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42話 戦場を駆ける悪魔乗り

 戦いを始めた美月。

 だが、彼女には気がかりがあり、それを感じるのは何も彼女だけではない。

 クラリッサにより新谷のサポートを任された彼女は……それを受け入れる。

 そのうえで皆を守ると告げるのだった。

「1機墜とした!」


 その声は喜々としたものではなく、冷静な声でした。

 当然ですたったの1機……残りは9機もあります。


「こんのぉぉぉおおおおお!!」


 叫び声と共に聞こえるのは破砕音。

 そして、何かがぶつかる音でした。


「2機!! やれる! これならいけるよ!!」


 今度聞こえてきたのは嬉々とした声です。

 ですが、その通信に割り込む様に怒号が飛びます。


「馬鹿犬!! 喜ぶな、例え相手が1機になっても勝利まで笑うな!」

「う、うるさいな、ちょっといいぐらい良いじゃん……」


 訴えるような声に美月は何処か安堵感を覚えました。

 ですが、安心が出来ないというのは事実です。


 まだ8機も残ってる……。


 レーダーを見ると先ほど動きが遅くなっていた点も近づいてきています。


 あの1機は手負いだけど、何をしてくるかは分からないよね?


 美月はそう思いつつ、前を再び見据え天使へと銃を放ちます。

 ですが、美月の銃は当たる事はありません。


 追い込むのも一回見せてる。

 もう通じないかもしれない。


 彼女の不安は的中しました。

 美月がどんなに敵を追い込もうとしてももう1機が邪魔をするのです。

 それではどうやっても隙が生まれません。


「流石は偽物、我が主達を偽る脳があるだけはあるな」


 そう冷静な声が響き……美月はどうしたものかと考えました。


 魔法を使えば……。


 恐らく事は簡単に済むでしょう。

 ですが、今は以前とは違います。

 魔法には必要とする物がある……それを知った今ではおいそれと使う事は出来ません。


「銃と剣、これだけで……何が出来るのかな?」


 考え考え、考え抜いても美月には無理です。

 多少動けるとは言っても美月の得意分野は魔法。

 銃の命中精度は誰よりも低く……剣も動きがゆっくりになってしまいます。


「でも――やれることを!!」


 今はするしかない。

 美月はそう思い剣を握った所で気が付きました。


「――え?」


 レーダーには無数の赤い点。

 それは明らかに8つではありませんでした。


 増え、てる……?


 そう、どんどんと増えていくのです。


「嘘、嘘……」

「どうした!?」


 クラリッサの声が聞こえ、美月は叫ぶように口にしました。


「天使、増えてます!! 数は――20……」

「何!? チッ! 全員レーダーを確認しろ!! 迎撃準備――!」


 そう叫ぶクラリッサでしたが、すぐ横を銃弾が掠めて行きます。

 どうやら相手にもスナイパーが居るようです。


「ちょ、ちょっと待ってよ、何で増えてるの!? だって……」

「援軍いや最初から控えていたのか? こっちのレーダーの索敵範囲外から……!!」


 現状、各地にある今のレーダーの精密性は低い物です。

 天使の襲撃はギリギリでないと分かりません。

 それを天使は理解していたのでしょう……。


「こ、こんな……こんなの」


 勝てるわけがない。

 美月はそう思ってしまいました。


「美月!! ぼさっとしてないで早く――!!」


 動け! そう綾乃に言われ、美月は慌てて剣を構えます。


「あ、綾乃ちゃん?」


 彼女の名前を呼ぶと綾乃は――焦った様子もなく口にしました。


「距離がまだ少しある。なら……今いるのを倒せば! さっきより少し多いだけ!」

「そうだな、引く訳にはいかない……僕達でここを食い止めないと日本は壊滅だ」


 二人の言葉に頷いた美月は深呼吸をし自信を落ち着かせます。


「そうだ、焦るな、焦ったら負けだ……奴らは所詮偽物、私達には父が付いている……」


 クラリッサもそう言い再び銃を構えました。

 誰一人として引く意志を見せないのです。

 それは彼女達悪魔乗りだけではありませんでした……。


『皆さん! 各国のイービル部隊に連絡を飛ばしました! 時間が掛かりますが、応援要請に答えてくれた国があります!! どうか、持ちこたえて……』


 それは明智望の声でした。

 彼女は泣きそうな声でそう伝えてくれたのです。









 暗い部屋。

 少女はその中で呆然としていました。

 死ぬ……魔法を使えば死ぬ。

 そう頭の中で繰り返しながら……放送を聞いていました。


『施設内に残っている非戦闘員は避難を!』


 そして、魔法を使わなくても死ぬ。

 それがだんだんと近づいてくるのが分かりました。


 そんな時です。


 彼女の近くにあった端末が鳴り響きます。

 虚ろな目でそれを見つめるとどうやら強制的に繋がったようです。


「何をしている?」

「…………」


 彼は溜息をつくとやれやれと言った風に少女へと声をかけました。


「リンチュン、我々は君が日本の友人を助けたいと望んだから、向かわせた……。昔はともかく今は協力すべきだからだ……だが、それもそこで君が死ねば意味が無い。我々の仲はもう二度と戻らないだろう」

「…………」

「我々は君に死ねと言っている訳ではない。斉天大聖が日本のジャンヌダルクに劣るとは思わない」


 その言葉は今のリンチュンには届きません。

 彼女は震え――。


「魔法を使えば死ぬ……」


 その言葉を聞き彼はもう一度ため息をつきました。


「日本人から興味深い研究結果を提示された。つい先ほどの事だ……協力を申し出ることを約束しよう」

「――?」


 それが何を意味するのか彼女には理解できませんでした。


「我々には魔法使いが必要だ。我々にだけではないのは不本意だが各国にこれは送られているらしい協力し薬を作ろう、魔法使いを助ける為の薬を……」


 彼は、そう口にするともう一度リンチュンへと告げます。


「そこで死ぬのは許していない。リンチュン、君の故郷は此処だ……必ず生きて戻ってくるように勿論同盟の為にそちらへの被害も最低限に抑えるように……頼んだぞ」


 その通信は一方的に切られ、リンチュンは呆然とします。

 そして、自身の手を見つめたのでした。

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