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40話 決意を持った悪魔乗り

 天使の襲撃を告げる警報が鳴り。

 少女はハンガーへと向かう。

 魔法を使うことを許可されていない以上彼女に戦う許可は出ていない。

 だが、彼女はそれでも戦うことを決意していた。

 しかし、突然出撃命令は取り下げられた……天使の数は今までで一番多いであろう10……。

 そう、確認できるだけで10機もの天使が人々を襲ってきたのだった。

「遅かったじゃねぇか!」


 そう言ったのは伊逹です。

 彼は豪快に笑い、美月の傍へと寄ってきました。


「ご、ごめんなさい」


 思わず謝る美月の肩へと手を乗せ、彼は呟きます。


「綾乃を頼んだ……それと新谷の奴もな」


 その言葉を聞き美月は驚きました。

 綾乃は戦う事を選ぶ。

 そう思っていました。

 ですが、新谷までイービルに乗っていることが今分かったのです。


「新谷さん?」


 それを聞き、美月は彼の身体の事を思い出します。

 もう無理は利かないでしょう。


「だ、駄目です、降りてもらわないと!」


 美月は焦り伊逹に訴えると彼は驚いたような表情を浮かべました。


「お前、まさか……」

「早く! 私と綾乃ちゃん、それにあの人が居れば十分だと、思う、から……」


 あの人とはクラリッサの事です。

 訓練を付けている以上強いはず。

 そう考えた美月は伊逹にすがり付くように訴えます。

 すると彼は――。


「そうか……知っちまったか、良いな? 無理はさせるな降ろすのはもう無理だ」


 彼の言葉に美月は鈍器で殴られたような気分になりました。

 すると同時に――。


『悪魔乗りの皆さん! 避難を――!』


 泣きそうな声で訴えるオペレーター明智望。

 彼女の声は一瞬困惑の様な物へと変わり――。

 すぐに別の声が聞こえました。


『すまない、もう時間が無い。真っ直ぐとこっちに奴らは向かっている』


 それは司令官である司の声でした。


『この数ではシェルターも意味を成さないだろう……悪魔乗りよ、避難を取り消す。戦ってくれ……』


 司令官の声の後ろで明智望が叫んでいるのが聞こえますが、その言葉を聞き、美月はすぐにジャンヌダルクへと目を向けます。


「頼むぞ、あいつらを……」

「はい……」


 最早、行くしかない。

 そう決意した美月はジャンヌへと乗り込み、起動をさせます。

 そして――。


「行こう、ジャンヌ……」


 そっと機体を撫でます。

 勿論機械が答えてくれるわけはありませんそれでも美月は頷き……。


『――ジャンヌダルク、システムオールグリーン! 発進どうぞ!!』


 明智望のつらそうな声のアナウンスを聞くとゆっくりと瞼を降ろし、そして……ゆっくりと開きます。

 前を見据え、彼女ははっきりと口にします。


「ジャンヌダルク……行きます!」


 それを合図に機体はグンッ! と前へと進みます。

 思わずまた叫びそうになりました。

 ですが、彼女は黙って前を見続けます……。


 外へと出た灰色の悪魔は先に出撃をしていた三つの影と合流します。

 一つは従来の悪魔。

 装甲には傷が目立ち古い機体なのが良く分かります。

 ですが、ちゃんと整備はされており、まだまだ現役です。

 もう一つは派手な色の悪魔。

 というより、むしろ天使のようにも見えます。


「……天使?」

「ほう、良く分かったな。これは祖国の神に対する信仰だ! 偽物を罰する為に作られたものだ」


 威圧的な態度にも感じられましたが、敵である天使(アンゼル)とは微妙に違います。

 そして、もう一つは真っ黒の悪魔。


「美月……無理しなくても」

「駄目だよ、綾乃ちゃんが無茶しちゃうでしょ?」


 彼女の言葉にそう答えた美月は機体の中で笑みを浮かべます。


「一緒に行くから!」


 そう言って美月は前を見据えます。

 見えてきたのは敵である天使達。

 彼らは確かに10機居ました……今まで見た事も無い数です。

 そして、その天使達は破壊行動を行う訳でもなく、真っ直ぐに美月達の所へと向かって来ているのです。


「なんなの、一体」

「奴らの考えている事はわからないさ……」


 そう言った新谷は銃を構え……。


「僕たちはただ、奴らの背骨を叩き折る……それだけだ」


 そう言いました。

 そんな彼に対し、美月は不安を覚えます。

 彼の身体はもうボロボロです……。

 だからこそ、戦ってほしくはない。

 そう思いましたが、もう……彼が引く事は無いでしょう。


「……なら」


 護るしかない! そう心に決めた少女もまた武器を取り構えます。


「ほう、根性のある……」


 それを見てクラリッサは呟くと、彼女は大きな銃を手に取り……。


「さぁ、始めようか……」


 彼女がそう良い……。


「行くよ、駄犬……!!」


 低い声でそう言いました。

 駄犬とはなんだろう? 当然美月は首を傾げますが……。


「その、駄犬ってのやめてよね!!」


 綾乃がそう言い、ようやく彼女の事を駄犬と呼んでいるのに気が付きました。

 すると、途端に美月は面白くない、と思いました。

 当然です、大事な友人の事を駄犬と呼ばれたのです。

 だからこそ美月は頬を膨らませ……。


「綾乃ちゃんは犬じゃない!」


 そう言うとクラリッサは笑い。


「そうかい、そう思うのはアンタの勝手さ……」


 そう言い、納得できない美月は更に食いつこうとします。


「文句があるなら生き残りな、そうしたら聞いても良い、分かったら生き残るんだ、良いな?」


 彼女はそれだけを言い、銃を構え――トリガーを引くのでした。

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