46話 集いし悪魔乗り
リーゼロッテが日本へと向かっている。
そんな情報を聞き、驚く美月たち。
しかし、方向音痴の彼女に日本にたどり着けるのだろうか? と疑問を思い浮かべたのも束の間、思い出したのは天使レーダーの存在だ。
更にはアメリカ軍からの量産型マナ・イービルの増援も間に合い……。
美月たちは反撃の準備が整ったのだった。
『友軍機、後続を撃破!! 順調です!!』
その声には最早絶望はありませんでした。
何故なら数で圧倒する美月達悪魔乗りの方が有利だったからです。
それだけではありません。
『後続から、接近、この反応は――パラケラススです!!』
どうやら、ドイツの少女リーゼロッテは美月達との合流を選んだようです。
その判断から考えても、アメリカの有する量産型マナ・イービルの性能というのは言うほど低くないのでしょう。
「行ける! 絶対勝てる!!」
それを耳にし綾乃は天使の背骨へとそのこん棒の様な武器を叩きつけ、歓喜の声をあげます。
「馬鹿犬! 勝つまで騒ぐな、その余裕で足元をすくわれるぞ!!」
ですが、クラリッサは彼女を怒り、綾乃は美月とのプライベート通信を開くと……。
『ぅぅ……なんでアタシばっかり!』
と愚痴を漏らします。
そんな彼女に対し、美月も乾いた笑い声をあげると……。
「小娘! 笑っている暇があったら、悪魔と泣き虫をサポートしろ!!」
「ひぅ!?」
今度は美月に叱咤が飛ばされ、思わずびくりと身体を震わせました。
悪魔と言うのは新谷の事で泣き虫はリンチュンの事でしょう。
彼は通常のイービルとは思えない動きで天使を追い込み。
リンチュンは未だ恐怖を拭えていないのでしょう。
その動きには美月が見時の様なキレはありませんでした。
ぅぅ、私もこの人苦手だよ……。
美月はそう思いつつ、彼女の言っている事に反論するつもりもありませんでした。
何故なら言っている事は正しいと思ったからです。
確かに綾乃は彼女は以前と比べると死に急ぐような行動はせず。
天使との距離を測り、着実にダメージを与えて行っておりたった今も一機墜とした所です。
対し、二人は違います。
新谷は体の事もあるというのにお構いなし。
リンチュンも動きに迷いがあります。
だからこそ、美月は――。
「テンペスト……!」
『テンペスト展開』
最低限の魔法。
それと銃と剣……彼女が出来る事で二人をサポートする事に徹しました。
事実それは良い作戦でもありました。
「……距離を少しおくとよく見える?」
以前はそれでもよくは見えなかったはずです。
ですが、今は良く見えるのです。
美月はその理由が分かりませんでした。
ですが、彼女は徐々にですが変わって来ていたのです。
そう、彼女の中には余裕が生まれ始めてました。
それも油断からの余裕ではありません。
戦況を見て、状況を判断する余裕。
それは戦うと決めたからでしょうか? それとも自分にしか出来ない事を知ったからでしょうか?
それは彼女には分かりませんでした。
ですが、それは確実に変わっている証拠にもなっており……。
「っ!! 新谷さん、左に飛んでください!!」
「――な!? くっ!! た、助かったよ夜空ちゃん!」
彼が無事である事にほっとしつつ美月は自身の行動に驚いていました。
今までだったら決してできなかったであろう指示です。
ですが、今は――。
「リンちゃん! 正面、思いっきり殴って!」
「ああああああああ!!」
美月の声に反応してか、それともただ単に無我夢中なのか、リンチュンは真正面を殴ります。
するとそれに合わせるかのように天使が接近し……。
慌てて停止しようとしますが、もうすでにその行動は遅く……。
『テンペスト、展開……』
美月の魔法が放たれ天使は後ろから風に押されます。
するとリンチュンの乗る斉天大聖の鋭い拳は天使へと叩き込まれました。
頭部が吹き飛んだ天使はびくりびくりと身体を震わせるとその場に倒れます。
赤い血の様なオイルが周りには飛び散り……。
それは巨大な人の様でもありました。
ですが、所々から見える配線が天使が機械である事を示しています。
だというのに……まるで生き物が死ぬかのように痙攣を繰り返すそれを見て……。
なんか、凄く……やっちゃいけない事をしてる気が……。
美月は罪悪感が芽生えました。
しかし、だからと言って手を緩める事は出来ません。
残る天使は後続含め……。
『残り8!! 気を抜かないでください!!』
長かった戦いにもようやく、光が見えてきたのです。
ここで手を緩め負けてしまっては意味がありません。
だからこそ美月は敢えてその天使の事を考えるのを止め……。
私は皆を助ける為に……出来る事を……。
深呼吸をし、状況を把握しようと見回しました。
すると遠くから見た事のある機体が接近している事に気が付き……。
「リーゼロッテさん!」
美月は思わず彼女の名を呼びます。
するとドイツの妖精は――。
「ヤー!」
と明るい声で返事を返してくれるのでした。




