41話 戦場へと戻った悪魔乗り
出撃を止められた美月。
だが、ハンガーでは彼女を待つ者たちが居た。
彼らは美月を迎え入れ、そして戦場へと送り出す……。
そして、彼女は……いや、彼女たちは天使たちと対峙するのだった。
戦場に鳴り響く轟音。
「ふん、偽りの天使め……」
彼女の放った銃弾は天使へと当たったのでしょう。
一機の速度落ちたようです。
「来る!!」
そして、10機もの天使達は肉眼で見れるほど近くに来ていました。
「駄犬! 良いかい、恐れるな……」
「分ってるって!」
綾乃はクラリッサの声にそう答えると剣を構えます。
「美月! サポート宜しく」
「うん! 任せて!」
美月は頷き答え、銃を構えました。
同時に新谷も銃を構えたのですが……。
「悪魔、貴様は下がっていろ、ロートルじゃ限界がある」
「流石は悪魔だ……そう言ってたのは誰だった?」
クラリッサの忠告に対し、そう返す新谷。
ですが、それは美月も思った事です。
ロートルと思っている訳ではありません。
ですが、彼の身体が限界である事は東坂恵の話でも分かっています。
「新谷さん、此処は任せてほしいんです」
「そうは言っても僕悪魔乗りだ……」
彼はそう言うと銃を構え天使へと向かっていき……。
「おい! 悪魔!!」
クラリッサの焦った声が聞こえました。
恐らく彼女も知っているのでしょう。
「何? 二人共とにかく今は集中!」
そして、綾乃は知らないのでしょう。
彼女はそう言うと剣を構え天使へと向かっていってしまいました。
「ど、どうしよう……」
『聞こえるか? 小娘、駄犬の方より、あの馬鹿をサポートしてやれ』
それは個人通信でした。
その声に対し、美月は同じように個人通信を開くと……。
『でも……』
『あれは馬鹿だが、無能ではない、戦う術を身に着けている……それに、悪魔より体が丈夫だ……。私が支えよう、何も手を出すなと言っている訳でもない、馬鹿を中心に見てやれ』
その言葉遣いにはむっと来た美月でしたが、言っている事は理解出来ました。
そして、言葉遣いの割には彼女が優しいとも思いました。
だから、美月は――。
『分かりました、でも! 綾乃ちゃんが危ない時は呼んでください。絶対に守るんです! 綾乃ちゃんも新谷さんも!』
『それは良い考えだ、だけど何も見えてない……ちゃんと物事は見た方が良い』
彼女はそう言うと再び銃を構え飛んでいきます。
美月はそんな事は理解していました……ですが、自分で決めた事です。
『それが、私のやりたい事だから』
と最後に呟くと美月自身もジャンヌを動かし天使へと向かうのでした。
天使達は悪魔たちと同じような武装をし、迫ってきます。
銃を構えた天使はトリガーを引き、美月達はそれを避けながら天使へと近づきます。
「おおおおおおおお!!」
新谷は咆哮をあげながら銃弾を天使へと叩き込み、何発かは関節部分にあたりました。
ですが、ダメージとなるほどではないようです。
美月も同じように銃で交戦しますが大した戦果は挙げられません。
「美月! 焦らないで一体ずつ!」
そんな中聞こえてきたのは綾乃の声、それに対し美月はコクピットの中で頷き答えます。
「う、うん! 分かった!」
怖いというのはありました。
ですが、美月はしっかりと前を見てイービルを動かします。
天使にとっての弱点は背骨と関節っ! だから、関節さえ狙い撃てれば!!
それはイービルと同じ弱点です。
装甲が脆い関節部分とパイロットの安全を確保する背骨。
この二つは天使と悪魔の生命線。
美月は息を大きく吸い、新谷へと迫る天使へと向け銃弾を放ちます。
それは吸い込まれるように膝裏へと迫りますが……。
『――――』
天使はいとも簡単に避けてしまったのです。
ですが、それで焦ってしまってはダメです。
美月はもうその事はしっかりと学んでいました。
だからこそ、彼女は大きく息を吸い、もう一度前へと目を向けます。
一発、一発を当てる必要はないよね。
私の得意な事、それが出来れば良いんだ。
心境が変わったからでしょうか? それとも守らなきゃいけない人が居るからでしょうか?
理由は分かりませんでした。
ですが美月は驚くほど冷静になっていたのです。
そして彼女は……ゆっくりとした動きで再び引き金を引きます。
当然その動きは読まれていました。
ですが――。
「そこだぁぁぁああああ!!」
銃を構え勇敢に戦う新谷の射線へと入った天使は見事に左肩を撃ち抜かれ、左腕が動かなくなりました。
そう、彼女が当てる必要はないのです。
ただ誘い込めばいい……何故なら美月の得意な事それは……。
私は皆の支援をっ!
仲間のサポートなのですから……。




