47話 反撃の剣を得た悪魔乗り
戦闘の流れは変わった。
もう人間は一方的に狩られるだけの存在ではなくなったのだ。
美月たちの元には心強い仲間も合流するのだった。
リーゼロッテと合流した美月達は彼女の力を借り、天使へと攻撃を加えて行きます。
「す、すごい……武器……」
彼女の機体パラケラススには相変わらず右手が無かったのです。
ですが、そこから光の剣が現れ天使を切り裂いていました。
どういう構造なのでしょうか?
美月達は呆然としつつも彼女の戦いを見つめていました。
「ドイツの兵器はすさまじいな……魔力の剣か……」
クラリッサは感心したようにそう言います。
するとリーゼロッテは微笑むような声をだし……。
「アメリカの量産型も凄かったです! 今度父とぜひお話を……」
そんな事を言いながら彼女はクラリッサの方へと振り向きました。
当然隙だらけ……。
「ちょ!?」
綾乃は慌てて彼女の方へと向かいます。
そう、そんな分かりやすい隙を見逃すほど敵は甘くありません。
弱点である背骨がそこにあるのですから当然です。
「綾乃ちゃん!!」
すぐに向かってくれた綾乃ですが、届きそうにない。
美月はそう思い。
『テンペスト……展開』
風を生み出すとあえて綾乃へとぶつけました。
「へ!? きゃぁ!?」
予想外の事に綾乃は驚きましたが、可愛らしい悲鳴の後すぐに状況を理解したのでしょう。
「――っ!! こ、のぉぉぉぉぉ!!」
今度は咆哮を上げ、天使の凶刃からリーゼロッテを救います。
するとリーゼロッテは……。
「おお……凄い」
と感心しているのですが……。
「いや、戦闘中だからね、あまり敵に背を見せないように」
新谷は引きつった顔をしているのでしょう。
見えませんでしたが、何故かそう思う発言を彼はしました。
「はぁ……はぁ……」
綾乃はその間に一機の天使の背骨をへし折ると荒い呼吸をします。
そんな時です……。
『天使残り2! お願いします! 皆さん!!』
明智望の声が聞こえました。
絶望から希望の声へと変わったそれを聞き、美月達は頷くとそれぞれの武器を構えます。
そして、目の前に残る一機の天使を睨み……。
「これで、終わり!!」
天使を墜とすべく、悪魔を動かすのでした。
いくら天使と言えどマナ・イービル4機、そして……特化型イービル1機、イービル1機相手では逃げる事すら出来る訳もありません。
「……残りは向こう側だよね?」
沈黙した天使を見下ろし美月はレーダーを確認します。
「うん、でも……」
「天使を示すマーカーは無い、友軍機がやってくれたんだろう」
綾乃と新谷もレーダーを確認し、そう言うとクラリッサはイービルに腕を組ませました。
「殲滅まで予想より30秒かかったようだな……及第点とは言えん」
彼女の言葉を聞き大きなため息をついたのは綾乃です。
「いや、そこまで言わなくても良いんじゃ?」
恐る恐ると言った風に彼女がそう言うとイービルのカメラを向けられびくりと身体を震わせました。
そんなやり取りを見る中、美月はリンチュンとリーゼロッテの方へと目を向けます。
「リンちゃん、リーゼロッテさん、ありがとう」
そう言うとリーゼロッテは優雅なあいさつをしてくれます。
そして、笑みこぼしたのでしょう「ふふ」という声が聞こえてきました。
ですが、リンチュンは……。
「…………」
黙ったまま、イービルも動く事は無かったのです。
ただ、何かがあった訳ではないのでしょう……微かに呼吸をする音は聞こえていました。
彼女が心配だった美月ですが、もう一度声をかけよう。
そう思った時――。
「それじゃ、戻ろうか……」
新谷の声が聞こえ、仲間達は帰投し始めます。
真っ先に動き出したのはリンチュン、そんな彼女をの後を慌てて追う綾乃。
そして、リーゼロッテもどうやら日本支部に来る様です。
クラリッサも戻り始め、美月も後を続こうとしました。
するとある事に気が付きます。
「新谷さん?」
そう、新谷が動こうとしないのです。
「ああ、僕は皆が帰ってから帰るよ」
そうは言いますが、新谷が乗っているのは通常のイービル。
量産機であり、単機では天使に適う術がありません。
それに無理を出来ない体なのです。
当然、美月は――。
「私が最後に帰ります……何かする予定だったんですか?」
そう言うと新谷は黙り込み。
「いや、何でも……」
そう言葉を発した直後、せき込み始めました。
「だ、大丈夫ですか!?」
美月は慌てて彼の元へと近づきます。
ですが、彼はどうやら通信を切ったようで、何も聞こえてきませんでした。
不安に思った美月はどうにかしてハッチを開けれないかと考えます。
すると――。
「ごめん、うるさいだろうから切ってただけだ……何か用事がある訳じゃない、だから帰ろうほら、先に行ってすぐ後をついて行く」
美月は彼の言葉に納得が出来ませんでした。
ですが、彼は言った言葉を変えるつもりはなさそうです。
美月は言われた通り先に戻ると彼はついて来ています。
ですが……。
「新谷さん……」
心配をし声をかけるも通信を切られてしまっているのでした。




