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27話 目覚める? 悪魔乗り

 倒れた美月を助けるため、血液検査をした綾乃達。

 無事提供者は見つかったのだが……。

 果たして効果はあるのだろうか?

「…………んぅ」


 少女は目を覚ますとぼやける視界の中、自分が何処に居るのかを考えました。


 たしか……私……。


 自分が何処で何をしていたかを考えた彼女はゆっくりと瞼を上げると辺りを見回します。


 ここ、どこだろう……?


 気分は驚くほどと言うほどではありませんでしたが、良い方です。


 たしか、魔法を使って……その後……。


 彼女の意識は次第にはっきりとして来て、思い出します。


 魔法を使って頭が痛くなって……そのまま、倒れて……。

 私、魔法が使えなく……。


 実際には使えなくなったわけではないですが、それでも使い物にはならないでしょう。 

 彼女はその事実をその身に受け、ショックを受けました。


「あ? あああ?」


 このままでは何も出来ない。

 美月は目を覚ますと声を震わせました。


「美月!!」


 するとすぐそばから女性の声が聞こえ美月は大粒の涙を流しながら少女の方へと向きます。


「綾乃ちゃん……私、魔法が使えなく……」


 申し訳なさそうに彼女に告げると彼女は首を横に振ります。


「そうじゃない、そうじゃないんだよ……無事でよかった」


 彼女は嬉しそうにそう言いますが、美月はそれどころではありません。

 ここに居られるのはジャンヌに乗れる悪魔乗りだからです。

 ですが、魔法が使えなくては悪魔乗りの資格がありません。

 そう考えてしまった彼女は――。


「ごめんなさい、ごめん、なさい……」


 涙を流しながら謝罪をします。

 それに対し綾乃は困ったような表情を浮かべました。


「何謝ってるの? とにかく本当に良かった目を覚まさないんじゃないかって……」


 そこまで言って彼女は堪え切れなくなったのでしょう。

 笑顔はくしゃくしゃなものになっていき……。


「ふあん……だ、った……」


 そこまで言うと横たわる美月にしがみ付き、泣き始めました。

 二人の泣き声は部屋の中に響きわたります。

 ですが、誰もそれを止める事は出来ませんでした。

 それはそうでしょう……。

 片や自分の存在意義をもう一人は助かったことに……。

 誰が彼女達の苦しみを考えずに泣くのを止められるのでしょうか?

 いえ、誰も居ません……。


 二人が泣き止むと一人の女性は美月の元へと近づきます。


「……?」


 兎の様な赤い目をした少女は彼女を見上げると首を傾げました。

 見た事も無い美しい女性です。

 彼女は――。


「戦えるのか?」

「…………」

「魔法を使うのが怖くないのか?」


 二度、問いました。

 答えは決まっていました……「怖い」です。

 ですが、それを口にしてしまえばそれで終わりでしょう。

 美月は当然それを理解していました。

 そして、同時に――。


「私がやらなきゃ……」


 そんな使命感もありました。

 だからこそ、それを口にしました。

 ですが、女性は溜息をつき……。


「その昔、英雄と呼ばれた男が居る」

「え?」


 彼女はゆっくりと語りだす。


 その英雄は今は語り継がれていないらしい。

 だが、初めてイービルに乗った男で彼は天使と互角にやり合った。

 当然魔法使いではない、ただの人だ。

 だが、彼だけではどうにもならず。

 彼は仲間を求めた……集まったのはたったの3人。

 いや、当時は3人しか集まれなかったのだ。

 何故ならイービルは4機しかなかったのだから……。


「それで、どうなったんですか?」

「そんな話聞いた事も無いけど……」


 美月と綾乃達は彼女の方へと耳を傾ける。


「ああ、一人は日本人、一人は私……そして、最後は……」


 彼女は苦虫をかみつぶしたような顔になり――。


「屑だ」


 彼女が言うにはその男は仲間達を裏切り天使に取り入ろうとした。

 だからと言って天使が迎え入れる訳が無い。

 彼は狂っていた……だからこそ、命を奪われかけた。

 それを日本人が助けようとし、英雄もまた続いた。

 だが――。


「殺されると分かり、気が狂った男は日本人を殺そうとした……それを守り英雄は死に……日本人は彼を殺された事により、その男を殺した。それ以降彼は天使を狩り続け、やがてわが国ではおかしな話だが彼を讃え悪魔と呼ぶようになった」

「悪魔……」


 美月がそれを聞き、呟くと彼女は真剣な顔になり――。


「だが、彼には代償もあった。英雄の代わりとなった代償に苦しみ、やがて死を迎える……貴様はもうすでに対価を支払っているのだろう? だが、まだ引き返せる……ここでなければ降りれないぞ?」

「………………」


 代償やその日本人の事はわかりませんでしたが、今の美月が魔法を使った時の事を言っているのでしょう。

 つまり、彼女は此処でなら降りれる。

 戦わなくて済むと言ってくれているのでしょう。

 ですが、それは無理だと美月は思いました。

 何故なら例え戦わなくても魔法を使わずに過ごすことなどもうすでに無理なのです。

 だからこそ、彼女は……。


「私は、皆を守りたい……魔法をそう使うって決めてるから」

「…………」


 そう口にした美月はこの時、綾乃が辛そうな表情へと変わった事に気が付かないのでした。

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