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50話 世界を変えゆく悪魔乗り

 美月は新谷の傷を癒そうとした。

 だが、目に見えない体の中の傷はどうやらそう簡単には治せないとのことだ。

 いや……それならまだよかったのだ。

 魔法を使うのは無駄だ……そう言われてしまったのだった。


「皆……死ぬの?」


 そう呟いたリンチュン。

 それに対し美月や綾乃は何も言えませんでした。

 天使(アンゼル)との戦いがある以上、死なないとは限らないのです。

 それは死を怖がるリンチュンが戦えないという事でもありました。


 ですが……。


「死ぬな、このまま何もしなければ確実に死が訪れる。天使によってな」


 クラリッサはそう言うとリンチュンの傍へと寄り……。


「だが貴様が悪魔と同じだと思うな! アイツは仕方がない」


 そう言い、腕を組むと壁にもたれかかりました。


 どういう意味なのだろう?

 美月は考えますがその答えは出ません。

 ただ、彼女の中に残ったのは……。


 魔法じゃ治せない。

 じゃぁ……新谷さんは……。


 このままではいずれ彼は死ぬ。

 その事実だけが残り、美月はその場で泣き崩れそうになります。

 ですが、それを堪え……。


「部屋に戻ります」

「おう、その前に嬢ちゃんを送ってやれ」


 伊逹にそう言われ美月はリンチュンを連れてハンガーを出ました。


「ま、待って!」


 慌てて綾乃が追いかけようとすると変な声が聞こえ美月は振り返ります。

 そこにはクラリッサに髪を掴まれた少女の姿があり……。


「お前は報告後、訓練だ馬鹿犬」

「ちょっとだからって髪引っ張らないでよ!? あんたも女なら分かるでしょ!?」


 そう叫ぶ声が聞こえて綾乃が心配になりましたが、リンチュンの様子を見るとそれどころでは無いと判断し……。

 彼女を部屋へと送り届けます。


 リンチュンの部屋へと辿り着くと彼女はすぐに入ってしまい、中から鍵をかけてしまいました。

 美月が中に入る間もなくです。


「リンちゃん……」


 声をかけても反応が無く、美月は大きなため息をつくと自分も部屋へと戻っていきます。

 自室へと辿り着き扉を開けるとぱたぱたという足音が聞こえ、中から女性が近づいてきました。


「大丈夫だった!?」


 美月の母親です。

 彼女は美月を心配してくれたのでしょう。

 青い顔をしていました。

 ですが、それに対し美月は――。


「うん、大丈夫だよ……ただいま」


 と笑みを浮かべ答えるのでした。




 暗い部屋の中、モニターにはニュースが映っていました。


『日本で……いえ、世界で最大の危機ともいえる天使襲撃ですが、どうお考えですか?』

『ええ、やはりイービルの有用性を証明する結果となりましたね、魔物は暴走し危害を加えますが、魔法使いは人ですのでその心配はありません』


 そうですね、と続くキャスターは資料へと目を通します。


『今回は天使が約20機も責めてきた訳ですが、マナ、そして情報によりますと特化型イービル……フールが活躍したようですが、他にも他国から量産型マナイービルなどの応援がありました』


 女性は流暢な聞き取りやすい声で事実を口にし……。


『これにより、我々人類は天使への対抗策を得たと実感できる結果が残りました』

『何より襲撃に対し被害が最小限ですからね、今までにない成果と言え――』


 そこまで口にしたキャスターの顔はぷつんと途切れ、真っ暗な画面が映ります。


「余計な事を!」


 苛立った様子の男は脂ぎった顔をしており、大きいお腹を揺らしドカリと椅子へと座ります。


「それでどうするんだ? これじゃ計画は台無しだ」

「集めた魔法使いも返すのか?」


 男の他にも何人かその部屋に居ました。


「魔物の研究は進める!」


 太っている男はそう言い放ちますが、周囲の男達は首を横に振ります。

 大きなため息をついている者もおり……。


「よく考えろ、確かにミュータントは子供にも受け継がれているという事が分かった。だが、今後も同じ様になるとは限らん」

「それに手術をするとは言っておきながら実際にはせず死んだことにする……それは非人徳的ではないか?」


 彼らの言葉に対し机をたたき立ち上がった太った男。

 彼は興奮した様に声を荒げます。


「この実験でミュータントは作れることが分かった! 元の宿主は殺さないで子供から採取すれば良い事もだ!」

「いや、赤子だろう? 魔物が使えるならともかくそうではない」

「そうだな、それにその赤子が助かる可能性は? 貴様は考えているのか?」


 彼らに問われ、男は再び机を叩く。


「貴様等も同意をしただろう!?」

「我らが同意をしたのは人ではなく魔物を天使と戦わせるという点、魔法使いを安全に人に戻すという点だ」

「これは明らかな契約詐欺……貴様が自分から破ったのだろう? ましてや強制的に子を産ませるなど、どうかと思うがね?」


 二人の男性はそう言うと立ち上がり、部屋を去って行きます。

 その去り際に男に対し――。


「キミの研究は興味深く、そして期待をしていたんだがね」


 そう言って男を残したのでした。

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