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ペンギンの夏の約束、冬には…春には祝福を

夏に願った約束は、厳しい冬を経て


春に実るのか…



がたがたと木戸を風雪の吹雪がなぐるように吹き付ける


ロビーホールとはいえ、二重戸の上、戸の閉まりは良い筈なのだけれど




『東西の等圧線が狭まり…ばらく…くでしょう』


ラジオが聞こえずらい…もともと田舎ってこともあるんだけど


「ラジオ局の機材の修理…来月か」



温かいストーブに干している洗濯もの


乾いているだろうか







風に混じって人の声が聞こえる



さっきからガタガタいっていたのはもしかして







戸をゆっくりと開けると彼女は吹雪に押されるようになだれ込んできた




「どしたの?」


彼女は勢いあまって尻もちをつき、ウーと唸り睨みつけてくる






「ペンギンの人魚とはいえ…この寒いのは寒いのっ!!」



「いやーすまんすまん畑子。部品頼んでたの忘れてた」



広いロビーから管理人室だった部屋に移動している



彼女はぶすー…とふてくされている




「スルメイカ」



「それは勘弁してくれ!生のは特に貴重だ!」



「だってこの改造したマンションの地下に生け簀作ってるんでしょ?」



「なんでそれを…ああ!」



「手伝わせたのを忘れろとは言わせないわ!」



「夏場にちゃちゃーとやっちゃったから忘れてたわ…おい!お礼に塩水入れた生け簀にいれてやったろう!」



「ここに届け物すんの何回目だと思ってんの!」



「イヤー…里に下りるのも面倒だしぬくぬくしてたら…」



「私、今日こそ連れて帰れっておばさんに言われてるんだけどっ!」



「無理、お前ここに来るまでに死にかけたろ?」



「うっ…そ、そりゃ、雪崩跡とか、倒木とかあったけど…」



「スノーモービルも壊れちゃって実質、夏場まで動けないんだわ」



いやあ人で増えて助かるう!と喜んでいると畑子は何やらもじもじしている



「何だ?言いたいことでもあんのか?」



「私達…って…なに…かな?」



「幼馴染?」



「っち違う」



「んー?友達?」



「それも違う…!」



「じゃあなんだ!年の近い幼馴染だべ!」



「っだ。男女…じゃない…」



「あー!第三世代だとかうんだかなんなあ」



「そうよ…」



「おめーさんよ…」



「な、なによ」



「飯食って、トイレ行って、寝ろ。そんで明日は薪小屋から補充だ」


仕事もりもりだぞー、と

干し大根に手を伸ばすと



「何か言いなさいよ!」


この期に及んで何を…?疑問を解決することにすっか



「あんな、ここは雪山」



「それが?」



「畑子、おめー脂肪のってんな?」


また何か言おうとしたが手で制す


「ペンギンの野生はどんな暮らし、してっか知ってるか?」



「まさか!?」



「ここには食糧がわずかだ、一人分もねえ」














「じゃあ、あんたこれからどうするつもりだったの?」




「雪子さんに頼るつもりだった」




「あの…研究者とか自称しているシロクマ女あ?」





あんなやつと畑子は言うが、シロクマの亜人である雪子さんは狩の名手で、冬場でも兎を仕留めていたり


そのワガママダイナマイトボディの体格に見合った食糧計画を立てている


幼少の頃からの知り合いだが、去年、里の祭りの際村民に雪山に篭って研究をすると宣言したきり戻ってこないのだ



今年に入り、夏場作業をしていると山からここに降りてきて。スイカを報酬にこの家のリフォームも少々手伝ってもらった



去り際の際のあの約束さえ果たせば


今年の冬季はなんとか助けてもらえるだろう









今、夕方に入り雪山を上っているところだ


「大丈夫?私はなんともないけど…」


「大丈夫、カイロあるから…さみーけどな」









「この鉄塔を目印に上がって行けばいいのね?」



「…ああ!」


「…大丈夫?」


「ああ…」


正直大丈夫じゃない…



吹雪で前が見えない…








死ぬんじゃないわよ!と叫ぶ畑子に背負われている



「此処からなら…どっちに進んでも同じだ…」



「しっかりしなさいよ!」畑子は軽々と持ち上げて背負っている。おんぶだ










「生きてる!?」



「…ああ…もう、大丈夫、もう…」



「…しっかり!」



あたたかい…




























温かい



どこからか薪の燃える音が聞こえる




「おお!目覚めたか…まったく心配かけさせおって…」



「…すみません、雪子さん…オレ、あの約束…」



それを聞き雪子さんは大きなため息を吐く


「…ワタシの過去をそこまで気に病むことはなかろ」


兎に角寝ておれ!と雪子さんはキッチンへ向かった





「誤解、なんだ、雪子さん」




「はー、私のこと忘れてないー?」


畑子の黒と白の混じった呆れを含んだ顔がベッドへ横になっているオレの顔へ近づけてきた


逆に映っている畑子に散々世話になったのだ、感謝位…




「ありがとう、畑、っ…!」










「私、諦めないから…!」



じゃあねと口を袖で拭って手伝います、とキッチンへ向かった







「あいつ…」カバンから飴玉盗んだな…



後で、怒らなければ、と思いつつ。身体を睡魔に任せた










「何か…重い…」




真っ暗な部屋に自分がソファーに横になっていることに気が付いた


別の部屋?



身体は動く、喉も乾いたので歩き出す



「すみません、雪子さん」




「あ、ちがうの!これは」



「あ、あ…!は、はた」




「面白い事に為っておるの」




雪子さんが畑子の肩に齧りついていた





紅い、血…



「お主のことも…ほれ、このように」



ああ、と膝から崩れ落ちる


「もう!見て!バスタオル巻いてるでしょ!」




ああ、と今度は安心して…意識が…













「で、結局何してたんだ」



「エステ、だって。肌の手入れしてもらってたの!」


と肩を見せてくれた


いつも通りきれいな肌だ


「あの後、いろいろ、話し合ったのよ…それで、とりあえず二日は食べてないんだから」



うん、と頷き思いっきり食べることにした






それに元気になる滋養強壮のオクスリが含まれていたのは余談だ






・・・








・・・






・・・・・・・







春になった。











畑子と雪子さんと抱えていた問題は紆余曲折有り、話し合いの結果…

















「おとーさん!」








とりあえず、下山し、リフォームした家の方で大家族で幸せに暮らしている…


この話はほぼ余談です


この話をたくさんの方にご覧いただいて驚きと喜びに満ちております


感謝いたします


これにてこのシリーズは完結となります



別のシリーズにてお会いしましょう

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