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プロローグ
薄れゆく記憶を思い起こし、色あせぬ記録を読み返す。
彼等から教わった事、彼女たちから教わった事。
そして彼が僕にくれた数々の事を。
彼の名残を手のひらに感じ取りながら、ゆっくりと、じっくりと。
地面を焦がす日の光に炙られながら、僕たちは街道を歩んでいた。
旅と言えば旅なのだろう、放浪と言えば放浪だし、逃避とも学習ともいえた。
しかし忘却されつつある記憶の中で、僕は確かに楽しいと感じていた。
その感情を理解できていなかったことも今ではいい思い出なのだろう。
願わくば、この記憶は消え失せようとも記録だけは色あせぬ事を……。