35話 事実を知る悪魔乗り
美月は無事管理室に居る人たちを助ける事が出来た。
しかし、その際に魔法を使ってしまい……。
綾乃達が来た時には彼女は疲れからか眠ってしまう。
その顔はどこか嬉しそうではあったが、綾乃達は心配したが、美月が魔法を使ってしまう事どこか諦めたように話すのだった。
美月が明智望達を助けてから数日。
彼女は自分の体に起きた変化に首を傾げていました。
「はぁ……はぁ……ひゅ……あ、あれ?」
走っても大丈夫だったはずの身体は軽い運動をしただけで根を上げるように戻ってしまったのです。
どうして? そう思う彼女でしたがその理由が分かりません。
たまたま、体調が良かっただけ? でも、そんなこと一度も……。
無かった……。
美月はそう思いつつ、黙り込んでしまいました。
これ以上運動を続けるのは危険だ。
そう思った彼女は取りあえず休むことにし……。
「うーん?」
首を傾げます。
そんな時です。
『夜空美月さんは至急医務室へ』
そう言う放送がされ、美月は身構えます。
医務室にはあの嫌味な医者が居るからです。
ですが、呼ばれた以上拒否をすることはできませんでした。
「……綾乃ちゃんに一緒に行ってもらおう」
そう口にすると美月はスマホを取り出し、ようやく手に入れた綾乃の連絡先でメールを送ります。
ですが、帰ってきた返答は……。
『ゴメン、今掴まっちゃっててそっちに行けそうにない……』
と言う文章だけ。
美月はがっくりと項垂れつつ、歩き始めました。
医務室に着くと思い身体を動かしつつ扉を開けます。
すると目に入って来たのは……。
「夜空美月さん、遅かったですね?」
そこに居たのは遠坂恵。
そして、看護師の服ではない白衣を着た吉沢信乃でした。
「え? あれ?」
「前任は問題ありと判断され、解雇されました……すぐに手配できないみたいですので偶々医師免許を持っている私が臨時医師になります」
「そ、そうだったんですか?」
吉沢にそう言われると美月は思わずそう返事を返します。
「お医者さんだったんですか?」
「いいえ、本当は看護師として働きたいですよ。ですが、居ないのでは仕方ないですね」
彼女の言葉に驚きつつ、美月は部屋へと入ります。
「さ、こちらに」
「はい」
遠坂恵に案内されるまま椅子へと座った美月。
するとすでに器具が用意されており……。
「今から血液採取をし、必要であれば輸血をするね」
「ゆ、輸血?」
遠坂にそう言われ何の事だか分からない美月は当然首を傾げます。
「今はそれしか対処が無いですからね」
今度は吉沢にそう言われ、美月はますます困惑します。
「説明は後でします、数日様子を見させていただきましたが、問題は無いはずです。ですが一応念のためと言う奴ですね」
「は、はぁ……」
当然説明を早くして欲しい美月は納得いかない表情を浮かべるのでした。
ですが、美月の願いは通る事は無く、処置は進められていきます。
私貧血じゃ……ないよね?
そう思いつつ、大人しく献血を受ける美月。
「じきに体力などが回復するはずです」
遠坂恵と吉沢信乃は美月を心配そうに見つめながらそんな事を話し始めました。
美月は今なら理由が聞けるんじゃ? そう思い尋ねてみます。
「あの、これってどういう……?」
「これを見てくれますか?」
そこには良く分からない数値が掛かれており……。
「へもぐろ、びん?」
「それは貴女の血中ヘモグロビン値です」
いくつか書かれている数値は15g/dl、11g/dl、低いものだと7と書かれています。
一体なんなのだろう? 美月は首を傾げますが……。
「15は問題はありません、ですが7だと低すぎて重症の貧血……魔法使いはそれでも自覚症状は運動をした時にしか現れないようなの」
遠坂恵の話を聞き、美月は目を丸めます。
「えっと、つまり、私はこれが少ないからいつも息切れをしてたんですか?」
「そう……そして、魔法使いに決してなれない人間はそれが普通の人より高いですね」
吉沢はそう口にすると美月へと告げます。
「これが所謂、魔力、マジックパワー……等と言われている物です」
「そうだったんですか?」
美月は驚きの事実に目を丸めます。
すると彼女は微笑み……。
「つまり、これを摂取できれば常人と同じ生活が出来ます。魔法使いは魔法日常的に使う事もありますから、自然と減っていたんですよ」
「それで、私達は徐々に体が弱くなってたんですか?」
美月が訪ねると吉沢は答えに迷っているようでした。
「違うんですか?」
「他に要因が無いとは限りません、だからこうだとは言えないんです」
そうは言っても美月の様子を見る限りでは確かにそれが原因の一つである事は間違いないでしょう。
ですが、魔法使いはまだまだ謎が多い者達です。
安易に口にしない方が良い、彼女はそう考えたようです。
「ですが、これで少しでも楽になるなら……」
そう言って微笑むのでした。




