな剣を構え迫った綾乃の号令で美月達は更に攻撃を重ねます。
1機を墜とすと彼らは仲間が落とされたというのに気にするそぶりも無く美月達に迫ってきました。
『インフェルノ展開』
美月はそんな天使との間に炎を生み出すと瞬く間にその炎は天使を包んでいきます。
「綾乃ちゃん! 今!!」
そして、親友である彼女の名を呼ぶと……。
「おっけー!! 捕らえた!!」
轟音が鳴り響き、ナルカミの持つスナイパーライフルからは銃弾が撃ちだされます。
炎によって熱せられた装甲はあっさりと貫かれ……背骨をも貫通したようです。
「2機目!!」
美月はそう口にしレーダーを確認します。
「……今ので終わりみたい」
「ですね!」
ほっとする美月達はもう一度レーダーへと目を通します。
それは今までイービルに取り付けられていた物とは異なるのです。
「ドイツの天使レーダー凄いね! まさか誤差が殆ど無しで情報が送られてくるなんて!」
そう、それはリーゼロッテが届けてくれた新たなレーダーです。
ドイツは天使レーダーを完成させそれの有用性を実証するため美月達にテスターを頼んできたのです。
そのお陰もあって、事前に察知し被害が広がる前に天使の迎撃に向かえるようになりました。
「じゃぁ帰ろっか!」
綾乃は辺りを見回した後、そう口にし美月達は帰路につきます。
すると――。
「ちょっとリーゼちゃんそっち違うよ!?」
「え? そうですか? あの雲の形さっき見たんですが」
「雲の形は変わるでしょ!?」
彼女がどうして迷子になるのか、そして何故それが治らないのか美月は分かった様な気がしました。
ですが、今はちゃんと支部に帰る為に……。
「えと綾乃ちゃんが前を進んで、私が後ろ行くから、ね?」
「ヤー! 私が真ん中ですね」
彼女の言葉に美月は「うん!」とだけ答えると、綾乃の溜息が聞こえ……。
「絶対一人では出撃しないでねリーゼちゃん……」
と呆れた声で言うのでした。




